「旅館」というと、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
和服でのおもてなし、温泉・観光地の宿泊施設…… どれも間違いではありませんが、それだけでは旅館の本質や魅力は語り尽くせません。
そこで今回は、創業156年を迎える「間人温泉 炭平旅館」の社長にインタビュー。
旅館の実情や働きがい、将来について、ありのまま語っていただきました。
旅館の実情や働きがい、将来について、ありのまま語っていただきました。
お話をうかがったのは……
間人温泉 炭平旅館(株式会社炭平旅館)
京丹後エリアでもっとも長い歴史を持つ温泉旅館。「百人百色の想い出づくり」をスローガンに、すべての従業員が一丸となって、お客様の想い出づくりに寄り添います。教育や福利厚生制度が充実しており、全体の7割を占める20~30代のスタッフがいきいきと活躍中です。
代表取締役:中江 幹夫 氏
① そもそも「旅館」って何?
実は旅館業は、建設業などと並び、日本で最も長い歴史を誇る産業のひとつです。 奈良時代の宿駅制度や江戸時代の宿場町に見られるように、旅人や商人が休息し、食事や寝床を提供する場として発展してきました。明治期になると鉄道の開通とともに観光需要が高まり、各地に温泉旅館や観光宿が誕生したようです。最盛期には、コンビニエンスストアよりも旅館の数が多い時期があったんですよ。地域と密接に結びつきながら、その土地ごとのおもてなし文化が形成されていきました。
② 「旅館」の実情と課題
かつて日本の旅館は、家族経営の小さな規模で、お客様一人ひとりに寄り添ったおもてなしを行うのが常でした。しかし近年は、規模の経済(大量生産により低コスト化をはかること)や、設備投資競争の波に押され、その姿が急速に失われつつあります。家業として代々営まれてきた旅館が、資本力のある大規模施設に淘汰されるケースが相次ぎ、結果として、かつて地域の顔であった小さな宿が次々と姿を消しているのが現状です。
旅館は本来、その土地の文化や人々の暮らしが凝縮された「地域の共同体の象徴」です。それが今、時代の流れとともに静かに失われようとしている―― 私たちはそのことに強い危機感を抱き、旅館の存在を未来へとつなげるべく、新たな再生への挑戦を開始しました。
③旅館の「働き方改革」伝統を未来に繋ぐ挑戦
かつての旅館は、女将が旅館に泊まりこみ、休む間もなく働くことが当たり前。私がこの業界に入り、その実態を知ったとき、「お客様の思い出づくりを担う旅館が、働く人やその家族の時間を犠牲にして成り立っているなんて、あまりにも不幸なことだ」と感じ、この働き方を変えると心に決めました。
まずは、予約や会計、バックヤード業務をシステム化し、業務の合理化を図ることで、女将や従業員の負担を軽減。さらに、福利厚生制度の拡充や休日取得の柔軟化に加え、社内のコミュニケーションアプリを導入し、現場の情報共有やアイデア提案をリアルタイムで行える体制を構築しました。
また、ダイバーシティ(多様な人材の活躍推進)にも積極的に取り組み、2020年に開業した「炭平別邸 季ト時」(兵庫県・城崎温泉/客室6室の宿)では、スタッフ全員がミャンマー人。日本語や接客マナーを学びながら、日本のおもてなし文化を体現する彼らの姿は、国内外のゲストに新鮮な感動を与えています。この取り組みは、業界における多様性活用と文化継承の両立という、新しい可能性を示すモデルケースとしても注目されています。
また、ダイバーシティ(多様な人材の活躍推進)にも積極的に取り組み、2020年に開業した「炭平別邸 季ト時」(兵庫県・城崎温泉/客室6室の宿)では、スタッフ全員がミャンマー人。日本語や接客マナーを学びながら、日本のおもてなし文化を体現する彼らの姿は、国内外のゲストに新鮮な感動を与えています。この取り組みは、業界における多様性活用と文化継承の両立という、新しい可能性を示すモデルケースとしても注目されています。
④ 旅館で働くうえで大切なこと
旅館の仕事は、単に宿泊や食事を提供するだけではありません。お客様の滞在そのものを、かけがえのない時間として彩ることが使命です。私は、旅館は「思い出をつくる仕事」だと考えています。そこには接客の技術や知識以上に、人としての魅力が問われます。
私が入社した頃の炭平旅館は、施設こそ古かったものの、評価は非常に高い宿でした。その理由は、先代の女将が大切にしてきた「愛嬌」の精神にあります。非の打ちどころのない完璧なサービスよりも、相手のことを考え尽くす中で発せられる一言や振る舞いが、お客様の心には残るものです。炭平旅館では「日々是愛嬌」をモットーに、スタッフ一人一人が自分らしい愛嬌をもって、お客様の喜びに尽くすことを大切にしています。
⑤ 旅館業の未来と、「人づくり・ふるさとづくり」
私たちの企業理念は「ひとづくり 故郷づくり」。働く人が成長し、その力を地域に還元することで、旅館も地域もともに発展していくことを目指しています。人手不足や働き方の課題、地域の人口減少や後継者不足など、さまざまな課題がある一方で、ここ丹後エリアは“よりローカルな旅”を求めるお客様からの注目が高まっているエリアでもあります。今後は「自社で何ができるか」から「地域全体で何ができるか」という視点にたち、さらに多角的な事業展開を進めていきます。
旅館業は決して古い仕事ではありません。むしろ今だからこそ、あなたの感性やアイデアが生かせる業界でもあります。人を喜ばせ、自分も喜び、ふるさとを元気にしたい。そんな思いを持つ方と、ここ丹後でお会いできる日を楽しみにしています。
