京都には、町家や数寄屋建築など、時間を超えて息づく建物が今も数多く残っています。近年では、それらの伝統を「守る」だけでなく、「今に生かす」取り組みも広がっており、古き良き意匠を継承しつつ現代に寄り添う“和洋折衷”の魅力に注目が集まっています。
今回は、120年以上にわたり京都で邸宅建築に携わってきた熊倉工務店の実践を通して、受け継がれてきた京都の美意識、そして時代を超えて生き続ける建築のあり方を探ります。
【目次】
◎会社の歴史と創業
◎欺洋風建築と熊倉イズムの確立
◎京都の建築の現在地 -残しながら創るまちづくり-
◎京都の建築の現在地 -残しながら創るまちづくり-
◎世界の目から学ぶ
◎メッセージ -信頼を積み重ねる強さ-
【株式会社熊倉工務店】本社:京都市東山区
京都の街で120年以上の歴史を重ねる建築会社。和と洋の建築および注文邸宅を中心に、新しい設計や素材にも柔軟に挑戦し、時代に合った住まいづくりを追求しています。職人さんや設計士さんと力を合わせ、”その土地に住まう人”の思いに寄り添った建築を大切にしています。
代表取締役専務 熊倉 毅一 氏
代表取締役専務 熊倉 毅一 氏
会社の歴史と創業
熊倉工務店の初代・熊倉順三郎は、明治を境に刀を鍬に持ち替えて、土木業を営むようになりました。明治維新で都が東京に移り、低迷する街の活気を取り戻すために開催された国内初・京都博覧会の際には、琵琶湖疏水による電力供給を基盤とした路面電車の敷設に携わった記録が残っています。京都御所など官庁関連の建築も多数手がけ、京都の近代化を支えるインフラ整備の一翼を担ってきました。
擬洋風建築と熊倉イズムの確立
二代目熊倉吉太良の時代になると、海外の建築様式が日本にも広がり、「擬洋風(ぎようふう)」と呼ばれる西洋建築の模倣が流行しました。これは、日本人が独自の感性で洋風のデザインを再解釈したもので、大正ロマンを象徴する建築様式です。熊倉工務店もいち早くその潮流を取り入れ、京都大学近くの「進々堂」をはじめとするモダン建築を数多く手がけました。
斬新な「洋」を「和」の技で表現するその発想は、単なる模倣ではなく、京都という文化都市にふさわしい新しい美の追求だったと私は解釈しています。こうして「本物志向の意匠」と「人の暮らしに寄り添う施工理念」を両立させる熊倉イズムが形づくられ、以降の建築にも受け継がれていきました。
京都の建築の現在地 -残しながら創るまちづくり-
建築の基準やスタイルは時代とともに大きく変わってきましたが、その中で私たちが一貫して手掛けてきたのが「お客様と共に創っていく注文住宅」です。暮らしそのものの美しさを追求する流れの中で、“和風か、洋風か”という分類を越え、伝統を現代に生かす家づくりの歩みを進めてきました。
近年の京都の街を見ても、あるものを残しながら生かすことを重きに置いているように感じます。当社でも町家を改修するご依頼は増えていますし、古い建物がお洒落なカフェや宿になり、再び息を吹き返す様子を見ると、うれしく思います。さらに、京都の街や建物がなぜか人を惹きつけるのは、単に“古い”からではなく、人が関わり続けてきた歴史があるからではないでしょうか。私たちの仕事もまた、そうした“人の手と心が通う建築”を未来へつなげることだと思っています。
世界の目から学ぶ
また近年は、海外の施主様からのご依頼が増えています。特に、京都の人々が長い年月をかけて受け継いできた建物を求める方が多く、木や土、石といった自然素材の質感や、そこに刻まれた暮らしの痕跡に価値を見いだされているようです。文化も暮らし方も異なる方々と家づくりを進めるうえでは、一層細やかなコミュニケーションが必要ですが、その過程を通して私たち自身も“日本の美意識”を改めて見つめ直す機会をいただいています。
そして、海外の方と接する中で気づかされるのは、受け継いできた技術をどう今に生かすか、そして未来にどう伝えていくか。その答えに挑むことこそ、これからの熊倉工務店、そして京都の建築に求められる姿勢だと感じています。
メッセージ -信頼を積み重ねる強さ-
私たちが大切にしているのは、建物をつくるだけでなく、人との信頼を積み重ねていくことです。現場周辺の住宅への配慮、工事内容の事前説明や日々のあいさつなど、小さなことのように思えますが、その一つひとつの積み重ねが地域との関係をつくっていきます。
とくに京都という街には、文化や伝統、暮らしへの気配りを重視する風潮があります。その土地で仕事をするものとして、私たちも常に注意を払いながら日々の仕事に臨んでいますが、言い換えれば京都に百年以上続く企業が多いのは、そうした“相手を想う心”が経済活動にも息づいているからだと思います。
熊倉工務店もまた、その流れを受け継ぐ一社として、技術とともに“信頼”を未来へつなぐ建築を続けていきたいと考えています。そしてそのためには、新しい感性の風を吹き込んでくれる、若いみなさんの力が必要です。一緒に、こだわりの家づくりを通して、京都の街づくりに貢献しませんか? 新しい仲間をお迎えできることを、社員一同心から楽しみにしています。
