イタリア料理を代表するメニューの一つで、なおかつ近年は日本でも広く普及してきた「ナポリピッツァ」。
いち早くその魅力に魅了されて本場・ナポリで修行し、外国人としては初となる「ナポリPIZZA FESTA」世界チャンピオンになったピッツァ職人がいます。
日本へ帰国して以降も愚直に「ナポリピッツァづくり」を追求しつつ、日本国内への普及や後進の育成にも励んでいます。
そんな彼に改めて「ナポリピッツァ」ならではの特徴や魅力、職人として活躍する難しさや醍醐味について聞いてみました。
【お話を伺ったのは・・・】
●株式会社ワイズテーブルコーポレーション
特にナポリピッツァを日本に広めた功労者である、サルヴァトーレ・クオモがプロデュースするSALVATOREブランド『SALVATORE CUOMO』は、職人による「完全手作り」にこだわり、本物のナポリピッツァを生み出すことで、日本におけるナポリピッツァ普及の立役者として広く知られている。
【インタビューにご協力いただいた方】
●大西誠さん
上席執行役員/Primo Pizzaiolo
大阪や東京のイタリアンレストランでキャリアを積む。
中目黒の名店『SAVOY』で食べたナポリピッツァに感銘を受けたことをきっかけに、本場・ナポリへの修行を決意。
2003年、毎年開催されるナポリピッツァ職人による世界大会である『ナポリPIZZA FESTA』にて、外国人初のチャンピオンに。
日本に帰国後、株式会社ワイズテーブルコーポレーションに入社。
ナポリピッツァのデリバリーサービスを立ち上げたり、ナポリピッツァ職人の育成など長年に渡り日本でのナポリピッツァ普及に尽力している。
『ナポリPIZZA FESTA』外国人初のチャンピオンになるまで
「ナポリピッツァに感銘を受けたきっかけは2003年、まだ日本にほとんどなかった本格的なナポリピッツァを提供していた、東京・中目黒にある『SAVOY』で食べた本場のナポリピッツァでした」と語る大西さん。
それまでイタリアンレストランのシェフとしてキャリアを築いてきましたが、この「運命の出会い」を機に、本格的に「ピッツァ職人」を目指すことを決意したそうです。
早速イタリア・ナポリ近郊にあるイスキア島の店舗で修行がスタート。
イタリア語もわからず、また師匠が手取り教えてくれることはなく見て覚えるのみだったため、とても苦労したそうです。
しかしながら修行わずか半年にして、毎年開催される『ナポリPIZZA FESTA』外国人初のチャンピオンに。
しかしその裏では、師匠からの心温まるサポートがあったそうです。
大西さん
「審査員の中には当初、日本人がチャンピオンになることに対して懸念を持つ方もいたそうです。そのとき、私の師匠が『これからナポリピッツァを世界中へ広めるためには、国籍や人種に縛られず、実力のあるものがチャンピオンになれる大会でなければならない』と、私の知らないところでほかの審査員を諭してくれたことによって、私がチャンピオンになれた大きな後押しになったと思っています」
その後、大西さんが育てた日本人のピッツァ職人たちが続々と同大会に出場し、チームで3年連続優勝するなど目に見える成果を生み出しています。
「ナポリピッツァ」と「アメリカピザ」の違いとは?完全手作りにこだわる理由とは?
私たちが普段、デリバリーなどでよく利用しているのは、「アメリカピザ」と呼ばれるのが一般的。
一方、「ナポリピッツァ」は、21世紀以降になって本格的に日本でも普及が進みました。
ところで皆さんは「ナポリピッツァ」と「アメリカピザ」の違い、何だかわかりますか?
