今年、フランスのショコラ愛好家による品評会「C.C.C.」において、小山シェフとショコラティエの中川豊が、ともに最高位となる「ゴールドタブレット」を受賞しました。
さらに、審査員が特に心を動かされた作品に贈られる「クープ・ド・クール」にも、二人そろって選出されました。
小山シェフは、2011年の初受賞以来、今回で13回目となる最高位の受賞。
そして中川さんは、昨年に続く2回目の受賞となりました。
小山シェフが長年追求してきたショコラづくりへの想いと技術。
その考え方を学びながら、自らの感性や経験を重ね、独自の表現を磨いてきた中川さん。
そんな二人が、世界の舞台でともに高い評価を受けたこと。
その背景には、どのような考え方や、日々の積み重ねがあるのでしょうか。
今回から、小山シェフと中川さん、それぞれの言葉を通して、「世界を驚かせるショコラティエになる方法」を探っていきます。
まずは小山シェフへのインタビュー。
第1回は、世界への挑戦の原点と、今回の受賞作品に込められた想いについてお届けします。
──────────────────
《第1章|世界基準とは何かを考える。》
【Q1.今回の受賞作品には、どのような発想や想いが込められているのでしょうか。また、C.C.C.に挑戦し続ける理由を教えてください。】
小山シェフ:
今回の作品についてお話しする前に、僕がなぜフランスのC.C.C.に出品するようになったのか、その始まりを少し知っていただきたいと思います。
エスコヤマでショコラの専門店を始めたのは、2005年です。当時の僕はチョコレートを使ったお菓子が得意でそれを中心に宝石のようなショコラもずらりと並んでいたら、子どもたちはどんなに驚くだろう。そんなワクワクが、ボンボンショコラをつくり始めた原点でした。
ただ、当時はつくってもなかなか売れませんでした。日本のお客様の関心は、ヨーロッパの著名なショコラティエに強く向いていたんです。
僕は、本場でショコラの修業を積んできた人間ではありません。自分で考え、試しながらつくってきました。その僕のショコラを、日本のショコラファンにも知っていただくには、一度、本場で評価を受けて見ないとこの常識は動かない。そう考えるようになりました。
そんなとき、当時のサロン・デュ・ショコラの主宰者から、パリへの出展を勧めていただいたんです。それが、2011年のC.C.C.初出品につながりました。
最初のテーマは「はじめまして」。
ビター、ミルク、プラリネで基本の技術を伝え、ラフロイグとフランボワーズ、大徳寺納豆を使ったショコラで、僕自身の個性を表現しました。
当時は5種類の提出でした。
(今は4品)
その初出品で、当時の最高評価である5タブレットと外国人最優秀賞(アワード)をいただいた。それが日本でも紹介され、それまでなかなか売れなかったボンボンショコラを、多くのお客様が求めてくださるようになりました。
僕の海外への挑戦は、日本のお客様に喜んでいただくために始まったんです。
今回で最高位の評価をいただくのは13回目になります。コロナ禍を機に、出品する作品も、日本で先に発表したものへと変えました。まず、日頃から支えてくださる日本のお客様に、新しい作品を味わっていただきたいという思いがあります。
今回受賞した作品の発想の原点は、香水との出会いでした。
インダルト・パリの社長がわざわざパリから来店され、4つの香水を試してほしいとおっしゃったんです。ショコラの制作依頼ではなく、純粋に香りを体験してほしいというお話でした。
その香りを手がけたのが、フランシス・クルジャン。実際に触れてみると、僕がそれまで持っていた香水のイメージを大きく超えるものでした。
最初に感じる香りがあり、時間とともに別の表情が現れ、最後にはまた違う余韻が残る。その複雑な構成を、食べられる素材で「味覚変換」したら、どんなショコラが生まれるだろう。そう考えた瞬間に、ワクワクしたんです。
そこから約1か月、休みの日に手首や試香紙につけ、時間ごとの香りの変化を記録しました。それを、お茶、花、蜂蜜、スパイス、果実、カカオなどの素材に置き換えながら、味わいの構成を考えていきました。
目指したのは、口に入れた瞬間から最後の余韻まで、香りの表情が移り変わっていくショコラです。香水が時間の中で見せる立体感を、一粒の中で表現したかったんです。
若い頃は、試作を続けるうちに何かがひらめくことを期待していました。でも今は、観察し、調べ、頭の中で着地点を描いてから試作に入ります。実際につくるのは、そのイメージを確かめ、精度を上げていくためです。
今、C.C.C.に出品するのは、日本で生まれた新しい作品を、パリのショコラ愛好家の皆さんにも味わっていただきたいからです。そして、その歳の自分の表現がどう届くのかを知りたい。
作品は毎年違います。何歳になっても、心が動く瞬間を受け取れる自分でいたいですね。味わいはもちろん、テーマ、言葉、ビジュアル、コンセプトムービーまで含めて、一つの世界を表現する。それが、今の僕の創作です。
