人が安心・安全に活動し、快適に過ごせる空間には、常に適切な設備設計が施されています。たとえば照明、空調、洗面、トイレ、セキュリティ、インターネットなどは、私たちの暮らしを支える基盤であり、現代社会に不可欠なもの。電気、水道がなかったら、冷暖房や換気システムがなかったら…… 私たちの暮らしはどうなるか、考えただけでも怖くなりますね。
「電気は神経、空調は呼吸、給排水は汗や血液」など、人体の機能に例えられることもある設備ですが、これらを適切に稼働させるための計画をたて、実装の設計図を描いているのは、「建築設備の設計」を行うスペシャリストたち。今回はこの分野で日本有数の技術と実績を誇る【株式会社施設工学研究所】の方々に、設備設計の仕事について教えていただきました。
株式会社施設工学研究所とは
1972年開設、大阪に本社を置き、地方自治体や国土交通省等の設備設計/監理を専門に手掛ける会社。航空局の整備工事設計も担当。同業他社は大阪府下で2社、国内10社程度と、希少な技術を有しています。
建築設備設計は、設備を設計するスペシャリスト
建築設備設計とは、電気(照明)、空調、給排水、通信回線などの計画を行い、建築物の安全性や快適性、省エネルギー性を確保する仕事です。環境保全や自然共存への意識が高まっている近年では、建築においても省エネルギー化、CO2排出量の削減、災害対策などに対応する設備の需要が増えており、今まで以上に期待と注目が高まっている分野でもあります。
「設計」と言うと、一般的には意匠設計を想像しがちですが、意匠設計と設備設計はまったく異なる仕事です。意匠設計は建築の中でも一番華やかな世界。一方、設備設計は、縁の下で建築を支える世界。ふたつの設計をパソコンで例えるなら、パソコンの形やデザインを担当するのが意匠設計、パソコンを動かすソフトを担当するのが設備設計と言えるでしょう。
ソフトがはいっておらず、起動もしないパソコンは使い物にならないように、設備が機能していない建物も建物としての役割を果たすことができません。水・電気・空調・通信などの設備が装備されることで、はじめて建物は建物としての命を得るのです。設備設計自体がスポットライトを浴びることはほとんどありませんが、建物を建物として機能させる、大きな使命を担っている仕事です。
ふたつの設備設計/電気と機械、それぞれを解説
建築設備の設計には、大きく分けて、「電気設備」と「機械設備」があります。
◎電気設備 …… 照明、コンセント、電話、テレビ、インターネット など
◎機械設備 …… 空調、給排水衛生、エレベーター など
電気設備 ……
建物内の電灯や照明、コンセントの設置、配電設備の計画などを手掛けます。電話、テレビ、インターネット、火災報知機なども電気の領域。近年は蛍光灯をLEDに交換する設計が増えています。進化の速い分野でもあります
機械設備 ……
暮らしの快適性を高めるため、建物内の空調(冷房・暖房・換気)、給排水(トイレ・給湯)、エレベーター などを設置するための計画を手掛けます。建物の大きさによって、法律で設置する設備が決められています。スプリンクラーも機械設備に入ります。
★いずれの設計も、まずは発注者と打ち合わせをしたあと、現地調査を実施。調査内容をまとめて報告書を提出したのち、設計方針(どのように設計を進めていくか)を決定し、設計図の作成に取り掛かります。
<打ち合わせ風景>
<現地調査>
<打ち合わせ風景>
<現地調査>
★設計方針を立てる際には、工事で使用する機器の選定も行います。各メーカーのカタログをみながら、発注者のニーズや現場の要件に合致するものを決定。機器の種類や性能は刷新スピードが速いので、常にアンテナを張りながら情報を得ようとする姿勢が求められます。
★設計図が完成したら終わり、ではなく、工事にかかる予算の算出(積算)を行うまでが設計の仕事です。
こんな特殊な設計も!航空局の管制システムを手掛ける整備工事設計
今回お話を伺った【株式会社施設工学研究所】では、地方自治体の建築物、構造物以外に、航空局における特殊な設備設計も手掛けています。空港庁舎内の航空局の設備設計とは、いったいどんな分野なのでしょうか?同社の吉住則明社長に教えていただきました。
「おもに飛行機の運航にかかる通信機器・システムの更新です。管制室という部屋のデスクに並んでいる通信機器を、定期的に最新のものに更新する計画の作成、バージョンアップするための設計を手掛けています」
「その他には、滑走路の横でぐるぐる回っている巨大な通信アンテナ。実は空港内だけでなく、高い山の頂上など至る所に設置されており、その取替えのための設計を行うこともあります。愛知県名古屋市以西が我が社の担当。与那国をはじめ離島に出向いたり、通常立ち入ることのできない管制塔などに入れたりすることは、この仕事の役得ですね」
「私が初めて航空局の仕事をしたのは20代のときです。施設工学研究所から二年ほど出向し、ジャンボジェット機の導入に伴う滑走路の延長工事に関わりました。それまでは住宅公団(現:UR都市機構)の設計をしており、電気設計にはそれなりの自信を持っていたんです。ところがここにきたら、これまでの知識が何一つ通用しない。滑走路に点在する青い光が、明るくなったり暗くなったりしているのだけれど、それすらどうなっているのかわからなかったんです。聞くに聞けず、泣きそうな思いで勉強したことが懐かしいですね。電気だけでなく、設備の世界はそれほど幅が広く、奥が深い仕事なんですよ」
学生さんへのメッセージ
最後に、吉住社長から、学生のみなさんにメッセージをいただきました。
「60年以上ほぼ手法が変わっていない建築に比べて、設備、中でも電気通信の分野は、日々すごいスピードで進化を続けています。そのような環境下で、常に新しい情報をインプットし、価値に転換していけるこの仕事は、とてもクリエイティブな仕事ではないでしょうか。
今後も、建物が存在する以上、設備設計のニーズがなくなることはなく、将来にわたり腰を据えてスキルを磨き続けることのできる仕事だと確信しています。建築の設計事務所にくらべ、設備の設計事務所は知名度が低く、数も少ないので今が狙い目。施設工学研究所では、興味のある方であれば経験は問わず、実際に未経験からスタートした人も多数活躍しています。設備は難しい、目に見えないというイメージに捕らわれず、この仕事に関心をもっていただけたら嬉しく思います。是非、いろんな可能性に目を向けてみて下さいね」
今後も、建物が存在する以上、設備設計のニーズがなくなることはなく、将来にわたり腰を据えてスキルを磨き続けることのできる仕事だと確信しています。建築の設計事務所にくらべ、設備の設計事務所は知名度が低く、数も少ないので今が狙い目。施設工学研究所では、興味のある方であれば経験は問わず、実際に未経験からスタートした人も多数活躍しています。設備は難しい、目に見えないというイメージに捕らわれず、この仕事に関心をもっていただけたら嬉しく思います。是非、いろんな可能性に目を向けてみて下さいね」
