ポンテベッキオ
オーナーシェフ 山根大助氏
(プロフィール)
大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、神戸「ドンナロイヤ」に入社して84年渡伊。ミラノ「グアルティエロ・マルケージ」をはじめ各地で研鑽。86年に帰国後、「リストランテ・ポンテベッキオ」を開店。現在、北浜本店の他、「モード ディ ポンテベッキオ/ウ in モード」、「エキポンテベッキオ」、堺東に「テアトロポンテベッキを」の計4店舗を構える。
オーナーシェフの山根大助氏率いるイタリアンレストラン・ポンテベッキオ。大阪でコンセプトの違う4店舗を展開し、国内におけるイタリアンレストランの代表格と評されています。コロナ禍での飲食業界の可能性と働き方について山根氏に聞きました。
―――――――コロナで今年は飲食業界が大きな影響を受けましたが、今年入社の新卒はどんな様子でしたか?
オーナーシェフの山根大助氏率いるイタリアンレストラン・ポンテベッキオ。大阪でコンセプトの違う4店舗を展開し、国内におけるイタリアンレストランの代表格と評されています。コロナ禍での飲食業界の可能性と働き方について山根氏に聞きました。
―――――――コロナで今年は飲食業界が大きな影響を受けましたが、今年入社の新卒はどんな様子でしたか?
新人に最初に教えるのは「クオリティー」
当社はオープン以来34年間、一度も欠かすことなく新卒採用を行なっています。今年は入社早々に自粛期間に入ったので本店に全員を集めて研修をしていました。店が営業していると技術習得に時間をかけるのが難しいので、新人研修にとってはいい機会になりました。
自粛期間後は例年通りの新卒研修を行なっています。今年に限らず、育成方針で大事にしていることは、まず「クオリティ」を教えることです。それには、ある程度の値段と内容を提供する店でないと覚えられないことがあるので、まずは本店を経験してもらいます。レストランは単価が下がれば回転を考えるなど、業態によって学ぶべき要素があるのですが、それはその後の異動で経験し、ゆくゆくはオールマイティにいろんな業態に携われる人材に育てていきます。
―――――――毎年の会社説明会は山根シェフ自ら行い、入社試験の内容は事前にリークすると聞きました。
「今」じゃない未来の自分に学びという投資ができるか
オーナー自身が熱を持って直接語ることが大事だと思っているんです。会社説明会では、会社のことだけでなく、飲食業界のこと、料理人という仕事のこと、そして関係ないことも結構喋っています(笑)。
試験内容も会社説明会でリークするんですよ。「ポンテベッキオの名前の意味」「イタリア語で1から20まで数える」「イタリアの州の名前を言う」など、誰でも調べて覚えればできるような内容です。でも、調べてくるか、覚えてくるかどうかが大事。社会人になると、無駄と思えることでも仕事となれば取り組み努力することが大切です。それに、知識は尊敬の理由になります。知識が技術的に未熟な新人にとって武器になりますし、そもそもこの世界、体で自然に覚えたことだけでプロになれる程甘くない。今の料理の腕なんて関係なくて、いろんなことを学んで知識をつけようという意欲のある人は伸び代があるし、そこが可能性に変わると思います。
―――――――料理人にとって大切なのは料理の腕だけではないということですね。ほかに、採用の基準はありますか。
―――――――料理人にとって大切なのは料理の腕だけではないということですね。ほかに、採用の基準はありますか。
理解してもらうために、僕はとにかくたくさん喋ります
「調理場内はチーム」と辻調理師専門学校の辻校長もおっしゃっていますが、ひとつの料理をみんなで作る際にコミュニケーションがとても大事になります。一人でできることは知れているけど、チームでやれば自分だけの時の何倍もの能力が発揮できるんです。料理人は、もっとお客さんやスタッフと話をして、自分がやりたいことを明確に伝えていくべきだと思います。私はよく喋りますよ(笑)。(確かに、取材でも3時間半ノンストップでお話いただきました)
将来独立を考えている人には、チームで料理を提供できるような店をめざしてほしいし、そのためのコミュニケーション力を身につけてほしいですね。
そして、嫌われてもいいからもっと仕事に執着を出していくこと。気に入らないなら何回でもため息をついて「違う!こうだ!」と主張する。スタッフには、「仕事はクソまじめにやるな、クリエイターになろう!」と話しています。
―――――――コロナを機に、今後の飲食業界や御社はどう変わると考えますか。
―――――――コロナを機に、今後の飲食業界や御社はどう変わると考えますか。
これからの飲食は本質が追求される時代になる
コロナをきっかけにいろんなことが変わろうとしていますね。
これは一つの災難ですが、時代を振り返れば、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災など、私たちはいろんなことを経験しています。そして、これまでもそういうことがきっかけで社会は変ってきました。
飲食業界でいうと、リーマンショック時には企業の接待利用が減り、個人利用をターゲットに席数を極端に少なくした「予約が取れない店」や「インスタ映えする料理」など、戦略的な飲食店経営が増えたと思います。
コロナでまた業界は変わるでしょう。今後は原点回帰して、「本質が追求される時代」になるのではないでしょうか。料理はもちろんですが、スペースの確保、オペレーション、サービス、値段、すべてが整っていなければ生き残れない時代が来ると思います。トレンドが通用しなくなって、本質で勝負できる時代が再来するのではと期待しています。
飲食業界の働き方も変わるでしょうね。当社には独立していった仲間が200人ほどいて同門会を作って仲良くしていますが、これからは「独立が一番」という時代でもないし、「独立しない人にとってどういう店であるべきか」も考えていかなければなりません。
当社は居心地がいいのか15年選手、20年選手のシェフもいます。スタッフが長年勤続してくれるのは喜ばしい反面、人件費が上がるということです。会社を持続させていくためには、常に成長できる分野を創り出して、事業の拡大成長をめざしていきたいですね。
―――――――最後に、現在、専門学校で学んでいる未来の料理人たちにメッセージをお願いします。
料理人の世界は芸人と同じ。サバイバルで生き残れるか
調理師学校は単なる学校ではありません。みんながライバル。周りをみまわしてみてください。10年後に料理人をしている人が何人いるか。料理人の世界は芸人と同じです。抜きんでないと勝てない世界だから、のんびりしている場合じゃない。クラスで何かを発言する時にも、「こいつすごいな!」と思わせよう。プロとしてやっていくために必要なコミュニケーション能力も、在学中からどんどん磨いていこう。
私はイタリアで修行していましたが、ヨーロッパでクオリティを求めて仕事している料理人たちはみんな楽しんでいます。もちろん、最初は野菜を洗ったり刻んだりということから始まります。しかし楽しくなるのは「プレーヤー」になってから。ゲームに参加して楽しむことができるのは、プレーヤーだけに許されることなのです。プレーヤーになるまでに辛いことも厳しいこともあるけれど、生き残ったものだけが享受できる領域が必ずあります。それを得る権利を有するようになるまでは簡単に挫けないこと。よく「自分には他にできることがある」という人がいるけれど、確かにその通り。私だって料理のほかにできたことはあったと思う。料理ができる人はほかのこともできる。でも、やらなかった人は何もできない。それが一番もったいないから、その先に待っている楽しさを信じて、その領域をめざして頑張ってください。