昨年11月リリースされて以降、SNSなどで大きな話題を呼んでいる「ChatGPT」。みなさんの中にも、「普段からChatGPTを活用している」という人もいるかもしれません。
ChatGPTは既にさまざまなビジネスシーンで活用が進みつつあります。そうした中、第9回「星新一賞」優秀賞を受賞した葦沢かもめさんに、なぜ、AIを活用して小説を書こうと思ったのか。活用するメリット、デメリットは何か。活用する際の注意点とは。AIエンジニアであり、執筆にAIを取り入れた小説に関するインタビューを基に解説します。
キャリアマップ編集部 文/ITライター 関洋子
ChatGPTは既にさまざまなビジネスシーンで活用が進みつつあります。そうした中、第9回「星新一賞」優秀賞を受賞した葦沢かもめさんに、なぜ、AIを活用して小説を書こうと思ったのか。活用するメリット、デメリットは何か。活用する際の注意点とは。AIエンジニアであり、執筆にAIを取り入れた小説に関するインタビューを基に解説します。
キャリアマップ編集部 文/ITライター 関洋子
インタビューを受けてくれたのは……
葦沢かもめ(あしざわ かもめ)さん
大学・大学院では生物学を専攻。就活時当初は、専攻を生かして製薬会社の研究職に就くことも考えたが、PC一台あれば自由にモノづくりができるITの仕事に惹かれ、SI系の会社に就職。現在はAIエンジニアとして活躍しながら、平日の夜や休日をフル活用して創作活動に勤しんでいる。2021年、AIを執筆に取り入れた小説「あなたはそこにいますか?」で第9回日経「星新一賞」一般部門優秀賞(図書カード賞)受賞。「SFアンソロジー 新月/朧木果樹園の軌跡」(Kaguya Books)にAI共作短編小説が掲載されている。
かもめさんのアイコン
AIを活用した小説で「星新一賞」優秀賞を受賞
昨年11月にリリースされた生成AI「ChatGPT」。生成AIとは「ジェネレーティブAI」とも呼ばれ、学習したデータを活用し、プロンプトと呼ばれる質問や指示を投げかけることで、新しいコンテンツ(テキスト、画像、音楽、音声、動画など)やアイデアを作成するAIです。
つまり新しいコンテンツやアイデアを生成できることが、従来までのAIとの大きな違いです。ChatGPTはテキストを生成する生成AIサービスの一つ。米サンフランシスコに拠点を置くAI専門の非営利研究機関であり、AI開発会社でもある、OpenAIによって開発されました。ちなみにテキスト生成AIにはChatGPTだけではなく、「Google Bard」「Perplexity」「Notion AI」などのサービスが登場しています。
つまり新しいコンテンツやアイデアを生成できることが、従来までのAIとの大きな違いです。ChatGPTはテキストを生成する生成AIサービスの一つ。米サンフランシスコに拠点を置くAI専門の非営利研究機関であり、AI開発会社でもある、OpenAIによって開発されました。ちなみにテキスト生成AIにはChatGPTだけではなく、「Google Bard」「Perplexity」「Notion AI」などのサービスが登場しています。
現在、ChatGPTを創作活動のさまざまなシーンで活用している葦沢さんは、「現在のChatGPTは、それなりに、小説っぽいものができるぐらいのレベルにはなっています」と話します。ですが、「星新一賞」優秀賞を受賞した作品は、「プロットやアイデアは私が考え、本文の一部にAI(GTP2。ChatGPTの前身)を活用しています。つまり、ほとんどが人間である私が書いたものです」と説明。AIが生成した文章は、作中にでてきた「AIが書いた文章」として利用したのだそうです。
葦沢さんが星新一賞に応募した作品は100作あり、そのうちの一つが先の受賞作品。残りの99作は、「人間が作ったあらすじの文章を基に、AIに続きを書かせ、それを人間が手を加えて自然な文章にし、それをさらにAIに続きを書かせるという形で制作しました。それら99作のクオリティは、決して高いとは言えませんでした」と葦沢さんは当時を振り返ります。
現在、星新一賞のように「人間以外(人工知能など)の応募作品も受け付ける」という文学賞のほか、AIによる文章生成サービス「AIのべりすと」で書いた新しい物語に贈られる文学賞も登場しています。ですが、いずれにしても文学賞に応募する際は、AIを使って大量に応募するのは推奨されない、むしろ良くない行為とされているので、辞めてほしい」と注意喚起をする葦沢さん。当時は受賞したいという思いと、いたずら半分みたいな気持ちがあったそう。「運良く関係者の方に怒られることはありませんでしたが、反省しています」と話します。
アイデア出しから推敲までChatGPTを活用
