飲食店では、店によってメニューも客層も仕事の進め方も変わります。
では、店舗を移るたびに、仕事はまた一から覚え直しなのでしょうか?
もちろん、新しい店ならではの料理や仕事のルールを覚える必要はあります。
でも、働く場所に関係なく活躍できる人は、どんな場面でも応用できる「ある力」を身につけています。今回はその力を、具体的にひも解いていきましょう。
お話をうかがったのは……
ウルトラ天神株式会社
毛利 拓翔 さん
1 第一印象をつくる力
店の印象は、料理が運ばれてくる前から始まっています。お客様が扉を開けた瞬間に響く「いらっしゃいませ」という声。スタッフの笑顔や、きびきびとした動き。その空気感が、「いい時間を過ごせそう」という期待につながります。私自身も学生時代、客として「すみ劇場 むさし坐」を訪れた際、店の活気が強く印象に残りました。その時の経験が、入社を志望した理由でもあります。
特に私たちの店はオープンキッチンなので、お客様とスタッフの距離が近く、お互いの表情もよく見えます。お客様がこちらを見ていたら、声をかけるきっかけにもなります。笑顔や挨拶はサービスのスタート地点。まず店全体に活気をつくることが、その先のコミュニケーションにつながっていきます。
2 全体を見る力
接客では目の前のお客様だけでなく、店全体を見ながらその場で必要な行動を選ぶことが求められます。ほかのお客様の様子、料理の進み具合、周囲のスタッフの動きなどにも目を配ることで、今どこに気を配るべきかが見えてきます。
例えば、話が合うお客様とは、長く話しすぎてしまうことがあります。会話そのものは大切ですが、ほかのお客様への目配りが薄くなれば、店全体としてよい接客とはいえません。周囲の状況まで見て自分の動きを調整する視野の広さが、臨機応変なサービス力につながります。
3 価値を伝える力
料理のおいしさは、味だけで決まるものではありません。その日のおすすめや、使っている食材、産地などを知ることで、お客様は料理をより具体的にイメージできます。
私たちの店では、「この鮎はどこで獲れたの?」「この日本酒はどこのお酒?」といった質問に答えられるよう、スタッフ全員で情報を共有しています。「今日は高知県産の鮎が入っています」「今の時期ならではの味わいです」とお伝えすることで、「それなら食べてみよう」と選んでいただけることもよくあります。
ただ料理を出すのではなく、その料理の背景や魅力まで自分の言葉で伝える。そうすることで、同じ一皿でもお客様に感じていただける価値は大きく変わります。
4 見えないところに手をかける力
接客というと、お客様とのやり取りを思い浮かべがちですが、サービスの質は表に出ないところの仕事にも支えられています。そのひとつが掃除です。私たちの会社でも、日々の清掃はもちろん、毎週日曜の夜は1時間早く閉店して、店内を徹底的に掃除しています。床は水を流してデッキブラシでこすり、ドリンクまわりの扉まで洗浄。さらに、物置の上や段差、椅子まわりの隙間など、普段は見落としやすい場所までしっかり手をかけます。
スタッフ側からは見えなくても、お客様の席からは見える場所って、意外と多いんですよ。「掃除をしたか」ではなく「本当にきれいになったか」「お客様が気持ちよく過ごせるか」を基準にすることが大切です。
5 自分を更新する力
日頃から学び、自分の引き出しを増やすことは、環境が変わったときの対応力につながります。私も社会人になってから、社長にすすめられて本を読むようになりました。読んでみると、自分が知らなかった考え方に触れられることが面白くなり、最近は人との話し方や、人を喜ばせるにはどうすればいいか、といったテーマの本をよく読んでいます。
また、休日は福岡市内の飲食店を巡り、料理や接客を研究しています。気になる店は地図アプリに保存していますが、福岡は魅力的な飲食店が多いのでフラッグだらけ(笑) 実際に足を運び、五感で得た気づきを自分の仕事に生かすことは、対応力を磨くことにもつながっていると思います。
最後に―「飲食のプロを目指すみなさんへ」
この会社で働いて感じるのは、料理だけ、接客だけではなく、その両方を経験できる面白さです。料理を学べば、食材や味への理解が深まります。接客をすれば、人によって伝え方を変えることや、相手の気持ちを考えることも身についていきます。
私自身、入社してから本を読むようになったり、人との接し方を意識するようになったりして、仕事以外の部分でも考え方が変わってきました。料理と接客の両方に向き合う中で、人としても成長できますし、働いている人がみんな元気で前向きなことも、この会社で働く魅力だと思います。
いまは、将来の独立に向けて、いろいろな経験をして自分自身を強くしたいと考えています。夢のある人、夢を持ちたい人は、ぜひ一度私たちに会いに来てください。一緒に頑張っていきましょう!
