◆ プロローグ ――「設計の仕事」って、答えがあれば終わり?
みなさんは、こんな経験はありませんか?
「実習や作品制作、あるいはレポート作成で『これで完成!』と思って先生や先輩に見せたら、『この素材を使ってみたら?』『この工程を入れたら、もっと良くなるよ』とアドバイスをもらった」
最初は『えっ、もう完成と思ってたのに……』と戸惑うけれど、取り入れた作品は、自分一人では絶対にたどり着けなかったレベルに仕上がっている。
実は、これは「設計の仕事」でも同じ。 設計者が一人で完璧な答えを出せることなんて、ほとんどありません。 設計案は、上司や先輩、関係者の手を経て、磨かれて進化していく——それが、プロの現場のリアルです。
今回は、入社3年目の若手技術者ダイスケが、自分の出した設計案を磨き上げ、ついに「街を守る盾」として完成させるまでの物語。 設計の仕事の本当の面白さは、「答えを出す瞬間」ではなく、「答えを進化させていく過程」にこそあるのかもしれません。
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【前回のあらすじ】
舞台は、埼玉県さいたま市の住宅街。激しい雨で道路が冠水し、街は水浸しに——。役所から検討業務を受けた建設コンサルタント、株式会社シーエスエンジニアズの若き設計者ダイスケが、浸水トラブルの解決に挑む。
前回の【調査・検討編】はこちら!
前回の【調査・検討編】はこちら!
ダイスケ(設計歴3年)は、課長やシズカ先輩(設計歴11年)と共に現場を調査し、浸水の原因を「管の容量不足」と「都市化の影響」と特定。安全性・施工性・コストの"3つの天秤"を意識しながら、「水を"受け止める工夫"と、"逃がす工夫"を組み合わせて街を守る」という設計案にたどり着いた——。
そして今、その案を手に課長のデスクへ向かおうとしている。
胸を張って差し出した案。だが、課長から返ってきたのは、予想もしない問いかけだった。
そう。設計案ができた瞬間こそが、本当のクエストの始まりだったのだ。
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■クエスト④「設計を磨け!」
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ミッション:上司・先輩のフィードバックを受けて、設計案をブラッシュアップせよ
課長:「たとえば、過去にウチが扱った類似案件は調べたか?管を太くする以外にも、素材を変える、工法を変えるという手もあるぞ。他にも応用できる方法があるかもしれない」
矢継ぎ早に飛んでくる問いかけに、ダイスケは戸惑った。
ダイスケ:「……なるほど。ただ正解をみつければいい、ってことじゃないんですね」
課長:「そういうことだ。設計はな、磨き続ける仕事なんだ」
ダイスケはさっそく動き出した。
先輩たちが残した報告書を読み込み、過去の類似案件を調査。他の素材や工法についてもシズカ先輩に相談してみた。
するとひとつの新しい選択肢が見えてきた。
ダイスケ:「課長! 今回の現場、"粗度係数"を改善するというのはどうでしょうか?」
※粗度係数・・・水の流れに関する摩擦や抵抗の度合を数値化したもの
課長:「ほう、それを持ってきたか」
ダイスケ:「管や水路の内側がツルツルなほど水は流れやすくなりますよね。素材を変えるだけで太さはそのままでも水を速く流せるはず。これなら施工性の問題もクリアできるかもしれません」
課長:「いい着眼点だ。ちゃんと磨いてきたな」
【クエスト④の学び】 設計案は、一発で完成するものではない。 上司や先輩からのフィードバックは「ダメ出し」ではなく、新しい視点の引き出し。 そして、ボツになった案も、必ず次に活きる。ムダな検討なんて、一つもない。
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■クエスト⑤「壁を乗り越えろ!」
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ミッション:施工条件・コスト・安全性という"現実の壁"と向き合え
新しい選択肢を手に入れたダイスケは、計算ソフトでシミュレーションを重ねた。
しかし、案を磨けば磨くほど、新しい壁が立ちはだかった。
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■ 施工性の壁:管を太くすると重すぎて、人の手じゃ運べない。しかし、重機を入れるスペースがない
■ コストの壁:掘らずに進める"推進工法"なら可能だけれど、コストが跳ね上がる
■ 安全性の壁:無理に掘ったら、周りの家の塀や宅盤(地盤)が崩れる危険がある
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ダイスケはついに、頭を抱えた。
ダイスケ:「どの案も全部、壁ばっかりだ…」
そのとき、シズカ先輩がやってきてダイスケのホワイトボードをのぞき込んだ。
