近年、木造建築物の評価が高まっています。見た目の美しさもさることながら、SDGsの観点でも注目度が高く、木を主体とした大規模な建造物がメディアにも頻繁に取り上げられています。それと同時に、アレルギーや化学物質過敏症は、生活空間に使用される素材に含まれる物質が起因しているのでは?とも言われ、家づくりにおいても近年は無垢材や珪藻土など、昔ながらの自然素材を好まれる方が増えています。
実はこれら自然素材は、住む人の『副交感神経』の機能を高めると言われています。
そんな人の身体にも心にも優しい家づくりを手掛けている、株式会社戎工務店の社長・戎健太郎さんに、自然素材の家がどのように人間に作用するのか、さらにその家づくりの特徴などを伺ってみました。
【株式会社戎工務店とは?】
1947年に創業。以来、神戸に根差し、それぞれの時代に求められる「家づくり」で街の発展や地域の人々の豊かな暮らしづくりに貢献している。長年かけて築いてきた技術力、ネットワークをどのように活かし、木のぬくもりを大切にした、自由設計の新築戸建て住宅、及びリフォーム・リノベーションを手掛けている。現在は12名の少数精鋭の社員たちでこの家づくりに取り組み、創業以来76年連続黒字経営を達成中。
◆そもそも『副交感神経』って何?
自律神経は、呼吸や体温調節、血圧、心拍、消化、代謝、仕事、運動…生きていく上で欠かせない生命活動を維持するために、常に働き続けている神経のこと。
その自律神経には以下の図のように活動時に働く“交感神経”と休息時に働く“副交感神経”が存在しており、人の心身の健康に大きく影響するものです。
例えば、運動をしている時には心拍数が増えることで血管が収縮し、血圧が上がりますが、これらはいずれも交感神経の働きによるもの。
その一方、リラックスモードの時は副交感神経の働きによって心拍数が減るため血管が緩み、血圧も下がります。
人間はこの2つの神経が交互に働くことで身体を調整しているため、このバランスが崩れると心身に支障をきたすのです。
◆自然素材を使用した住まいは、身体にどう作用するのか?
心身をリラックスさせるためには、人間の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)が心地よい状態、つまり脳や感情にストレスが無い状態にすることが大切です。
この『五感』と脳や感情の関係性を解説すると以下になります。
<感覚を忘れていく順番>
聴覚→視覚→触覚→味覚→嗅覚
◎嗅覚は五感の中でも、感情・本能に関わる「大脳辺縁系」に直接伝達される感覚のため、最も記憶に残りやすい感覚と言われています。
<感覚が発達する順番>
触覚→聴覚→嗅覚&味覚→視覚
◎妊娠7~8週頃には皮膚感覚が生じ、赤ちゃんは自分の指や手をなめたりします。この皮膚感覚の刺激が脳の発達を促進していると言われています。
<人が使うことの多い感覚の順番>
触覚→聴覚→視覚→臭覚→味覚
◎人は起きていても寝ていても、何かに常に触れているため、触覚が最も五感の中で使われる感覚です。
上記の順番から考えると、特に「嗅覚」「触覚」に良い作用を与えることが、人の身体と心のリラックス効果を高めることがわかります。
そのために最適な素材を選び、正しく使った家づくりをする必要があります。
では、当社では実際にどのような自然素材を使い、どのように家づくりに活用し、どのような効果をもたらしているのかなど、次で具体的に解説・ご紹介していきます。
【素材選び】
木材について
天然無垢の木…といっても木の種類や生産地、職人の手技によって、特性はそれぞれ異なります。全国各地の山をまわる中、ようやく出会えたのが徳島の木頭杉でした。
伐採した木を住宅建材として使用するためには乾燥させる必要がありますが、機械で短時間乾燥させると、木が内側で割れたり、木の持つオイルが抜けてしまい、せっかくの木の香りが変質してシロアリの忌避性分を低下させてしまう可能性があります。
ここの木頭杉は、1年・2年…という長い歳月をかけて自然乾燥されています。また木が山の斜面に生えている特性を理解し、住宅に使用する際にどの部分をどのように使用するのかを考慮することも大切です。このこだわりにより、木の持つメリットを損なわず、十分な強度を維持しています。
壁について
壁には厳選した漆喰や珪藻土を用いています。
漆喰や珪藻土には化学物質を分解する効果や調質効果があるのですが、やはり全てが同じ効果をもたらすわけではなく、また「塗り方」や「練り方」によって100%の効果を得られないこともあります。
当社ではそれら自然素材を熟知した左官職人が、見た目の美しさだけではなく、十分な効果を得られるよう、高い技術で仕上げています。
【効果について】
癒し効果が高い「香り」
▲木が本来持つオイルを十分に含んだ材木を、壁や床、梁、住宅設備などにふんだんに使用することにより、家に一歩足を踏み入れた瞬間から木の香りを感じ、その香りは何年経っても長く持続します。
「これまでシャワーだけだったり、浴槽に入っても烏の行水状態だったのが、すっかり長風呂になってしまいました」というお声もいただいています。
▲片方は煮干しだけを入れた皿、もう片方は珪藻土と一緒に煮干しを入れています。においを比較すると、珪藻土と一緒に入れた方はほとんど煮干しのにおいがしないんです。
実は「におい」は水分と結びついているため、湿度が高いと臭気も高くなります。珪藻土の土壁により余分な湿気を吸収するため、臭いも一緒に抑えてくれます。
ぬくもりを肌で実感できる「触感」
▲床材一面に敷き詰めた無垢材は、熱を奪いにくいため、素足でも体温を奪われず「ベッドを下りた一歩目が至福の瞬間です」という方も。
▲珪藻土と同様に適切に乾燥処理がされた木にも調湿効果があり、部屋のどこに触れてもさらりとしていて、心地よく過ごすことができます。
「柔らかな光」で目に優しい
▲漆喰や珪藻土の土壁は、室内のLED光などをほどよく吸収。また表面に凹凸があることで、あらゆる方向に反射するため、目に入ってくる光が柔らかいものとなっています。
▲少しレトロさを感じる、窓枠やサッシにも木材を使用。落ち着いた空間づくりと、窓から差し込む自然光が木の窓枠にも反射し、ゆらぎのある穏やかな光が部屋に差し込みます。
家族の歴史もともに刻む「木の変化」
▲木は年数が経つにつれ、美しく変化していきます。使用されている場所により、元の色合いが残っていたり、時にはちょっとした傷がついていることもありますが、それもまた、家族と過ごした思い出の一つとして記憶に刻まれていくでしょう。
耳に心地いい「音響特性」
▲しっかりと乾燥された木材は、音をバランスよく吸収。足音などの振動音を抑制したり、ほどよい残響音を残す特性があります。また家族との会話やステレオなども心地よく響き、音へのストレスの軽減が期待できるでしょう。
◆自律神経バランスが整う住まいで、心身ともに健康に!
忙しい毎日を過ごす現代人。なかなかリフレッシュに出かける機会をつくることも難しいでしょう。だからこそ、家にいるだけで副交感神経の機能が高まる、自然素材をあらゆる形で取り入れ、正しく使った住空間はこれからますます必要とされてきます。
木造建築の住宅に注目度が高まっているのは、美観だけではなく、こうった深い理由があるのです。
