300年という長い歴史を誇り、ミシュラン二つ星店でもある萬亀楼。伝統と技法をふまえた京料理だけでなく、 日本の豊かな文化やおもてなしの精神を学ぶこともできます。その一方で、他ジャンルの調理方法を採用し、 働き方の改善に取り組むなど、新しいことにもチャレンジする老舗料亭です。
名料亭が集う京都でも希少な「有職料理」に携われる
享保7年創業の萬亀楼は、300年にわたる歴史と伝統を誇るだけでなく、ミシュラン二つ星(ミシュランガイド京都・大阪+和歌山 2022/長年ミシュランの星を獲得し続けている)も獲得する名料亭。平安中期の宮廷で料理方を務め、鎌倉期には源頼朝公から姓を賜り庖丁方を務めました。その後、豊臣秀吉公の命で八条ノ宮家、のちに京極ノ宮家、有栖川ノ宮家に仕えています。
宮廷の節会(天皇主催の宴会)で食された雅やかな「有職料理」は、京料理のルーツ。そこから茶事の「懐石料理」、社寺の「精進料理」、おばんざいなどの「町方料理」が生まれています。
現在の萬亀楼では、有職料理の伝統と技法を踏まえながら、旬の食材と時代に合わせた味つけで京懐石と有職料理をご提供しています。名料亭が集う京都においても、希少かつ正統な有職料理に携われるのは萬亀楼だけです。
御所ゆかりの生間流を継承する主人が「式包丁」を伝える
萬亀楼では、明治期に御所ゆかりの生間流(いかまりゅう)を継承し、主人が家元として「式庖丁」をいまに伝えています。
式庖丁は、平安時代の宮中で、節会などのおめでたい日に行われてきた食の儀式。烏帽子・袴・狩衣姿で、まな板のうえの魚や鳥に直接手を触れずに、包丁刀と真魚箸(まなばし)だけを使って調理し、おめでたい形を表す瑞祥に盛りつけます。その流儀のひとつが生間(いかま)流式庖丁で、平安中期、すなわち藤原道長の時代に宮家から伝わり、現在で約1100年になります。
当店では毎年、八坂神社、貴船神社、山陰神社(吉田神社)などで式包丁を奉納。料亭として神事に参加することは珍しく、従業員も同行します。
生粋の京料理とおもてなしの精神を学び身につける
萬亀楼が立地する出水通り周辺は、その名の通り地下水に恵まれた地です。当店では、敷地内にある井戸を利用した水を調理に使用。また、京料理の味を支える出汁は、お客さまの人数に関係なく、ご入店後に削りたての鰹と昆布でとります。野菜はできるだけ地元産を使い、魚も近海の鮮度のよいものを選ぶなど、京都の恵みをふんだんに用いた料理をご提供しています。
敷地内の庭の手入れは主人が中心となり、従業員も掃除や剪定を行います。和菓子や黒文字も自分たちでつくることで、茶の湯の精神を学んでいます。お客さまに対して、最初から最後まで自分たちで手がけたものをご提供することは、日本のおもてなし精神の根幹に結びつくことだと考えています。
大学院で最新の調理メカニズムを学ぶ若主人の挑戦
当店の若主人は現在、仕事と両立しながら龍谷大学大学院農学研究科に通って最新の調理メカニズムを学び、博士学位(食農科学)の取得をめざしています。
ときには大学院で学んだことをもち帰って、実際に試みることもあります。例えば、他ジャンルや最新の調理方法と当店の伝統的な調理方法を比較。そのことによって従業員の調理技術への理解が深まり、よりよいものが生まれるという効果も出ています。
また、若主人は従業員一人ひとりがイキイキと働けるように、労働時間や働く環境づくりの改善にも取り組んでいます。守るべき伝統と新しい考えをうまく共生させることで、老舗料亭としてのさらなる繁栄に挑んでいます。
