調理に携わる人間がお客様の前に出て、その表情・反応を見ながら調理を行えるという点が、割烹の醍醐味です。よく比較対象になる料亭は、厨房から個室へと仲居さんがお料理を運ぶため、調理師とお客様が直接顔を合わせることは基本的にはありません。お客様のご様子は仲居さんを介して調理師に伝えられますが、対面で得られる情報には叶わないものがあります。調理師が直接お客様と接し、そのご様子を観察したり、ご要望を反映したりしてお食事を提供する割烹こそ、お客様に最も喜んでいただけるスタイルではないかと考えています。
こうした特色を持つ割烹で働くことで、皆さんはいくつもの力を身につけていけます。ここでは代表的な3つの力をご紹介しましょう。
お客様の様子に目と耳を張り巡らせる「観察力」
〜気持ちを先取りしたサービスで、心地よいひとときを〜
まず、観察力。「お箸を落としてしまう」「グラスを傾ける」「その傾けたグラスの角度」など、私たちはお客様の一挙手一投足を目と耳で常に観察します。グラスの角度で、どれくらい飲み物が残っているかの察知し、お客様に呼ばれる前に次のお飲み物をお勧めする。こうして“目と耳を張り巡らせる”日々の中で磨かれる観察力は、おもてなしを支える強い土台となります。
お客様に最適な状態で料理を届ける「思考力」
〜熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。時間経過を計算しての調理〜
来店されるお客様の表情やリアクションは直接拝見できます。しかし、お茶屋さんの仕出し料理は、お客様の顔も反応も見えない中で提供する料理です。そういった中で、どのようにして“より美味しいもの”をお届けするかを考えるのが調理師の役割です。お客様の前に仕出しを置くおよその時間は、お茶屋さんに教えていただけます。その時間に料理のベストを持っていくには、いつ調理を始めて、熱いものはどのくらい熱くしておけばよいのか、冷たいものはその温度をどう保つか。最適な状態で料理をお客様に食べていただくために、お客様が仕出しを食べる瞬間から逆算した緻密な計算と確かな技術で調理計画を立てることで、思考力が鍛えられるのです。
快適さをお届けする「コミュニケーション力」
〜喜びのタネを見つけたら即行動。全員の連携で仕掛けるサプライズ〜
蘭では、来店のお客様と仕出しのお客様の両方を、同じ時間帯におもてなしします。そのため、チームワークが非常に重要です。
入社直後は、『新人の自分がきちんとやらなければ』との責任感から一人で仕事を抱え込んでしまいがちです。しかし、それではお客様をお待たせしてしまうこともあります。
仕事に慣れてくると、店内と店外のお客様の状況を把握できるようになり、自然と自分がやるべきこと、アルバイトさんや先輩にお願いすべきことが見えてきます。
例えば、客席で「お誕生日おめでとう」という会話を聞いた時、アルバイトさんにサプライズケーキを買いに行ってもらい、先輩にはケーキが増えるぶん、コースの全体ボリュームを調整してもらいます。
全員でお客様をおもてなしするために、先輩やアルバイトさんにどう声をかけたらよいかといったコミュニケーション力も、業務を通して培われます。
