Anneの厨房に入るのは、生産者まで追える食材だけ
Anneが食材を仕入れるとき、一つだけ決めていることがあります。それは、生産者まで追えるものしか使わない、ということです。
魚介は京都の市場に加えて、和歌山と北海道からも直送してもらっています。台風で関西の魚が揃わない日には、北海道に電話をして「今なにが獲れますか」と聞く。そうやって、その日一番いいものを分けていただきます。和歌山からは白甘鯛や金目鯛、冬にはクエ。北海道からはエゾアワビやウニが届きます。
肉は黒毛和牛のフィレ、輸入の鳩、国産の紀州鴨、京都の七谷鴨。どれもすぐには手に入らないものばかりです。野菜は京都・八幡の九条ネギ専門農家と契約しています。
育てる人、運ぶ人、輸入する人。私たちはその全員と話をします。誰がどう育てたのか分からない食材は、この厨房には入ってきません。
一年目から、その食材を任せるという育て方
いい食材を使っている店は、ほかにもあります。Anneが違うのは、それを新人のうちから任せることです。
たとえば鹿肉。ジビエをさばいた経験のある学生は、そう多くないはずです。うちでは仕込みの段階から手を動かしてもらいます。イカも、一匹まるごとさばくところから覚えてもらう。どこが使えて、どこを落とすのか。軟骨はどう外すのか。理由を添えて一つずつ説明するので、初めてでも大丈夫です。
まかないも、同じ食材で作ります。おいしいものをお出しするには、作る側がおいしいものを食べていないと始まらないからです。いい素材がどんな味なのかは、頭ではなく舌で覚えてほしいと思っています。
若いうちに触れた味は、そのまま自分の基準になります。あとから本で調べて身につくものではありません。
選ぶ目は、比べ続けることでしか育たない
料理人の仕事には、選ぶという工程があります。
ジビエは、いつも3社ほどに声をかけています。同じ鹿でも、扱う人によって味が変わるからです。京都で鹿を獲っている方のところへ、実際に足を運んだこともあります。そのうえで、一番おいしいと思うものを選ぶ。今は鳥取から取り寄せています。
いいものとそうでないものを、何度も並べて比べる。その積み重ねでしか、選ぶ目は育ちません。私たちは日々そうやって判断しています。
一番いい食材に触れながら覚えた舌と、自分で選んできた経験。この二つは、どんな厨房へ行っても通用します。一生ものの財産を、一年目から積み始めてみませんか。