シズカ先輩:「ダイスケくん、3つの天秤は覚えてる?」
ダイスケ:「コスト、施工性、安全性……」
シズカ先輩:「そう。この3つを完璧に満たす案なんてそんなに簡単にできることじゃないのよ。設計者の仕事は壁をなくすことじゃない。"どこで折り合いをつけるか"を自分の頭で決めることなんだよ」
ダイスケ:「折り合いを、つける……」
シズカ先輩:「それにね、ダイスケくん。前回、何て言ってた?」
ダイスケ:「あ……1箇所で全部解決しようとせず、役割の違う工夫を組み合わせる、って」
シズカ先輩:「そう。じゃあ、その発想を、もう一歩深めてみたら?」
ダイスケは、もう一度すべての案を並べ直した。 そして、あることに気づいた。
ダイスケ:「あっ……!"受け止める"の中にも、段階があるはずだ。いきなり受け止めるんじゃなくて、先に水の勢いを和らげる工夫があってもいい。"逃がす"も、メインルートだけじゃなく、サブのルートを用意できれば、もっと確実になるんじゃないか!」
そして、ついにダイスケは"進化した最適解"にたどり着いた。
4つの工夫を組み合わせた、段階的な改良案——それがダイスケの新しい答えだった。
クエスト⑤の学び プロとは「壁をなくす人」ではなく、「壁とどう付き合うかを決められる人」。 コスト・施工性・安全性。すべてを完璧に満たす案がないことなんて日常茶飯事。 だからこそ、検討に検討を重ねる——そこに、設計者としてのやりがいがある
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■クエスト⑥「設計を完成させよ!」
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ミッション:関係者と連携し、設計案を「街を守る盾」へと仕上げよ
4つの工夫の組み合わせ案が固まったダイスケは、最終段階に入った。
ダイスケはまず、比較表を作り込んだ。
コスト、工期、施工性、住民への影響、あらゆる項目を数字で並べ、誰が見ても判断できる形にする。
シズカ先輩:「"なんとなく良さそう"じゃダメ。根拠とセットで初めて設計案になるんだよ」
そして、設計案は照査技術者——ベテラン技術者の手に渡る。
照査担当:「ダイスケくん、ここの計算根拠をもう少し詳しく載せておいた方がいい」
照査担当:「それと、この雨量基準——役所の仕様書では確認した?」
ダイスケ:「あっ、確認します……!」
ダイスケはシズカ先輩に尋ねた。
ダイスケ:「シズカ先輩、照査技術者って、どうして途中の検討にはあまり関わらないんですか?」
シズカ先輩:「途中から入ると、私たちと同じ視点になっちゃうでしょ?設計の節目ごとに妥当性を確認してくれる人がいるから、見落としに気づける。それが組織で設計する強さなんだよ」
ダイスケ:「こんなにいろんな人の目が入ってようやく一つの設計になるんですね」
シズカ先輩:「うん。私はね、"一人で何かを成し遂げた"なんて一度もないんだよ。いろんな人に助けられて、いろんな人のヒントをもらって最終的に形にする。それがこの仕事なの」
---そしてついに、図面と提案書が完成し納品をしました---
クエスト⑥の学び設計は、一人で完成させるものではない。 担当技術者(手を動かす人)、管理技術者(工程を見る人)、照査技術者(最後に客観視する人) 役割の違う仲間がいるからこそ、見落としのない仕事ができる。 そして設計者の本当の仕事は、「正解を出すこと」ではない。 関係者全員が納得できる案を、根拠とともに作り上げること。それがプロの仕事だ。 ![]()
◆ クエストクリア!――「街が、守られた」
数ヶ月後。役所から「今年、あの現場の工事を発注しましたよ」と連絡が入った。
その週末、大雨が降った翌日。ダイスケはふらりと、あの現場に立ち寄ってみた。
——道路は、もう浸水していなかった。
買い物袋を提げて歩く人、水たまりを器用に避けて走り抜ける子どもたち。
なんの変哲もない、いつもの街の風景。
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「ふう、すごい臨場感だったな・・・」
「今回学んだことを活かして1人前の技術者を目指すぞ!!」
【今回の学びのまとめ】 ・ 設計案は一発で完成しない。磨き続ける仕事である ・ 上司・先輩のフィードバックは「ダメ出し」ではなく「視点の引き出し」 ・ プロは「壁をなくす」のではなく「壁とどう付き合うかを決められる人」 ・ 設計は一人では完成しない。役割の違う仲間がいるからこそ磨かれる
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【シーエスエンジニアズで働くということ】
街の参謀として、見えない場所で街を守る仕事。
一つとして同じ現場はない。だから、3年経っても、10年経っても、新しい発見がある。
「答えが一つじゃない」。その難しさを、面白さに変えられる人にこそ、向いている仕事です。
次は、あなたが街を守る番かもしれない。
