フランスの名店との交流を通して、長年にわたり本場の技術や料理哲学を受け継いできた神戸ポートピアホテル。2024年12月、ホテル本館1階に、カウンター席を中心としたフレンチレストラン「コントワール リュバン」がオープンしました。
シェフを務めるのは、学生時代にフランスの名店「アラン・シャペル」で学び、帰国後も神戸ポートピアホテルでフランス料理に従事してきた高橋なつみさん。
今回は、食材の持ち味を引き出すフランス料理のおもしろさや、カウンターキッチンだからこそ得られる学び、若手料理人の育成についてお話を伺いました。
高橋なつみさん(コントワール リュバン / シェフ)
2011年入社:辻調理師専門学校卒業
専門学校時代にフランスの名店、アラン・シャペル本店で学び、卒業後はホテル最上階のアラン・シャペル(当時)で調理スタッフ(アルバイト)として従事。
2011年、株式会社神戸ポートピアホテルに入社。アラン・シャペル閉店後にオープンしたフレンチレストラン、トランテアンで従事。提携店であったフランス・リヨン/ラ・メール・ブラジィエでも研修を受ける。 2024年、リュバンの副料理長に就任。 2026年、リュバンのシェフに就任。
本場で学んだ「食材と向き合う」という考え方
(以下、高橋さん)
子どもの頃からお菓子づくりが好きで、デザートにも携われるフランス料理の奥深さに惹かれ、専門性を磨く道を選びました。
辻調理師専門学校では二年次にフランス校へ留学し、約1年間、フランス料理界を代表する名店「アラン・シャペル」に勤務。帰国後は、当時神戸ポートピアホテルの最上階にあった「アラン・シャペル」で経験を積み、同店の閉店後、同じ場所にオープンしたフレンチレストラン「トランテアン」で腕を磨いてきました。
フランスではまず、日本では馴染みのない食材の多さに衝撃を受けました。ザリガニやエスカルゴなどが当たり前のように料理に使われ、普段は雑草と思われるカタバミも実はハーブとして食されていました。また、シェフ自ら市場へ足を運び、地元の一番良い食材を仕入れることも日常でした。
そうした環境の中で、当時のシェフ、フィリップ・ジュス氏に繰り返し教えられたのが、常に食材と向き合い、その味を最大限に引き出すということです。とてもシンプルですが、この教えは今も私の料理の原点になっています。
食材を生かし、一皿を組み立てる
食材の良さを引き出すためにまず必要なのは、その素材の味を知ることです。元の味が分からなければ、何を加え、どう工夫すればよいのかも考えられません。
例えば、トウモロコシのスープは、朝採れの新鮮なものなら味を加えなくても十分な甘みが出ます。「トウモロコシは、お湯を沸かしてから採りに行け」という言葉がありますが、これは収穫後、時間が経つほどデンプンが消費され、甘みが減っていくためです。実際に、納品から一日経ったトウモロコシでスープを作ると、いつもとは違う味わいになります。同じ食材でも、その個体に合わせて、味付けや調理法を変えることが大切なんです。
また、フランス料理では、素材そのものの味を生かして、一皿全体のバランスを組み立てます。付け合わせの野菜も、食材によってブイヨンを変えたり、主役となる食材の味をほんのり移したり。一つひとつの食材に合わせて、どんな味や香りを重ねるのかを考え、一皿のおいしさを組み立てていくところに、フランス料理のおもしろさがあると思っています。
カウンターキッチンだからこそ求められる力
2024年にオープンした「コントワール リュバン」は、ホテルの伝統を受け継ぐフランス料理を、カウンターで楽しんでいただけるレストランです。ライブキッチンなので、料理をつくる技術だけでなく、目の前のお客さまと向き合う力も求められます。
営業中はお客さまから、「これはどんな料理ですか」「どんな食材を使っているのですか」と声をかけていただくことも少なくありません。特にパテ・クルートを仕込んでいるときは、興味を持って質問してくださる方が多いですね。食材や料理について直接お伝えできるのはカウンターキッチンならではのやりがいですし、お客さまが料理への関心を深めていく様子を間近で感じられることも、大きな魅力です。
挑戦を後押しする文化が、料理人を育てる
私が社会人になったころ、料理人の世界には「技術は見て覚えるもの」「自分の腕は自分で磨くもの」という空気がまだ残っていました。でも、神戸ポートピアホテルの先輩方は、「こうした方がおいしくなる」「この工程にはこういう理由がある」と、感覚だけではなく理論的に教えてくれたんです。さらに、若いうちから実践で挑戦させてもらえる環境があり、その中で私自身も料理を考える楽しさや任されることで生まれる責任を学んできました。
「コントワール リュバン」でも、若手にはまず任せることを大切にしています。大事な部分はきちんと教えたうえで、できていなければもう一度考えてもらう。トライ・アンド・エラーの積み重ねですね。料理も、現在提供しているメニューの約半分は、スタッフが考えたものなんです。自分で考えた一皿をお客さまに届け、その反応を直接受け取る経験は、料理人としての成長につながると思っています。
★若手スタッフの声
後藤彰人さん :2023年入社/神戸国際調理製菓専門学校卒業
入社後、約2年半、ブッフェレストランで経験を積み、その後リュバンへ配属になりました。現在は前菜を任され、メニューづくりにも挑戦しています。印象に残っているのは、自分で考えたスズキのタルタルを提供した時のこと。「もう少し柑橘の香りがあってもいい」というお客さまの声を、シェフと相談してすぐ料理に反映したところ、「こちらの方が香りがよくて、夏らしいね」とお客さまに喜んでいただくことができました。お客さまとの会話をもとに料理をブラッシュアップし、自分自身も成長できるのは、カウンターキッチンの醍醐味です。チャンスと学びの多い環境を生かし、今後は任された仕事や課題に応えるだけでなく、積極性をもって挑戦できる料理人を目指したいです。
今日より明日、より良い一皿を目指して
神戸ポートピアホテルでは、「アラン・シャペル」そして「ラ・メール・ブラジィエ」と、フランスの名店から受け継いできた技術や考え方を大切にしてきました。私自身も、その環境の中で多くのことを学んできた一人です。
中でも心に残っているのは、「ラ・メール・ブラジィエ」のオーナーシェフ、マチュ・ヴィアネ氏の、「今日より明日。今のお皿よりも、次のお皿を常にいいものにする」という教え。
「コントワール リュバン」もまた、その学びを受け継ぎながら、新しい料理人を育てています。フランス料理を深く学び、自分の一皿を追求したい方は、いつでも見学に来てください。お待ちしています。