さらに、審査員が特に心を動かされた作品に贈られる「クープ・ド・クール」にも、二人そろって選出されました。
小山シェフは、2011年の初受賞以来、今回で13回目となる最高位の受賞。
そして中川さんは、昨年に続く2回目の受賞となりました。
小山シェフが長年追求してきたショコラづくりへの想いと技術。
その考え方を学びながら、自らの感性や経験を重ね、独自の表現を磨いてきた中川さん。
そんな二人が、世界の舞台でともに高い評価を受けたこと。
その背景には、どのような考え方や、日々の積み重ねがあるのでしょうか。
今回から、小山シェフと中川さん、それぞれの言葉を通して、「世界を驚かせるショコラティエになる方法」を探っていきます。
まずは小山シェフへのインタビュー。
第1回は、世界への挑戦の原点と、今回の受賞作品に込められた想いについてお届けします。
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《第1章|世界基準とは何かを考える。》
【Q1.今回の受賞作品には、どのような発想や想いが込められているのでしょうか。また、C.C.C.に挑戦し続ける理由を教えてください。】
小山シェフ:
今回の作品についてお話しする前に、僕がなぜフランスのC.C.C.に出品するようになったのか、その始まりを少し知っていただきたいと思います。
エスコヤマでショコラの専門店を始めたのは、2005年です。当時の僕はチョコレートを使ったお菓子が得意でそれを中心に宝石のようなショコラもずらりと並んでいたら、子どもたちはどんなに驚くだろう。そんなワクワクが、ボンボンショコラをつくり始めた原点でした。
ただ、当時はつくってもなかなか売れませんでした。日本のお客様の関心は、ヨーロッパの著名なショコラティエに強く向いていたんです。
僕は、本場でショコラの修業を積んできた人間ではありません。自分で考え、試しながらつくってきました。その僕のショコラを、日本のショコラファンにも知っていただくには、一度、本場で評価を受けて見ないとこの常識は動かない。そう考えるようになりました。
そんなとき、当時のサロン・デュ・ショコラの主宰者から、パリへの出展を勧めていただいたんです。それが、2011年のC.C.C.初出品につながりました。
最初のテーマは「はじめまして」。
ビター、ミルク、プラリネで基本の技術を伝え、ラフロイグとフランボワーズ、大徳寺納豆を使ったショコラで、僕自身の個性を表現しました。
当時は5種類の提出でした。
(今は4品)
その初出品で、当時の最高評価である5タブレットと外国人最優秀賞(アワード)をいただいた。それが日本でも紹介され、それまでなかなか売れなかったボンボンショコラを、多くのお客様が求めてくださるようになりました。
僕の海外への挑戦は、日本のお客様に喜んでいただくために始まったんです。
今回で最高位の評価をいただくのは13回目になります。コロナ禍を機に、出品する作品も、日本で先に発表したものへと変えました。まず、日頃から支えてくださる日本のお客様に、新しい作品を味わっていただきたいという思いがあります。
今回受賞した作品の発想の原点は、香水との出会いでした。
インダルト・パリの社長がわざわざパリから来店され、4つの香水を試してほしいとおっしゃったんです。ショコラの制作依頼ではなく、純粋に香りを体験してほしいというお話でした。
その香りを手がけたのが、フランシス・クルジャン。実際に触れてみると、僕がそれまで持っていた香水のイメージを大きく超えるものでした。
最初に感じる香りがあり、時間とともに別の表情が現れ、最後にはまた違う余韻が残る。その複雑な構成を、食べられる素材で「味覚変換」したら、どんなショコラが生まれるだろう。そう考えた瞬間に、ワクワクしたんです。
そこから約1か月、休みの日に手首や試香紙につけ、時間ごとの香りの変化を記録しました。それを、お茶、花、蜂蜜、スパイス、果実、カカオなどの素材に置き換えながら、味わいの構成を考えていきました。
目指したのは、口に入れた瞬間から最後の余韻まで、香りの表情が移り変わっていくショコラです。香水が時間の中で見せる立体感を、一粒の中で表現したかったんです。
若い頃は、試作を続けるうちに何かがひらめくことを期待していました。でも今は、観察し、調べ、頭の中で着地点を描いてから試作に入ります。実際につくるのは、そのイメージを確かめ、精度を上げていくためです。
今、C.C.C.に出品するのは、日本で生まれた新しい作品を、パリのショコラ愛好家の皆さんにも味わっていただきたいからです。そして、その歳の自分の表現がどう届くのかを知りたい。
作品は毎年違います。何歳になっても、心が動く瞬間を受け取れる自分でいたいですね。味わいはもちろん、テーマ、言葉、ビジュアル、コンセプトムービーまで含めて、一つの世界を表現する。それが、今の僕の創作です。
