ハワイの言葉で「天国にふさわしい館」を意味するハレクラニ。その100年以上の伝統を日本で継承し、沖縄の地に誕生したのが「ハレクラニ沖縄」です。2025年11月、この日本を代表するラグジュアリーリゾートの総料理長に就任されたのが、世界的な外資系ホテルで数々の実績を積み上げてきた早坂心吾氏です。今回は、早坂氏が歩んできたキャリアの原点から、なぜ今、沖縄の地を選んだのか。そして、これからハレクラニ沖縄で共に働く学生たちに伝えたい想いについてお話を伺いました。
【ハレクラニ沖縄 総料理長 早坂心吾(はやさかしんご)氏】
北海道出身。2002年、フレンチの巨匠・三國清三氏のもとでキャリアをスタート。パークハイアット東京やアンダーズ東京で腕を磨き、2015年にザ・リッツ・カールトン東京「タワーズ」の料理長に就任しました。その後、ハイアット セントリック 銀座 東京、ザ・リッツ・カールトン日光、ザ・リッツ・カールトン福岡の総料理長を歴任。ローカル食材を活かしたサステナブルな料理を追求し続け、2025年11月、ハレクラニ沖縄の総料理長に就任。「世界をリードする唯一無二のラグジュアリーリゾート」を目指し、食の面から新たな価値を創造しています。
きっかけは「お返しのクッキー」。製菓から始まった料理人への道
私の料理人としての原点は、高校時代までさかのぼります。 バレンタインのお返しにクッキーを焼いたことがきっかけでした。幼少期から家で簡単な料理を作っては、家族に「おいしいね」と言ってもらえることに喜びを感じていましたが、このクッキー作りを機に「お菓子作りって面白いな」とパティシエを志すようになったのです。
その後、製菓の専門学校へ進みましたが、在学中にテレビ番組で三國清三シェフの活躍を見て、大きな衝撃を受け、「どうしてもこの方の元で働きたい」と強く願うようになりました。しかし、三國シェフのレストランにパティシエとして応募した際には、既に枠が満員。そこで提示されたのが「調理なら雇ってあげる」という条件でした。チャンスがあればパティシエに異動させてもらう約束で調理担当として入社しましたが、1年が経ち異動の打診をいただいた頃には、既に料理の面白さに目覚めていました。
お菓子はグラム単位で決まったレシピがありますが、当時の私には、レシピがありながらもより自由度が高い料理の世界が、非常に魅力的に映ったのです。そこから三國シェフの元で7年間、フランス料理の修行に打ち込むことになりました。
なぜ、今ハレクラニなのか。現場の「最前線」で挑む新たな挑戦
私はこれまで、お客様の前に立ち、会話を交わし、自らの手で料理を届けることを大切にしてきました。料理は単なる商品ではなく、お客様との対話であり、その一皿が、その日、その旅の記憶になると信じています。
技術だけでなく、姿勢や想いまでもが料理に表れる。だからこそ私は、今も現場に立ち続けています。
そんな想いを持つ中で声をかけてくださったのが、ハレクラニ沖縄の福永総支配人でした。以前から福永総支配人のような素晴らしいホテリエと共に働きたいという思いがありましたし、何よりも、同業者からも高く評価されるこの場所で新たな価値を創造したい。その強い想いが、総料理長としての新たな挑戦を決意させました。
これまで4軒のホテル立ち上げに携わり、ゼロからチームを創り上げてきました。しかし今回は、すでに完成されたチームに後から加わる立場です。
「自分がどう関わることで、さらにチームを強くできるか。」
それは私にとって非常に大きな、そして心からワクワクする挑戦でした。
若い料理人が挑戦し続けられるチームでありたい。その環境をつくることも、私の役割だと考えています。
垣根のない「オハナ」の精神。一体となってお客様を想う職場
実際にハレクラニ沖縄に入って感じたのは、スタッフの「素直さ」と「明るさ」です。そして、ハワイから受け継がれた「オハナ(家族)」の精神が、現場に深く根付いていることに驚きました。
一般的なホテルではレストランごとにしっかり区分けされていて、対抗意識があることも少なくありません。しかしここでは、ひとつのレストランが忙しくなれば、他からサポートスタッフとして、自然とヘルプに向かう助け合いが当たり前のように行われています。宿泊部や人材開発部といった全部署が「ゲストにハッピーになっていただきたい」という一つの目標に向かい、ホテル一丸となって動いているのです。
