建設の現場は一見すると、力仕事や技術の世界に思われがちですが、裏には数々の“見えないルール”が存在します。今回は品質保証の仕組みやISOの運用、そして日々の仕事を円滑にすすめるためのルールまで、「品質クレームゼロ」を目指す企業のトップインタビューから紐解きます。
【企業紹介】
大路建設株式会社(本社:豊中市)
公共工事と民間工事の両輪で地域のまちづくりを担う総合建設会社。土木・建築の両輪で、道路や上下水道、建築物の施工を通じて暮らしの基盤を支えています。営業不在、実績から仕事が舞い込むなど、誠実さと手抜きのない仕事を貫く姿勢が評価されています。
代表取締役 大路 昌幸氏
学生時代から設計事務所に勤務し、設計事務所の開業を夢見るが、諸事情により26歳で家業の大路建材店(当時)へ戻る。何事にも正直に、逃げることなく、正面から取り組むことが信条。
① 信頼の証? ISOとは何か
「ISO」とは国際標準化機構が定めた品質マネジメント規格のことです。簡単に言えば、仕事のやり方をきちんと仕組みにして、誰が担当しても同じ品質を保てるようにするルールです。
たとえば建設現場では、図面の確認方法や材料の検査手順、安全管理の流れなどをマニュアル化し、それが正しく守られているかを第三者がチェック。これにより「この会社は品質と安全を確実に管理できる」と証明され、国際的にも通用する“信頼の証”になります。建設業界では公共工事を含め、多くの発注者がこの仕組みを評価しており、現場で働く技術者にとっても、日々の仕事を支える大切な基盤となっています。
審査は外部の認証機関によって毎年行われ、きちんと運用されているかどうかがチェックされます。単に取得するだけではなく、継続的に改善を進めているかが問われるため、会社全体で仕組みを回し続けることが不可欠なのです。
② ISOに取り組んだ背景
大路建設がISO取得を決断したのは、従来の経験や勘に頼るやり方を改め、仕組みに基づく経営へと体質を変えるためでした。創業者は長年の経験をもとに事業を進めてきましたが、私は「このままではいつか限界がくる」と感じていました。そこで「仕組みから会社を変える」ことを目的に、まだ中小企業では導入が少なかった時代に挑戦を決意しました。
導入にあたっては、コンサルティングを入れて複雑なシステムを構築する企業も多い中、「経験やスキルを問わず、誰でも理解できる仕組み」を目指しました。わかりやすく現場に根付くマニュアルや手順書を整備することで、シンプルかつ実践的なISOを確立。背伸びせず、自社に適した制度設計にしたからこそ、形骸化することなく長く運用を続けられているのだと思います。
③ ISO導入後の変化とメリット
ISOを導入して最も大きかったのは、「誰がやっても同じ品質を実現できる」仕組みが整ったことです。手順書に基づいて現場を進めることで、属人的になりがちな作業を標準化。新人や中途社員でも基本を学びやすくなり、教育の質が向上しました。
さらに、運用の中で根付いたのが業務を円滑に進めるPDCAサイクル※(Plan-Do-Check-Act)です。
※Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の順に業務を進めることで、品質や生産性の向上を目指すフレームワークのこと
当社では各現場が毎月「クレームゼロ」「養生の徹底」など具体的な目標を立て、それに向けて行動し、振り返り、改善を重ねています。数値だけでなく意識面の向上を重視するのも特徴で、社員一人ひとりが主体的に考え、動く文化が育っています。
また、ISO認証の取得は、公共工事の入札においても大きな意味を持ちます。規模の大きな案件では資格要件として求められる場合があり、それ以外でも経営事項審査で加点されることがあります。いずれの場合も、品質や安全を確保する体制を示す証として評価され、発注者からの信頼につながっています。
④ クレームゼロへの対応は最大の学び
品質を守る努力を続けても、クレームを完全にゼロすることは決して簡単ではありません。しかし、見方を変えればクレームは最大の学び。誠心誠意対応することで相手との距離が縮まり、逆に長期的な信頼関係に発展するケースもあります。実際に当社でも、これまでにさまざまなクレーム(ピンチ)を次のチャンスにつなげてきました。当社の経営理念に「手抜きは企業を滅ぼす」とあるように、怠慢は絶対にいけませんが、失敗やミスを恐れるのではなく「改善のチャンス」として受け止める姿勢は、社員にも常に持っていてもらいたいと思っています。
⑤ まとめ&メッセージ
建設現場は単なる作業の場ではなく、ISOやPDCAといった仕組み、そして一人一人の誠実な姿勢によって支えられています。目に見えないルールや心構えこそが、会社を強くし、信頼を築く基盤になるのです。信頼は一朝一夕では得られません。愚直にルールを守り、改善を重ねる。その繰り返しの中で育つものです。品質を守る仕組みについての知識と共に、小さなことをコツコツとやる、そんな基本の大切さがみなさんに伝われば嬉しく思います。