その答えを大西さんに聞いてみました。
大西さん
「わかりやすく説明するとナポリピッツァは『“生地”を楽しむ料理』。それに対してアメリカピザは『“具材”を楽しむ料理』、という違いがあります。
またナポリピッツァは『水・塩・イースト・粉というシンプルな素材で生地をつくる』『薪窯で焼く』『基本メニューはマリナーラ・マルゲリータ』、アメリカピザは『様々な素材やボリュームで楽しむ』『オーブンで焼く』といった違いも。
ちなみに私たちの店舗で提供しているナポリピッツァは、生地を作り、生地を伸ばし、具材を乗せて、窯で焼くまでの全工程を『完全手作り』にこだわっています。
その理由として、一人ひとりの手の形や温度が違うからこそ『その職人ならではのおいしさ』を追求できること。
加えて手作りの工程をお客様に見せる楽しさを提供できることも、ナポリピッツァならではの魅力であり、独自の美学であると考えます」
ピッツァ職人育成のために、社内検定を導入
ナポリでの修行を終えて帰国後、大西さんは株式会社ワイズテーブルコーポレーションに入社。ナポリピッツァの普及に向けて、国内でも先駆けとなる「ナポリピッツァデリバリー」をいち早くスタートさせました。
実はこの「デリバリー」、ピッツァ職人育成においてとても重要なスタイルだといいます。
大西さん
「日本の一般的な店舗だと、1日当たり100~200枚のピッツァを焼きます。
一方、本場ナポリでは1日約1000枚焼くのが普通。
特に完全手作りにこだわるプロのピッツァ職人を育成するためには、毎日窯に立ち、場数を経験することで、ナポリピッツァづくり独特の感覚や感性を養っていくことが大切です。
だからこそナポリピッツァデリバリー専門店を立ち上げ、展開してきました」
またほかにも継続的にプロのピッツァ職人を育成・輩出していくために、大西さん主導で「社内コンペティション(検定制度)」を導入しています。
◎入社1年目~ベテランまで誰でも参加可能
◎「マルゲリータ」「マリナーラ」を5分半以内で調理
◎見た目や焼き方、調理方法などを総合的に評価
◎店舗での審査だけでなく、WEBでの審査も実施
◎審査員はSV・料理長が担当~最終ジャッジを大西さんが下す
このコンペティション運営にあたり、大西さんが重視しているのは、審査員となる「SV・料理長に対する育成」だといいます。
大西さん
「審査の際、私からすぐ食べた感想を話しません。まずSV・料理長の審査内容や感想を聞いた上で、自分の審査基準や評価と“ずれ”があるかどうかをみます。
ずれているのであればその点を指摘したり、また新人に教える際の指導基準を明確にすることに注力しています。
実際に多くの新人たちを直接育成するのはSVや料理長たち。だからこそ、私自身がSV・料理長をしっかり指導育成していくことが大切だと考えます」
ピッツァ好きなら「ピッツァ職人」を目指してほしい
日本の料理界ではまだマイナーな存在でもある「ピッツァ職人」ですが、世界ではとても希少価値の高い存在として年々、評価が高まっているそうです。
これからピッツァ職人を目指したい方や興味がある方に対して、大西さんは「いろんなピッツァを食べてほしい。そして興味を持ってほしい」とエールを送っています。
大西さん
「ナポリピッツァづくりに終わりはありません。私自身今も毎日、窯の前に立ちながら悩むことが多く、いつも最高のピッツァが焼きあがるわけではありません。
その日の天候や気温・湿度をはじめ、薪の温度調整など様々な環境の微妙な変化によって作り方も変えなければならないのがナポリピッツァづくりの難しさでもあり、またやりがいでもあります。
特に私は薪窯での焼きにこだわりをもっているので、仮に当社に入社すればまずは毎日、窯の前に立って焼くところから教えていきます。
手作りにこだわり、手に職をつけて将来、世界を股にかけて活躍したい方を快く迎い入れたいと思います」
今回の大西さんのお話を通じて、少しでも「ナポリピッツァ」ならではの特長や魅力について知ることができたのではないでしょうか。