こうした「家族のような絆」をより強固なものにし、スタッフ一人ひとりが安心して本来の力を発揮できるように、私は着任後、1ヶ月かけて全調理スタッフと個別面談を実施しました。一人ひとりが何を目指し、どんな将来を描いているのか。それを知ることで、スタッフ自身が自分のキャリアに誇りを持ち、より良い環境で働けるようケアしていくことが、今の私の最大のミッションだと考えています。
料理に「ストーリー」を。地元の生産者と共に創る唯一無二の食体験
ハレクラニ沖縄には、「ハレクラニスピリットを深化させ、唯一無二のラグジュアリーリゾートとして世界をリードする」という強いビジョンがあります。私はこのビジョンを、食の面でも体現していきたいと考えています。
長期滞在される方も多いリゾートホテルでは、ゲストは単なる「おいしさ」だけでなく、食に対する「安心感」と「ストーリー」を求めています。私は、地元の生産者との繋がりを深め、どのような背景で育てられた食材なのか、その物語を料理を通じてゲストに伝えていきたいと思っています。たとえコストがかかっても、価値のあるストーリーを持つ食材を選び、魅力を発信していくことが重要なのです。
また、今後はゲストシェフを招いたイベントや、特定の食材にフォーカスしたプロモーションなども積極的に行いたいと考えています。こうした刺激的な環境に身を置くことで、皆さんは料理の技術だけでなく、「どうすればこのホテルのファンを増やせるか」というプロデューサーのような視点を養うことができます。そして、「ハレクラニの料理があるから、沖縄に行こう」とお客様に思っていただけるような、ワクワクする体験を自分たちの手で作り出す。料理を通してホテルの価値そのものを高めていく経験は、皆さんのキャリアにおいて一生の財産になるはずです。
ファーストキャリアとしてのハレクラニ沖縄。世界水準の経験をその手に
調理師としての第一歩をどこで踏み出すかは、その後の料理人人生を左右する極めて重要な選択です。ハレクラニ沖縄を選ぶ最大のメリットは、世界に通用するラグジュアリーリゾートの「高い基準」を、若いうちから肌で感じられることにあります。
ここには複数のレストランがあり、異なるジャンルを学ぶチャンスがあります。日々のオペレーションだけでなく、メニュー開発やイベントに関わる機会も多く、成長のスピードは他では味わえないものになるでしょう。また、三井不動産がホテルオーナーという「人を大切にする」安定したバックボーンがあることも、大きな安心材料です。
そして、沖縄ならではの魅力もあります。ワークライフバランスを大切にしながら、休日は大自然を満喫して感性を磨く。仕事でもプライベートでも、自分の可能性を最大限に引き出せる環境がここには整っています。将来、自分の店を持ちたい、あるいは世界で活躍したい。どんな夢を描くにも、「ハレクラニ沖縄で働いていた」という経歴と、「世界基準の自信」は、あなたの揺るぎない土台となるはずです。
挑戦が人を成長させる。一歩踏み出す勇気が、あなたの未来を創る
調理師を目指す学生の皆さんにお伝えしたいのは、「技術や知識は、後からいくらでもついてくる」ということです。ハレクラニ沖縄が何よりも大切にしているのは、何より「いい人」であることです。思いやりを持って接し、チームワークを重んじることができる人なら、私たちは全力でサポートします。
私自身、北海道から上京し、外資系ホテルを渡り歩き、今は沖縄にいます。新しい環境に飛び込むのは不安かもしれませんが、一歩踏み出さなければ新しい景色を見ることはできません。
ホテルは毎日が生き物のように変化し、同じ日はありません。様々なお客様と出会い、新しい喜びや課題に直面する。その変化の中にこそ、仕事の面白さがあります。自分の手で作り出した一皿がお客様を笑顔にする、これほどやりがいに満ちた仕事は他にないと私は思います。家族のような絆の中で、あなたの料理人としての第一歩をここで踏み出してくれることを、心から楽しみに待っています。