では、具体的にどのようにChatGPTを小説の執筆に活用することができるのでしょうか。「活用方法はいろいろあります」と葦沢さん。アイデア出しから、あらすじの作成、キャラクターづくり、本文の作成、さらには推敲までというように、小説執筆に必要なほとんどのプロセスをChatGPTの力を借りることができるのです。葦沢さんは次のような方法で小説を書いているそうです。異世界ライトノベルを例に解説します。
1. 小説のジャンルの特徴を捉える
ChatGPTへの質問イメージ(以下質問とする):
「日本のライトノベルにおける異世界ファンタジーの特徴を教えてください」
2. アイデアを作成する
質問:「異世界ファンタジーのライトノベルのアイデアを5つ教えてください」
3. 主人公の生成(2で出されたアイデアのうち、採用するアイデアを決め、その物語に出てくる主人公を生成する)
質問:「2番目のアイデアを採用します。この物語の主人公の名前とプロフィールを教えてください」
4. キャラクターの役割
質問:「どのような役割のキャラクターを登場させる必要がありますか?」
5. キャラクターの生成
質問:「先ほどの登場させるべきキャラクターの名前とプロフィールを教えてください」
6. 構成とプロット
質問:「この物語のプロットを、三幕構成に従って制作したいです。三幕構成の要点を教えてください」
7. 本文の作成
質問:「今までの会話を基に400単語ぐらいの小説を書きたいと思います。小説の第1幕の前半部分を書いていただけませんか」
このような形でChatGPTと会話を交わしていくことで、小説を書いていくことができるのです。
(詳しくは葦沢さんのnoteを参照ください。)
ちなみに、一般的には英語で質問した方が精度は良いとされていますが、最近は日本語で質問した場合でも精度が良い回答を得られるようになってきています。
生成AIを用いた創作活動の課題
「生成AIを用いれば、今まで無理だと思っていた創作活動ができるかもしれない」──。そう思った方もいるでしょう。ですが、生成AIを用いた創作活動には、まだまだ課題もあります。
その一つが著作権侵害の問題。先述したように生成AIは学習したデータを活用し、新しいコンテンツを生成します。AIによって生成された文章が、既存の著作物と類似してしまうことも起こる可能性があります。
「ある作家の先生によると、生成されたアイデアがご自身の小説に似ていたというケースもあるそうです」(葦沢さん)
「ある作家の先生によると、生成されたアイデアがご自身の小説に似ていたというケースもあるそうです」(葦沢さん)
ここで少し、著作権法について説明しましょう。著作権法による保護の対象としているのは、著作物。著作権法では著作物を、「思想または感情を創作的に表現したもの であって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するもの」と定義しています。単なるデータやありふれた表現、表現ではないアイデア(作風・画風)などは、著作権法の保護の対象には含まれません。著作権の対象とする利用行為をしようとする際は、著作権者から許諾を得ることが原則です。権利者から許諾を得ておらず、権利制限規定(許諾を得ずに利用できること)にも該当しないにもかかわらず、他人の著作物を利用した場合は、著作権侵害となります。
具体的には
①「既存の著作物と同一、または類似していること」(類似性)
②「既存の著作物に依拠して複製などがされたこと」(依拠性)
これら双方を満たすことが、著作権侵害の要件となります。
ではAIが生成した作品は著作物に当たるのでしょうか。
文化庁の見解では、「AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、通常の場合と同様に判断される」とのこと。依拠性については、「元の著作物がAIの学習に用いられていれば、依拠性を認めても良いのでは」「AI生成物が、学習に用いられた基の著作物の表現と類似していれば、依拠性ありと推定して良いのではないか」など、依拠性についてはさまざまな意見があり、今後も検討が続けられていくようです。
文化庁の見解では、「AIを利用して画像等を生成した場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、通常の場合と同様に判断される」とのこと。依拠性については、「元の著作物がAIの学習に用いられていれば、依拠性を認めても良いのでは」「AI生成物が、学習に用いられた基の著作物の表現と類似していれば、依拠性ありと推定して良いのではないか」など、依拠性についてはさまざまな意見があり、今後も検討が続けられていくようです。
「現時点で言えるのは、AIが生成したものを人間が責任を持って修正すること。人間が創作に寄与した上で、責任を持てる状態にすることが大事だと思います」(葦沢さん)
