昨今、就活の際に重視する項目として挙げられる「パーパス」。米国ではリーマンショックが起こった2008年以降、就職の際に「パーパス」に注目する学生が増えたと言います。とはいえ、パーパスとは何か、理念とどう違うのかと聞かれても、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。パーパスとは何か。なぜ、就活の際に注目した方が良いのかなどについて、エスエムオー CEOの齊藤三希子氏のインタビューを基に解説します。
CareerMap編集部 文/ライター 関洋子 写真/掛川雅也 撮影協力/WeWork日比谷フォートタワー
インタビューを受けてくれたのは……
CareerMap編集部 文/ライター 関洋子 写真/掛川雅也 撮影協力/WeWork日比谷フォートタワー
インタビューを受けてくれたのは……
齊藤三希子
エスエムオー株式会社 CEO
慶應義塾大学経済学部卒業。電通に入社後、電通総研への出向を経て、2005年に齊藤三希子事務所(後にエスエムオーに社名変更)を設立。「本物を未来に伝えていく」をパーパスとして掲げ、ものの本質的な価値を見据えたパーパス・ブランディングを日本でいち早く取り入れる。強く美しいブランドをつくるためのコンサルティングを行うために、世界中を旅し、あらゆる人と触れ、見たことのないものを追い求める。2021年7月、著書「PURPOSE BRANDING~『何をやるか?』ではなく『なぜやるか?』から考える」を出版。
パーパスとは何? 理念、ビジョンやミッション、バリューズとの違い
学情の調査によると、2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生の7割以上が「パーパス」を制定する企業に「好感が持てる」と回答、また6割以上の学生がパーパスを知ると「志望度が上がる」と回答したと報告しています。このように「パーパス」は就活の際にチェックするのに欠かせないキーワードと言っても過言ではありません。とはいうものの、改めて「パーパスとは何か?」と問われると、理念やミッションとどう違うのか、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。
「パーパスとは私たち(組織)がなぜ、何のために存在するのかを言葉として表したモノです」(齊藤氏)
つまり、社会における存在意義を端的な言葉で表したモノがパーパスであり、判断や行動のよりどころにするための概念です。
では経営理念とはどう違うのでしょうか。理念とは経営者の思いや価値観に基づいた企業の理想の姿を言語化したものであり、「位置づけは企業によりさまざまですが、理念は最上位概念=揺るぎないものとして確立されていることが多くあり、理念のなかの中心的役割として別途パーパスを制定する企業が増えています」と齊藤氏は説明します。
次にパーパスとビジョンやミッション、バリューズとはどう違うのでしょうか。ビジョンは自分たちがどうなりたいのか、どういう世界をつくりたいのか、なりたい姿や成し遂げたい世界や未来の宣言です。そしてミッションはパーパスやビジョンを実現するためにすべきこと、バリューズは企業やブランドが大切にしている価値観や行動指針を表したものです。齊藤氏はパーパス、ビジョン、ミッション、バリューズを「経営の4要素」と呼んでいます。
図1.経営の4要素の関係(資料提供:SMO)
パーパスを定める企業が増えている理由
最近、パーパスを制定する企業が増えています。例えば創立100周年を迎えたGlicoグループもその1社。同社では2022年2月、100周年を機に「すこやかな毎日、ゆたかな人生」というパーパスを制定したことを発表しました。同時にビジョン「Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより、『おいしさと健康』を価値として提供し続けます」というビジョンも定めています。
またNTT西日本グループも21年に西日本スピリッツを再定義し、「『つなぐ』その先に 『ひらく』 あたらしい世界のトビラを」というパーパスを定めました。そのほかにもMIXIはコーポレートブランドをリニューアルするのにあたり、最上位概念としてパーパス「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」を設定しました。
ではなぜ、今、パーパスに注目が集まっているのでしょうか。
「世の中が不確実で先が読めないため」と齊藤氏は語ります。例えばコロナ禍やロシア情勢などはその代表例です。コロナ禍はようやく終息しつつありますが、ロシアによるウクライナ侵攻はまだ終息の気配は見えていません。このようなことが起こるとは誰も予測できませんでした。
まためざましく発展するテクノロジーもこれからの世の中を読みにくくしています。例えばみなさんが子どもの頃、スマートフォン一つあれば出かけても困らないなんて世界が来るとは思っていなかったのではないでしょうか。
不確実で先が読めないため、「中期経営計画をやめる企業も出てきています」と齊藤氏。とはいえ、経営の指針となるものは必要です。そこで今にフォーカスした「パーパス」をよりどころに経営を行う、パーパス経営に切り替える企業も増えているのです。パーパス経営では「今、なんのためにやるのか、そしてどう社会に貢献するのか」を基軸に、企業活動が行われます。だからこそ、就活の際にパーパスをチェックすることが大事だと言われるのです。
パーパスのない企業、絵に描いた餅のパーパスはどう見破る?
