憧れられる存在でいたい
高校を卒業してすぐに修行を始めた金沢の鮨店を皮切りに、さまざまな店を巡り、多くの経験を積んできました。特に、独立前にいた青山の「海味」では、親方から江戸前鮨の技術だけでなく、礼儀や職人としてのあり方まで、あらゆることを教わりました。そんな親方の元にいると、強くなれる自分がいました。
今では独立し、自分の店で弟子たちと共に励んでいますが、常に思うのは、自分もあの尊敬する海味の親方のようでありたいということです。弟子たちが何か困難に直面したときに、守ってあげられる存在であり、目標にされる親方でありたいと考えています。
鮨屋の仕事は決して楽ではありません。勤務時間も短くはないですし、同じことの繰り返しに、目標を見失うこともあります。そんなとき、自分自身の姿を見せることで、弟子たちに「自分も頑張ればこうなれるんだ」と思ってもらえる存在であり続けたいと思い、常に自分を鼓舞しています。
また、弟子たちには本物を知ってもらいたいと、社員旅行の際には、最上級のホテルに宿泊するようにしています。これは日頃の頑張りへのご褒美でもありますが、一流を知ることでこそ、一流になれると信じているからです。知識だけではなく、体験を通じて身体で感じ取ってほしい、そう思って最高のサービスを経験させるようにしているのです。
大切なのは、お客様から可愛がられる「顔」になる
鮨 龍次郎は、開業して5年が経ちます。ありがたいことに、毎日多くのお客様にご来店いただき、心から感謝しています。
従業員の給与は、この売上から支払われており、兄弟子にあたる中堅クラスの職人は、当然ながら若手よりも多くのお給料をもらっています。彼らには、下の子たちの目標となる存在でいてほしいため、それに見合う待遇を提供しています。また、兄弟子たちには「毎日お客様が来てくださることを、当たり前と思わないこと」と常に伝え、若手とは異なる責任とプレッシャーを持って仕事に向かってもらっています。
さらに、弟子たちに繰り返し伝えているのが「顔が大事」ということです。鮨職人として技術はもちろん大事ですが、お客様に可愛がられることも非常に重要です。そのためには、いつもニコニコとした、可愛がられる「顔」でいることが必要です。時には「バカになって」お客様の懐に飛び込むことも必要なのです。
中には、なかなか仏頂面が抜けない従業員もいますが、そんな時は皆で飲みに行って、思いっきり騒ぐこともあります。そうやってリラックスして過ごすことで、人に愛される「顔」が自然と身についてくるのです。
これからの「鮨 龍次郎」と海外への展望
これまで、多くのお客様に鮨 龍次郎を愛していただき、たくさんの常連様に支えられてきました。今後も、お客様に可愛がられる鮨 龍次郎の魂を守りながら、さらに味を追求し続けていきたいと考えています。
鮨 龍次郎は、これまでお客様のご紹介をきっかけに、海外イベントへの出店を多数行ってきました。メルボルンや香港、台湾、韓国など、主にアジア圏での出店経験があり、直近ではシンガポールのレストランオーナーとタッグを組んで、龍次郎監修の鮨店をオープンしました。順調に営業を続けており、現地の方々にも好評をいただいています。
今後もこうしたパートナーシップを組んでプロデュースする店を、台湾をはじめとしたアジア圏を中心に増やしていければと想っています。そして、いずれ海外でのノウハウや基盤が固まり、タイミングが合えば、アメリカなど欧米への進出も視野に入れて挑戦していきたいと思っています。
もし、海外志向を持つ志ある若者が現れれば、そのサポートは惜しみなく行い、共に新たなステージへ挑む機会を提供していくつもりです。