現在、著作権を侵害しているコンテンツかどうか、チェックするシステムの研究も積極的に行われています。そのような技術が確立するまでは、例えばプロンプトを書く際に、「村上春樹風の文章を書いて」というような、著作権を侵害する可能性が高いワードを使わないようにしましょう。
生成AIをビジネスで活用するメリット・デメリット
ChatGPTを活用するメリットは、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化や生産性の向上が期待できること。例えばChatGPTとOCRを組み合わせれば、領収書をスキャンするだけで、名前や住所、金額などの必要な情報を自動で入力する仕組みや、社内の情報へのアクセスを指南するようなチャットボットも簡単につくれるようになるからです。
一方のデメリットはセキュリティをどう担保していくか。ChatGPTとの会話は、基本ChatGPTの学習用データとして活用されます。つまり開発元であるOpenAIに情報を提供していることになるわけです。
今ではビジネスにおいてクラウドサービスの活用は当たり前となりましたが、それはクラウドサービス事業者がビジネス利用にマッチした高セキュリティを担保したサービスを提供しているからです。OpenAIは冒頭でも述べたようにAI専門の非営利研究機関であり、AI開発会社です。またChatGPTはWebサービスとして提供されています。重要な情報を、インターネットを介して送信することで発生する機密情報や個人データの流出に加え、入力した情報の再学習利用などの懸念があります。
「例えばOpenAI側でも、再学習利用させない『オプトアウト』という機能を用意していますが、ビジネスシーンでは、よりセキュアな環境でChatGPTを活用できる『Azure OpenAI Service』などのサービスを利用することをお勧めします」(葦沢さん)
今ではビジネスにおいてクラウドサービスの活用は当たり前となりましたが、それはクラウドサービス事業者がビジネス利用にマッチした高セキュリティを担保したサービスを提供しているからです。OpenAIは冒頭でも述べたようにAI専門の非営利研究機関であり、AI開発会社です。またChatGPTはWebサービスとして提供されています。重要な情報を、インターネットを介して送信することで発生する機密情報や個人データの流出に加え、入力した情報の再学習利用などの懸念があります。
「例えばOpenAI側でも、再学習利用させない『オプトアウト』という機能を用意していますが、ビジネスシーンでは、よりセキュアな環境でChatGPTを活用できる『Azure OpenAI Service』などのサービスを利用することをお勧めします」(葦沢さん)
もう一つのデメリットが、回答にハルシネーション(錯覚)という事実に基づかない情報を生成する現象があること。例えば渋谷の観光スポットを教えてと聞くと、存在しない観光スポット(9.シャノンカフェ)が紹介されています。ハルシネーション対策技術も研究されていますが、まだまだ途上なので、ビジネスで活用する際はこのあたりも留意する必要があります。
AI時代のビジネスパーソンに求められるスキルとは
今後、ChatGPTなどの生成AIの活用は当たり前のように進んでいくでしょう。例えばChatGPTではプログラミングの補助もしてくれるので、プログラミングの知識に乏しい人でも、プログラムらしいものが作成されます。ですが、そのプログラムを知識のある人がみると、「とんちんかんなモノになっているはず」と葦沢さん。あくまでもChatGPTはツールなので、より品質の高いプログラムを効率的に作成するには、人がプログラムの全体的な構造を俯瞰的に見て、適切な指示をすることが必要になるわけです。
「AIはアシスタント、人間はそれを統括するマネージャー的な役割を担うようなイメージです。そういう全体を俯瞰して、アシスタントをうまく活用するスキルが求められるようになるのではないでしょうか」(葦沢さん)
「AIはアシスタント、人間はそれを統括するマネージャー的な役割を担うようなイメージです。そういう全体を俯瞰して、アシスタントをうまく活用するスキルが求められるようになるのではないでしょうか」(葦沢さん)
今はChatGPTというテキスト生成AIサービスに注目が集まっています。ですが、画像や映像、音声などの生成AIも進化していくことは間違いありません。葦沢さんが着目しているのが映像生成AIサービス。
「実用化のレベルに達するサービスが登場すれば、個人でもすごい映画がつくれる時代が来るかも知れません。楽しみにしたいと思います」(葦沢さん)
「実用化のレベルに達するサービスが登場すれば、個人でもすごい映画がつくれる時代が来るかも知れません。楽しみにしたいと思います」(葦沢さん)