IT業界の働き方として耳にする機会が増えた「SES」。
しかし、就職活動をする人の中には、求人票の“配属先による”“客先での勤務あり”といった記述で初めてSESを知り、働き方のイメージがつかみにくいと感じている人も多いようです。
そこで今回は、学生のみなさんが抱きがちな不安を解きほぐしながら、SES の実態・魅力・働き方をわかりやすく解説します。
お話をうかがったのは……
株式会社システムウエスト
大阪と東京に拠点を持つIT企業。システム開発、システムインテグレーション、ネットワーク構築など、顧客のニーズにあわせた幅広いサービスを提供しています。
代表取締役 楮 正富(かじ まさとみ)さん / エンジニア 藤元 直樹(ふじもと なおき)さん
■そもそも SES とは? ~「お客様と一緒に作る」という働き方 ~
SES(System Engineering Service)は、「お客様の現場に入り、一緒にシステム開発を進める働き方」です。自社内でサービスを作るのではなく、実際にシステムが使われている現場で課題を把握し、技術とコミュニケーションの両面でプロジェクトを前に進めるのがSESの役割です。
SESが生まれた背景
SESという働き方は、ここ数年で生まれたものではありません。実は、企業がコンピューターを使い始めた“超アナログなIT時代”から続いているものです。
当時のシステムデータは、今のようなUSBやクラウドではなく、パンチカード(穴の空いた紙)や、磁気テープ(細長いフィルム状の記録媒体)に保存されていました。カードが1枚ずれるだけでシステムが止まることもあり、テープの巻き戻しや交換にも専門的な作業が必要でした。
パンチカード↓
つまり、企業だけでは運用が難しく、“外部の専門技術者が現場に来て支える”必要があったのです。成果物を丸ごと作るのではなく、現場に入り、作業そのものを支える。これはまさに、現在のSESと同じ構造です。
パンチカード↓
つまり、企業だけでは運用が難しく、“外部の専門技術者が現場に来て支える”必要があったのです。成果物を丸ごと作るのではなく、現場に入り、作業そのものを支える。これはまさに、現在のSESと同じ構造です。
その後、Windows95の普及でシステム需要が一気に拡大し、外部技術者が継続して企業を支える形が一般化しました。こうした背景のもと、「準委任契約=SES」が正式な契約形態として社会に位置づけられるようになったのだと思います。
派遣・請負・出向・SESはどう違う?
IT業界では似た言葉が多く、混乱しやすいのですが、それぞれ役割が異なります。
【派遣】・・・人材の提供
必要なスキルを持つ人材を企業に送り出すしくみで、日々の業務指示は派遣先企業が行います。給与の支払いは派遣企業です。
【請負(うけおい)】・・・成果物をつくる
システムや機能など成果物を完成させる責任を負う契約です。クライアント先に常駐して作業する場合でも、請負会社の管理者の指示に従い仕事をします。
【SES(システムエンジニアリングサービス)/準委任契約】・・・作業を手伝う
成果物ではなく作業の遂行を担当する契約です。お客様の現場に入りプロジェクトの一員として動きますが、成果物に対する最終責任は負いません。
【出向】・・・社員を一定期間“預ける”
キャリア育成や協業関係の強化が目的で、出向先の指揮命令のもとで仕事を行います。給与の支払いなどは契約によって異なります。
自社開発・受託開発とどう違う?
ITエンジニアの働き方には大きく「自社開発」「受託開発」「SES」の3つの開発形態(ビジネスモデル)があります。
▶自社開発
自分たちでサービスを企画し、改善しながら“能動的に育てていく”。
▶受託開発
お客様の依頼を受けて“社内でオーダーメイド開発”を行う。
▶SES
お客様の現場に入り、“一緒にシステムをつくる”。
料理人に例えると……
・自社開発=自分でメニューを考え、ブラッシュアップしていくオーナーシェフ
・受託開発=お客様から注文を受け、社内キッチンで作って届けるケータリングシェフ
・SES=お客様のキッチンに入り、一緒に料理を仕上げる出張料理人
というイメージです。
SESは「成長の選択肢が最も広い働き方」
SESはさまざまな現場での経験を通して、エンジニアとして応用が利くスキルを身につけられる点が魅力です。限られた環境だけでは得られない、多様な開発言語や開発環境、そして業界ごとのビジネスルールに触れることで、エンジニアとしての視野は格段に広がります。
さらにプロジェクトによっては、モダンなフレームワークやトレンド技術、未知のプログラミング言語にも挑戦できる機会があります。経験の幅がそのまま強みになるため、将来の選択肢を増やしながら成長したい人にはおすすめの働き方です。
「ひとりで現場」は昔の話、今はチームでの開発が主流です
その一方で、SNS などでは「SESは一人で常駐させられる」といった不安を目にしますが、実際の現場は大きく変わっています。
準委任契約では、お客様が私たちに直接指示を出すことができず、作業の進め方もチーム単位で確認し合いながら進める必要があります。そのため、私たちも基本的に複数名で参画しますし、現場のリーダーや社内の担当者が常に連携してメンバーのフォローを行っています。
プロジェクト自体も複数社・複数人で進むことがほとんどで、「孤独な常駐」というイメージとは程遠いのが実態です。若手エンジニアが安心して経験を積めるよう、現場と会社が両方で支える仕組みを整えています。
技術者を一人にしないための仕組みづくり
SESではクライアント企業が勤務先になるため、社員同士のつながりが希薄になりがちです。そこで私たちは「技術者を一人にしない」ことを会社運営の軸に置き、次のような交流の場を整えています。
【チーム会】 ・・・ 中堅社員がリーダーを務め、大阪・東京あわせて6つのチーム(各4~5名)があります。年代の異なるメンバーが定期的に集まって、学びや情報交換を行っています。
【Under30(東京はFreg)】 ・・・ 若手同士が横のつながりを育てるためのコミュニティ。30歳未満の社員が対象です。
また、レクリエーションや社員旅行などの行事も、若手主導で企画・運営してもらうことで帰属意識を高めています。SESは人がすべてだからこそ、「会社は社員のためにある」という創業の想いを守りながら、誰も孤立しない環境づくりに力を入れています。
まとめ&メッセージ
SESは、経験を積むほど“キャリアの選択肢”が増えていく働き方です。現場で技術を磨きながら、他社エンジニアや多様な業界との関わりを通して、自分が活躍したいフィールドを選び取っていくことができます。そしてその先には、積み重ねた経験をもとに、開発だけでなくプロジェクト全体を支えるPL(プロジェクトリーダー)やPM(プロジェクトマネージャー)として活躍する道も拓けます。選択の幅が広いからこそ、目指せる未来も多様なのです。
技術者としてのスキル、幅広い業界知識、多様な人との協働ノウハウ、SESで経験するすべてが力になります。まだ将来がぼんやりしていても大丈夫。一緒に、あなたが描きたい未来を形にしていきましょう!
