一つのお店には、表から見える仕事と、見えない仕事があります。
お菓子をつくる人。店頭に立つ人。店が続く仕組みを整える人。
それぞれが見ている景色は違っても、その仕事はすべてつながっていて、どれか一つが欠けても、お店は成り立ちません。
今回は、岐阜・柳ヶ瀬に本店を置く和菓子屋「ツバメヤ」で、製造と販売、それぞれの責任を担うお二人のお話から、異なる仕事がどのようにつながり、一つのお店をつくっているのかを学びます。
株式会社ツバメヤ
(左)店舗統括マネージャー 大石はるみさん
(右)製造統括マネージャー 松口恵里奈さん
第1章:製造と販売、二つの目線で一つの店をつくる
大石:
ツバメヤは、製造と販売の垣根が低いお店です。私が責任者をしていた名古屋店では、販売スタッフも店舗でわらび餅を切り分け、きな粉をまぶして箱に詰めます。「販売なのに?」と驚かれることもありますが、自分で商品に触れるからこそ、その柔らかさや扱いの難しさを実感でき、お客様にも自分の言葉で伝えられるのだと伝えています。
松口:
柳ヶ瀬本店でも、お菓子をつくるスタッフが店頭に出て接客をしています。私が以前勤めていたホテルでは、厨房が地下にあったため、自分のつくったものがどのようにお客様に届くのかを見る機会がありませんでした。
ツバメヤでは、店頭から厨房の様子が見える造りになっていて、販売スタッフの「ありがとうございました」という声も聞こえます。そして、つくり手も厨房からお客様へ声を届けることができます。製造と販売の空間を完全に分けないところは、ツバメヤの大きな特徴だと思います。
第2章:みんなでつくった「作品」を、お客様へ届ける
松口:
店舗へお菓子を渡すときは、なぜこの材料を使うのか、どのような試作を重ねてきたのかをできる限り伝えています。自然に近い材料を使っているため、レシピ通りにいかないことも多いですが、失敗は次の仕事をよくするための大切な学びになるので、隠さず共有しています。わらび餅も、触りすぎたものとおいしくできたものを食べ比べてもらい、扱い方による食感の違いを体で覚えてもらっています。
大石:
商品が完成するまでの物語を知ると、「自分たちも一緒につくっている」という感覚が生まれますね。
店舗では商品を受け取ると、日付や異物の有無、どらやきの焼き色などを一つひとつ確認するんですが、そのとき、お菓子から「私たちをきちんと届けてほしい」と訴えかけられているように感じることがあるんです。
販売は単に「売るだけの仕事」ではありません。スタッフにも、ツバメヤのお菓子を「みんなでつくった作品」だと思ってほしいと伝えています。そう考えるとぞんざいに扱うことはしませんし、並べ方、お客様へ渡すときの言葉も、自然に変わってくると思います。
第3章:それぞれの持ち場から、ひとつのチームへ
松口:
かつては私自身、一人のつくり手として、目の前のお菓子をつくることに集中していました。けれど、名古屋店ができ、つくる量が増える中で、自分一人がつくれるだけでは続かないと気づいたんです。そこからは、スタッフを育て、安定して店舗へ届けられる体制づくりに力を注ぎました。その積み上げがあってこそ、仕事の垣根を越え、みんなで学び合えるようになったのだと思います。
大石:
関係を深める大きな転機となったのは、東京・日本橋店のオープンですね。軌道に乗るまで紆余曲折があり、製造と販売、現地スタッフが一緒になって試行錯誤を重ねました。製造と販売では目線やアプローチが違いますが、ツバメヤをよくしたいという思いは同じ。あの経験が「みんなで店をつくる力」を育んでくれたと感じています。
松口:
ツバメヤのお菓子づくりを一言で表すなら、やはり「チームワーク」。お菓子はつくったら終わりではなく、店頭のスタッフの言葉とともにお客様へ届いて、初めて一つの仕事が完結します。自分の持ち場だけではなく、その先にいる人やお客様のことまで考えるチームでありたいですね。
大石:
つくる人と届ける人、それぞれが同じ思いで仕事をつなぐ。これからもみんなで挑戦を重ねながら、ツバメヤらしいお菓子とお店をつくっていきたいと思っています。
ひとつのお菓子に込められた、たくさんの人の仕事と思い。
仕事のバトンを丁寧につなぎながら、今日もツバメヤのお菓子は、お客様のもとへ届けられます。
仕事のバトンを丁寧につなぎながら、今日もツバメヤのお菓子は、お客様のもとへ届けられます。
