体育館やスタジアム、物流倉庫などの建物を見たとき、
「こんな広い空間を、柱なしでどうやって支えているのだろう」
と思ったことはありませんか。
「こんな広い空間を、柱なしでどうやって支えているのだろう」
と思ったことはありませんか。
実は、建物の構造には、材料の特性を活かしたさまざまな技術が使われています。
その代表的な材料がコンクリート。
しかし一口にコンクリートといっても、その性能や使われ方にはさまざまな違いがあります
今回は、「巨大建築物は、どうして建っていられるのか?」というテーマのもと、前後編にわたってその仕組みをひもといていきます。
前編では、基本構造を支えるコンクリートの性質や役割について、後編では、柱の少ない大空間を可能にするPC工法や実際の施工事例を通して、巨大建築を支える技術に迫ります。
前編では、基本構造を支えるコンクリートの性質や役割について、後編では、柱の少ない大空間を可能にするPC工法や実際の施工事例を通して、巨大建築を支える技術に迫ります。
お話をうかがったのは……
株式会社キップ 代表取締役 土山 保清 氏
兵庫県芦屋市に本社をかまえる建設会社。PC工法やプレキャスト工法を用いた躯体工事を得意とし、公共工事(国の重要機関)・民間工事で実績を重ねています。
株式会社キップ 代表取締役 土山 保清 氏
兵庫県芦屋市に本社をかまえる建設会社。PC工法やプレキャスト工法を用いた躯体工事を得意とし、公共工事(国の重要機関)・民間工事で実績を重ねています。
1 コンクリートの基礎知識 ― 配合で変わる性能 ―
コンクリートは「セメント・水・骨材(砂や砂利)」を混ぜて作られる材料で、建物や橋、道路など、社会インフラの多くに使われています。基本となる材料は同じでも配合によって性能が変わるため、施工しやすいように流動性を高めたり、軽量骨材を用いて重量を抑えたりと、用途に応じてさまざまな調整が施されます。
さらに近年では、セメントの一部に廃材の焼却灰などを混ぜるリサイクル材料も使用されています。これは環境負荷を減らす取り組みの一つで、建設分野でもSDGsの観点から広がっています。
2 コンクリートが現場に届くまで
コンクリートは、材料を混ぜればすぐに使えるというものではありません。建物の安全を支える材料である以上、設計から施工までの過程で多くの確認や試験が行われています。
まず設計段階で、建物にかかる荷重や使用条件に基づき、部位ごとに必要な強度とコンクリートの量を計算します。(設計図書には「(N)ニュートン」の単位で記載されます)
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その数値をもとに、生コンクリート工場では配合を決めます。セメント、水、砂、砂利の割合を調整し、必要な強度や施工性を満たす配合を検討します。その後、試験練りを行って強度や流動性を確認します。
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配合が決まったコンクリートは、生コンプラントで製造され、ミキサー車によって建設現場へ運ばれます。しかし、ここでもすぐに打設されるわけではありません。現場に到着すると、以下のような「受入検査」が行われます。コンクリートの状態が設計通りになっているかを確認する重要な工程です。
・「スランプ試験」
コンクリートの柔らかさや流動性を測る試験で、施工に適した状態かどうかを判断します。コンクリートが硬すぎれば型枠の隅まで行き渡らず、逆に柔らかすぎれば強度に影響が出る可能性があります。施工性と品質のバランスを確認するために欠かせない試験です。
・「圧縮試験」
さらに、強度確認のために「供試体」と呼ばれる試験用のコンクリートを採取し、一定期間養生した後に圧縮荷重を加え、設計通りの強度が発現しているかを確認します。こうした検査や試験を重ねることで、建物に使われるコンクリートの品質が保証されているのです。
このように、コンクリートは単なる材料ではなく、多くの工程と確認を経て建物の構造に組み込まれていきます。設計、材料製造、施工管理、試験検査など、さまざまな技術者の仕事がつながることで、はじめて安全な建物が完成します。
3 なぜコンクリートは建物に広く使われるのか
では、なぜコンクリートは多くの建物やインフラに使われているのでしょうか。
まずは、押される力、つまり圧縮に強い点が挙げられます。
建物の柱や壁、基礎には上から大きな荷重がかかりますが、コンクリートはそうした力に耐える性能に優れています。さらに、固まる前は柔らかく、型枠に流し込んで成形できるため、柱・梁・床・壁などさまざまな形に対応できます。現場の条件や建物の用途に合わせて形をつくれることも、コンクリートが広く使われる理由です。
また、コンクリートは耐火性が高いことでも知られています。
火災時に燃えにくく、高温にも比較的強いため、多くの人が利用する建物や公共施設でも重要な役割を担っています。住宅や学校、ビル、体育館、橋、トンネル、倉庫など、用途の異なる多くの構造物で使われているのは、こうした性質があるからです。
火災時に燃えにくく、高温にも比較的強いため、多くの人が利用する建物や公共施設でも重要な役割を担っています。住宅や学校、ビル、体育館、橋、トンネル、倉庫など、用途の異なる多くの構造物で使われているのは、こうした性質があるからです。
4 コンクリートの得手と不得手 ― 構造の基本を理解する ―
コンクリートは建設に欠かせない材料ですが、力のかかり方によって得意なことと苦手なことがあります。先に述べたように、圧縮には強い一方で、引っ張られる力や曲げられる力にはあまり強くありません。
そこで建物では、こうした弱点を補うために鉄筋を組み合わせます。引張力を鉄筋が受け持ち、圧縮力をコンクリートが受け持つことで、建物として必要な強さを確保しているのです。これが鉄筋コンクリートの基本的な考え方です。
ただ、体育館やスタジアム、物流倉庫のように、柱の少ない大きな空間を求められる建物では、さらに高度な工夫が必要になります。そこで活躍するのが、コンクリートの中に高強度鋼材を入れてあらかじめ力を加えるPC工法です。巨大建築が広い空間を保ちながら成立している背景には、こうした構造技術の発展があります。
次の記事では、このPC工法の仕組みや役割に加え、実際の施工事例も交えながら、巨大建築がどのように支えられているのかをさらに詳しく見ていきます。
コンクリートという材料の特徴が、現場でどのような技術へとつながっているのか。その具体的な事例を通して、巨大建築を支える仕事の面白さにも迫ります。お楽しみに!
コンクリートという材料の特徴が、現場でどのような技術へとつながっているのか。その具体的な事例を通して、巨大建築を支える仕事の面白さにも迫ります。お楽しみに!
