やりがいの裏で「働きにくさ」が語られがちな飲食の世界。その常識を変えようと、本気で待遇改善に挑む会社があります。目指すのは「地域一番の厚待遇」。その理由と背景とは? 社長の本気に迫りました。
お話をうかがったのは
株式会社炭寅コーポレーション(本社:福岡県福岡市)
福岡を中心に、12店舗の焼き鳥店や居酒屋を展開。自社ブランド鶏「みつせ鶏」の飼育から販売までを手掛ける「第6次産業化」※ の先駆けとして業界を牽引する存在です。地域一番の繁盛店、地域一番の厚待遇企業を目指しています。
代表取締役 横尾 和磨 氏
代表取締役 横尾 和磨 氏
1972年佐賀県生まれ、九州国際大学卒。九積セキスイハイム株式会社(現セキスイハイム九州)にて住宅営業を6年間経験。2002年、親族が経営するヨコオ商事の外食事業部(現炭寅コーポレーション)に入社。2020年、同社代表取締役社長就任。
Q. 御社では「地域一番の待遇」を目標にしているとお聞きしました。どのような取り組みをされているのですか?
コロナ禍以降、給与面では3年連続のベースアップを実現し、確定拠出年金制度や子ども手当の拡充などを整備しました。また、週休二日制の定着や固定残業代による安定収入の確保など、日々の働きやすさも重視しています。さらに今後は、異動や転勤をしなくてもキャリアアップができる制度や、独立を含めた様々な選択ができる体制を作りたいと思っています。
Q. なぜ待遇改善に力を入れ始めたのですか?
私は2020年に社長に就任し、その直後にコロナ禍に見舞われました。急激に売上が落ち、助成金や融資で何とか持ちこたえることができましたが、その間に会社を離れていく社員を引き留めることができなかったのです。「安心して働ける環境がなければ人は定着しない」ということをこの時ほど痛感したことはなく、本気で待遇改善に取り組もうと決意をしました。
Q. 具体的に取り組んだことについて教えてください
給与面ではまず、中期的な計画を立てて全員に公開し、「この売上目標を達成したら、必ず昇給を実現します」と宣言しました。社員からすれば、「先行きが見えないのに、本当に大丈夫か?」という気持ちだったと思います。私自身も覚悟を示すために、初年度は結果が出ることを前提として、先行で給与を引き上げました。あの時は、社内の士気が一気に上がりましたね。改めてトップが本気で腹を決めることの重要性を実感しました。
みんながひとつになって頑張ってくれたおかげで、その後は3年連続で基本給アップをすることができ、4年目以降は役職者への昇給制度の見直しや、努力に応じた成果報酬の導入にも踏み切ることができました。福利厚生では退職金や、確定拠出年金を導入。退職金制度のある飲食店はまだまだ少なく、当社も導入にはかなりの勇気が必要でしたが、公務員のように「ここにいれば安心」と思ってもらえる環境をつくるために制度を創設しました。また、子ども手当は第一子に月3万円、二人目以降は1万5千円を支給。さらに等級制度による役職手当や、週休二日制の導入も進めました。
→ 会社設立当初からのスタッフを永年勤続表彰
→ 会社設立当初からのスタッフを永年勤続表彰
Q. 労働時間や残業についての取り組みはいかがですか?
当社では毎月の給料の中に、月60時間分の残業代を含めています。全体の平均残業時間は20~40時間程度ですが、20時間しか残業をしなくても、60時間分の残業代がつくのです。ここには、生活の安定を守ると同時に、空いた時間を活用して自己研鑽に励んでほしいという思いを込めました。一流の技術やスキルを身につけようと思ったら、一日8時間の就業時間内でできることは限られています。残業を義務とするのではなく、主体的な学びを応援する仕組みとして、この体制を導入しています。
また、以前は「店は休みなしで社員が働く」ことが当たり前でしたが、現在は社員の休みを優先し、そのために必要なら店を定休日にするという考えに切り替えています。
Q. 制度面以外での働きやすさの工夫があれば教えてください
社員が主体的に意見を出し合える場として、今年から「委員会制度」を設けています。接客・焼き場・料理、それぞれの部門に向上委員会をつくり、月に一度課題や改善案を共有しています。特徴は、誰でも参加できること。以前はブロック長会議を通じて情報が伝達される仕組みでしたが、今は入社1年目の社員も参加可能で、希望すれば他部門の委員会に出席して学ぶこともできます。トップダウンではなく、現場から声を上げる流れが生まれると、スタッフ自身が主体的に職場づくりに関わるようになりますね。“声を出せる風土”も働きやすさにつながる大事な要素だと実感しています。
→ 接客向上委員会の様子
Q. 最後に、今後の展望とメッセージをお願いします!
飲食業界全体として、社員のキャリア形成をいかにバックアップできるかは今後の大きな課題です。当社では、地域ごとに複数店舗を統括運営する「ドミナント戦略」を進めており、今後は引越しをしなくても昇進できるようにする仕組みを整えていきます。また、既存の独立支援制度に今後は業務委託方式も取り入れながら、さらに内容を充実させていきたいと考えています。
飲食業は学びが多く、人とのつながりや感謝の心を実感でき、成長につながる尊い仕事です。みなさんが安心して挑戦し、働き続けられるよう、これからも「地域で一番待遇」の実現を目指し、有言実行していきます。関心をもってくださった方は、ぜひ会社説明会にお越しくださいね。
