#2 職人は今を見て、施工管理は先を読む
立入禁止の向こう側の世界
街を歩いていて、時々目に入る工事現場。そこには必ず立入禁止の看板があり、入れない様になっているはずです。僕は小さな頃「この向こう側はどうなっているんだろう」と不思議に思ったものです。ダメと言われると気になってしまうのが子供ですよね。
施工管理にとっては、その立入禁止の向こう側こそが戦うべきフィールド。22歳になってこの仕事をはじめ、そこで子供の頃の不思議を1つ解消したのです。そこは想像したものと全く違った、心からわくわくする世界でした。
そんな工事現場には、大きく分けて2種類の人間が存在します。それは「職人」と「施工管理」。同じ舞台に立ち、同じ目的をもって働いているこの2種類の人間が、実は全く異なった「時間軸」で動いていることをご存じでしょうか?
多くの人はこれを知りません。実際に建物を建てる職人は「今」という時間軸で働きますが、現場監督は「未来」という時間軸で働いているのです。
それだけじゃありません。戦っている相手も全く違います。職人はそこに「ある」ものと戦っていますが、施工管理はまだそこに「ない」ものと戦っているのです。
同じ場所に立っているが、職人とは全く違う異次元の世界で、僕ら施工管理は仕事をしています。・・・なんかカッコいいこと言っているっぽいですが、そんなことはありません。よく考えれば当たり前の話。そこには決して難しくはない理屈があり、でも簡単ではない仕事をしているのです。
これから皆さんがどんな仕事選ぶのかはわかりませんが、どこに行っても大切な考え方である「役割」と「視点」のお話をしていきます。きっとあなたのお役に立つことでしょう。
仕事には「役割」と「視点」がある
まず始めに理解しておく必要があるものがあります。少し難しいですが、できるだけわかりやすくお伝えしますので頑張って理解してください。
突然ですが、「親は俺のこと何もわかってない」なんて思ったことはありませんか?実はこれ、当たり前です。というか、親はあなたのことをわかっちゃいけないのです。なぜなら、人には「役割」があり、そしてそれぞれに「視野」があるからです。
これじゃわかりづらいですね。では、工事現場で例えながら説明していきましょう。
まず工事現場には、職人と施工管理の2種類が存在すると言いました。工事は、まず施工管理が指示を出し、それに沿って職人さんは実際に手を動かしていくことで進んでいきます。
例えば大工さんの場合、木材を加工して組み立てることが役割。せっせと木材を運び、釘とトンカチを使って組み立てていきます。そんな彼らの視野は、どこへ向いているかお判りですか?それは「手元」です。そこを狂わせてはケガをしてしまいますからね。
ではそんな彼らに指示を出す、施工管理はどうでしょうか。実は彼らとは全然違います。工事はうまく進んでいるのか。危険な箇所はないか。期日に間に合うか。そんなことを日々考えながら、工事現場全体を見ているのです。
人は一つの事に集中すると、どうしても周りが見えなくなります。だから施工管理は、いつも一歩引いて広い範囲を見渡さなければいけません。職人さんよりもずっとずっと、広い視野が必要になるのです。
その時、釘一本一本をしっかりとチェックできているのかというと、それは無理です。広く見渡しているが故に、細かいところには目が届かないもの。だからこそ、そこは大工さん自身が責任を持って工事をしてくれるという信頼関係があるわけです。
これが役割の違いであり、それぞれで視野が全然違うということがわかっていただけたでしょうか。
まだ子供だったあなたは、今この瞬間を大切に生きています。今を楽しむために全力をだす事が子供の役割であり、視野は大工さんのように近くを見ています。
でも親は違います。今よりももっと先の、子供の将来を大切にする役割があります。だからあなたが今やりたがらない事でも、広い視野で人生を見たときに、きっと必要になることを選択しているだけなのです。
見えている視野が違えば、大切に思うものも違ってきます。人によって大切にすべきものは違いますが、どれも大切なのは同じ。そのどちらも正解と言えます。ただ役割が違うだけ。だから「親は俺の事なんにもわかっていない」わけですね。それが正常、普通といえるのです。
工事現場の主役を知っているか?
