レストランで働く人と聞いて思い浮かぶのは、料理人とサービススタッフではないでしょうか?
今回お話を伺った東天紅が数多く手がけているのは、婚礼や七五三、長寿のお祝いといった、お客様の人生の節目となる会です。そうした一日をつくるには、もう一つ欠かせない仕事があります。会の中身をお客様と一緒に決めていく、予約の仕事です。
今回集まっていただいたのは、上野本店で働く、サービス担当・調理担当・予約担当の3人。
自分の持ち場をこなすだけでは、一つの会は完成しません。3つの部署がどう手を組んでいるのか、3人の言葉からたどっていきましょう。
株式会社東天紅 1961年、東京・上野の不忍池畔に開業した中国料理専門店。広東・福建料理をベースにした、素材の味を活かす中国料理を提供しています。
今回お話を伺った方々
左から、
・須藤 楓(すどう かえで)さん/サービス担当/千葉ビューティー&ブライダル専門学校出身/2025年入社
・岸本 優輝(きしもと ゆうき)さん/調理担当/新宿調理師専門学校出身/2023年入社
・長島 久る美(ながしま くるみ)さん/予約担当/銚子商業高等学校出身/2014年入社
■一つの会は、まずどこから始まるのでしょうか?
長島さん:入り口は私たち予約です。お問い合わせをいただいたところから、どんな会にしたいのかをお客様と詰めていきます。固まった内容は資料にして、サービスと厨房へ共有します。現場はパソコンの前に座っているわけではないので、共有はやはり紙が多いですね。
須藤さん:その資料を受け取って、担当フロアの進行を確認していきます。人数や進行に変更がないか、会館内のセッティングは整っているか。当日は厨房とも打ち合わせをして最終確認をし、最後にサービスのメンバーとミーティングをしてから開宴を迎えます。
岸本さん:厨房には1週間ほど前から、ご予算や人数、アレルギーの情報が届きます。そこから発注や仕込みが始まって、当日も予定表を見ながら、前に見た予約と差がないかを確認しています。
■他の部署と一つの会をつくるうえで、それぞれが意識していることは何でしょうか?
須藤さん:まずは、変更が出たら、その場で全部に伝え直すことは大事にしています。事前に予約が詰めてくれていても、当日の変更は必ず出てきます。ご挨拶をされる方が急に増えると、料理を出すタイミングが全部変わってくる。それを厨房に伝えて、サービスのメンバーにも伝え直す。この繰り返しです。
岸本さん:厨房からすると、自分たちだけで決めないことが重要です。当日にアレルギーが分かることもあるので、変えられるものがあるかをサービスの方とよく話して、「ではこれに変えます」とお伝えします。それをサービスがいろんな方に伝えてくれるから、お客様に安心してお出しできるんです。
長島さん:予約は、その場だけで終わらせないことだと思います。お料理のことは厨房へ伝えて、次回につながる内容や今回の反省点は資料に残しておく。翌年また同じお客様がご予約くださったときに、「去年はこうでしたね」と先回りしてご説明できるんです。
■連携が重要な中、話しやすい関係は、どうやってつくっているのでしょうか?
岸本さん:日頃からサービスの方と何でもいいので世間話をしておくと、お客様の確認などもしやすくなります。なので、日常会話は意外と大事だと思います。
入社前は、料理は持ち場の中で完結する仕事だと思っていました。前菜は前菜の人たちだけ、鍋は鍋の人たちだけ、というように。でも実際は、前菜が出たら声をかけてもらい、それを受けて点心を出す。点心を出したら、今度は自分が鍋を振っている人に伝える。声のやり取りでコースが進んでいくんです。厨房の中でもそうですから、部署が違うサービスの方とは、なおさらですね。
長島さん:私は、出勤したらまず厨房に顔を出して、大きく挨拶するようにしています。みんなの名前を呼びながら回るので、けっこう目立つと思いますよ。どの部署でも、顔を覚えてもらうことを意識しています。
須藤さん:私も、自分から声をかけるようにしています。アルバイトで初めて来る子には、こちらから「大丈夫?」と話しかける。厨房の方にも、できるだけ自分から。仕事中はみんな集中しているので、そのぶん声をかけるきっかけは自分からつくろうと思っています。
■部署を越えて協力して生まれた、忘れられない出来事はありますか?
岸本さん:レストランにお顔合わせでいらしたお客様が、アラカルトを何品か召し上がったあと、最後にチャーハンを頼まれたんです。締めの食事かなと思っていたら、「このチャーハンを食べて、ここで結婚式を挙げるか決める」と。その話が厨房にも伝わってきて、ざわざわしました。
その日は厨房長が休みで、セカンドの方が鍋を振ってお出ししました。しばらくして店長が「うちで挙げてくださることになりました」と教えてくれたんです。当店のチャーハンを気に入っていただけたのが、本当に嬉しかったですね。
長島さん:今日の朝にもありました。夜のご予約の幹事様から「お誕生日の方がいらっしゃるんだけど、当日で申し訳ないけれど何かできますか」とお電話があって。規模の大きな会なので事前のご予約が基本なのですが、受話器を置いてすぐ厨房へ走って聞いたら、「いいよ、やってあげるよ」と。いつも必ず対応できるわけではないですが、他の業務を抱えている中でも対応してくれるので、できる限り対応してくれる調理スタッフは本当にありがたいですね。
須藤さん:開宴の1時間ほど前に幹事様がリハーサルにいらして「ここをどうにか変えたいんだけど、できないよね」とお声がけをいただくことがあります。進行が変われば料理を出すタイミングも変わるので、厨房に確認したうえで「こういう風にするのはいかがですか」とご提案したとき、会のあとに「ありがとう、本当に助かりました」と言っていただけました。半年後にまた同じ会社の方がいらしたときに「そういえば前回もやってくれたよね。あのときはありがとう。」と顔を覚えていただけるのは、嬉しいですね。
■学生の皆さんへのメッセージをお願いします。
岸本さん:調理から見ると、いろいろな目的のお客様がいらっしゃるのが面白いところです。お顔合わせ、お誕生日会、法事、宴会、そして婚礼まで。私も婚礼を経験しましたが、宴会では出さない盛り付けがたくさんあって、7〜8人がかりで仕上げていくのが楽しかったですね。
学生というのは、言ってしまえば特別な身分です。インターンに行ったり、気になるお店に食べに行ったり。その会社ごとの雰囲気を自分で感じ取って、入りたい会社を決めてもらえたらいいなと思います。
長島さん:部署もフロアも分かれているのに、連携がしっかり取れているところが魅力だと思います。他部署の手伝いにも行くんですよ。私も前菜の盛り付けを手伝ったり、会場の下見に立ち会ったり。
学生の皆さんには、一箇所だけに目を向けないでほしいなと思います。「あの人たちはどんな仕事をしているんだろう」と意識して見るだけでも構いません。いろんなところに目を向けたうえで、自分が何を大事にしたいのかを考えて選ぶ。それが本当に大切だと感じています。
須藤さん:私も専門学校の出身で、学んできたのはブライダルでした。ここは、その知識をそのまま実践できる場所です。しかもサービス一本ではなく、厨房や予約の仕事にも触れられるので、視野がどんどん広がっていきます。専門で学んだことを活かしたい方は、ぜひ一度、私たちの現場を見に来てください。