「パーパスのない企業はどうやってチェックすれば良いの」と思う人もたくさんいるでしょう。その際はその上位概念である理念をチェックすることです。「理念の中には創業の思いが入っているケースが多く、何のために会社を設立したのか、どんな貢献をしていきたいのかを読み解くことができるでしょう」(齊藤氏)
とはいえ、どんなにかっこいいパーパスが定められていても、それが会社全体に浸透しておらず、絵に描いた餅状態だと意味がありません。どうやって見分ければいいのでしょうか。
「経営トップが話している動画を見ることです。経営トップが自分の言葉でちゃんと話ができているかを見れば、その会社がパーパスを基軸に本気で活動をしているかがわかります」と齊藤氏。そのほかにも先輩がいれば先輩と話をしてみるのもいいでしょう。全社に浸透していれば、先輩との話の中でパーパスが感じられることができるからです。「経営トップの動画もないし、話が聞けるような先輩もいない」という場合は、その会社の商品・サービス、広告を見てみましょう。パーパスが紐付いていれば、一貫性を感じられるはずです。
自身のパーパスについても考えてみよう
ここまでは企業のパーパスについて語ってきました。パーパスは私たち一人ひとりにも存在します。そして就活の際に大事になるのが、この個人のパーパスを考えることです。
「米国で『My Purpose』は日常になじんだ言葉です。ドラマを見れば、頻繁に出てきます」(齊藤氏)
個人のパーパスといっても難しく考えることはありません。パーパスは強み・情熱とニーズの重なる部分にあるとされています。強みは自分が得意としていること。情熱は、自分何のために生きているのか、どんなときに喜びを感じるのか、何をすればうれしいのかを考えれば良いでしょう。一方のニーズは「二通りあります」と齊藤氏。一つは今見えているニーズ、してもう一つがこれから先に出てくるであろうニーズです。「将来起こりうることを想像してみることです」と齊藤氏。これらを考えることで、自身のパーパスを見つけることができます。
図2.パーパスとはなにから出来ているのか?
資料提供:SMO
自身のパーパスが見つかれば、あとは企業のパーパスを重ねてみるのです。
「大きく重なる必要はありません。少しでも重なるところがあれば、理念やパーパスに共感でき、高いモチベーションを持ち、働くことができます」(齊藤氏)
ピッタリと重なる方が良いのかというと、「そうではありません」と齊藤氏。「重なり部分が大きくなればなるほど、融通が利かなくなるので、逆に働きづらくなる可能性がある」と警鐘を鳴らします。
やりたいことができ、パーパスに共感できる会社を選ぶことができれば、入社後のギャップも少なく、「こんなはずじゃなかった」と後悔するようなことは起こりにくくなります。
「就活はいろんな会社を知ったり、いろんな人に会えたりする最大の機会です。大変ですが、ぜひ就活を楽しんでほしいと思います。きっと、こういう会社があるんだ、こんな人がいる会社で働きたいなど、新たな発見があるはずです」(齊藤氏)
就活をうまく進めるための第一歩は、自身のパーパスを日々の生活の中から見つけてみること。そこから始まるのかも知れません。