ところで、工事現場での「主役」は誰でしょうか。答えは、「職人」です。なぜなら工事現場では、施工管理は何もできないからです。土を掘ることもできなければ、壁紙を貼ることもできない、言ってしまえば役立たずと言えます。
では施工管理は、日々現場で何をしているのかというと。それは段取り、つまり準備をしているのです。
例えば実際に職人さんが仕事を始めようとしたときに・・・
・電気がなければ、工具を使えずに困る
・図面が完成していなければ、仕事ができない
・安全な通路がなければケガをするかもしれない
そんなの当たり前だろ!と思いますか?そうですよね。職人さんがこれから仕事をしようとしているにもかかわらず、こういう準備が終わっていないと、工事を始めるこができません。
じゃあその準備は一体だれが、そしていつやるんでしょうか?
そうです。これこそが施工管理の仕事。職人の仕事を先回りし、準備をする仕事です。時に「段取り屋」と呼ばれたりもするくらい、とにかく準備に特化した仕事なのです。
工事現場における僕ら施工管理の役割は、あくまで引き立て役であり、黒子。人知れず僕らが働き、準備をする。そうやって造りあげたステージの上で、主役である職人さんが輝くことができるのです。
だからこそ職人さんと施工管理では、働く「時間軸」が全く違うというのはお判りでしょうか。そして働く「相手」も違ってくるのはわかってきたでしょうか。
だって、職人さんが仕事を「始めるとき」には、当然その準備は「終わっている」わけです。つまり施工管理は、【始まる前に終わっている】という、不思議な時間軸で動いていることになります。
しかも準備をするときに、現地にはまだ何もありませんよね。だってこれから現地に造ろうとしているものが、すでに出来上がっているわけがありませんから。
職人さんは準備された資材や道具を使い、そこに【あるもの】を相手に仕事をしていくのに対して、一方の施工管理は、まだそこには【ないもの】を相手に仕事をしていると言えるのです。・・・なんだか混乱しそうですね。でもこれは事実なのです。
まだそこにないものを相手に、始まる前に終わらせなければいけない仕事。それが施工管理の難しさであり、楽しさと言えるのです。
常に先をみるのが施工管理
お判りいただけたでしょうか。職人と現場監督は同じ現場にいるにもかかわらず、役割が違い、そして視点も違う。ゆえに流れる時間も違い、仕事する相手すら違うのです。
施工管理は、現実にはまだ何も起きていない状態で、職人たちがどういう行動を取り、どんな問題が起きるのか。そんな未来に起こる事態を、図面や敷地条件などから全てイメージの中で組み立て、あらかじめ予知をしながら段取りしていく仕事です。
工事が始まる前に、頭の中では完成イメージがしっかりとできているからこそ、段取りができるわけです。今この瞬間を、技術と経験によって動いてくれるのが職人さん。であれば、常に未来を見据える想像力によって、現場をプロデュースしているのが施工管理。
もちろんそう簡単にできるようになるわけではありません。日々現場で起こっている全ての物や動きを興味を持って観察し、考え、経験を積むことが必要です。だって次の現場では、何もない段階でイメージできるようにならなければいけないわけですから。
そこにないものを相手に、始まる前に終わらせる仕事。どうでしょうか。挑みがいがあるとは思いませんか?
【プロフィール】
武田祐樹(たけだひろき)
HT RaisePLAN 代表
総合建設業に17年在職し、官民問わず数多くの実績を積む。
建設業の効率的な働き方を実現するため、
現在はオンラインを中心に活動し、
中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家としても活躍。
現在はオンラインを中心に活動し、
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【保有資格】
1級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士
【運営事業】
◇GENBA Lab.(現場ラボ)運営
オンライン新人研修、効率化サポート
https://genba-lab.com/
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◇その他オンライン講師、オンラインセミナー活動も実施
【メディア活動】
◇YouTubeチャンネル【建設業を持ち上げるTV】
https://www.youtube.com/c/nextconstruction
◇音声配信【たけだの作業日報】
https://open.spotify.com/show/2qPIT6VYOzjcp9eBrFODLI
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