vol.2 unis 薬師神 陸 (後編)
視野を広く持って学べば、
料理人の可能性は広がると次の世代に伝えたい。
フランス料理レストラン「unis(ユニ)」のシェフと、レストランに隣接するシェアキッチンの運営責任者という二つの顔を持つ薬師神 陸さん(33歳)。シェアキッチンでは、同世代であるミレニアル世代※の料理人と企業とのコラボレーションを後押しするなど、幅広い活動を展開しています。
※1980〜95年生まれ。現在27〜42歳
今回は、2回にわたって薬師神さんのお話を聞く後編。前編では、薬師神さんが今の働き方を選ぶまでの道のりを、幼少期から現在に至るまでふりかえってもらいました。
後編では、ご自身の働き方、専門学校生や卒業生に大切にしてもらいたいことについて聞きます。
プロフィール 薬師神 陸 やくしじん りく
1988年生まれ、愛媛県出身。幼少の時に祖父から料理を学んだ影響で料理人をめざすように。高校は商業系の高校に進み簿記などを学ぶ。その後辻調理師専門学校に進学し、卒業後は同校に就職。講師として5年間勤務する。退職後、須賀洋介氏率いるレストラン「SUGALABO」の立ち上げから参加し、オープン後はシェフに。合計5年間勤務する。2019年夏、31歳で退職してフリーの料理人として活動。2020年12月、32歳でレストラン「unis」をオープン。2021年1月、シェアキッチン「Social Kitchen TORANOMON」を開設する。
インプットの時間を意識的につくらないと
――働き方で、特に大切にしている点は何ですか?
「働く人が楽しめなきゃいけない」と常に思っています。これは自分がというより、スタッフが、です。そのために、忙しすぎない環境作りには力を入れていますね。
料理は、自分が身につけてきたことを発揮する、つまりアウトプットする仕事です。だからこそ、料理やそのほかの有意義な経験を吸収するインプットの時間も必要となります。
忙しくなりすぎると、その吸収ができなくなってしまいます。となると、自分の力が出ていくだけなので、料理の仕事が辛くなる。逆に学びと実践をくり返せれば、働くことが楽しくなるのです。
写真提供 unis
「働く人が楽しめなきゃいけない」と常に思っています。これは自分がというより、スタッフが、です。そのために、忙しすぎない環境作りには力を入れていますね。
料理は、自分が身につけてきたことを発揮する、つまりアウトプットする仕事です。だからこそ、料理やそのほかの有意義な経験を吸収するインプットの時間も必要となります。
忙しくなりすぎると、その吸収ができなくなってしまいます。となると、自分の力が出ていくだけなので、料理の仕事が辛くなる。逆に学びと実践をくり返せれば、働くことが楽しくなるのです。
写真提供 unis
――若い料理人は、なかなか自分の時間、インプットの時間を確保するのが難しそうですが……。
職場によって忙しさは違うので、その点は自分自身を対応させる必要はありますが、まずは自分の担当の仕事を早く終えるよう、最大に頭を使うのが大事だと思います。
少し前の時代までは、新人はキッチンに長時間いればいるほどえらい、とされていました。でもそれは、単に仕事が遅いのかもしれない。どうすれば仕事を効率的に終えられるか、十分に考えていないのかもしれない。
もちろん教えてくれる人がいなかった、先輩の教え方がよくなかったなど、いろいろな原因も考えられます。でも今は、SNSでもネットでも本でも、情報がいくらでも溢れている時代。料理が好きなら、自ら学べます。学ぶことで工夫が生まれ、効率も上げられるはず……と思っています。
――ただ働くのではなく、時間の使い方に頭を使うということですね。
もちろん。時間は皆平等ですから。限られた時間の中でどれだけ仕事ができるかに、いつも挑戦していてほしいです。つまり「情報欲」と「時間欲」には、貪欲であること。学生の間からこの習慣は身につけておくとよいと思います。
職場によって忙しさは違うので、その点は自分自身を対応させる必要はありますが、まずは自分の担当の仕事を早く終えるよう、最大に頭を使うのが大事だと思います。
少し前の時代までは、新人はキッチンに長時間いればいるほどえらい、とされていました。でもそれは、単に仕事が遅いのかもしれない。どうすれば仕事を効率的に終えられるか、十分に考えていないのかもしれない。
もちろん教えてくれる人がいなかった、先輩の教え方がよくなかったなど、いろいろな原因も考えられます。でも今は、SNSでもネットでも本でも、情報がいくらでも溢れている時代。料理が好きなら、自ら学べます。学ぶことで工夫が生まれ、効率も上げられるはず……と思っています。
――ただ働くのではなく、時間の使い方に頭を使うということですね。
もちろん。時間は皆平等ですから。限られた時間の中でどれだけ仕事ができるかに、いつも挑戦していてほしいです。つまり「情報欲」と「時間欲」には、貪欲であること。学生の間からこの習慣は身につけておくとよいと思います。
料理をしている自分を俯瞰的に見る
――それでも、目の前の仕事でいっぱいになってしまう若い料理人も多いと思います。そうならないためにはどうしたらいいでしょう。
やはり、自分を俯瞰するとよいのではないでしょうか。
たとえば、自分がブロッコリーの下ゆでの担当だとしたら、そのブロッコリーがどのタイミングでどのように皿に盛りつけられ、どのようにお客さまに届き、どう食べられ、どう感じていただけるかまで想像してほしいのです。
さらに、もしも残されて戻ってきたら、「ゆですぎだったのか?」「味が濃かったのか?」「もともとブロッコリーが嫌いなのか?」まで徹底的に考えてほしい。
想像力を働かせることで、全体の中のピースとして自分が何をすべきかがわかります。そういう意識でいれば目の前のことで頭がいっぱいにならずに済み、仕事のやりがいも高まるはずです。
――先ほどSNSやネットの話が出ましたが、情報が溢れていると受け身になってしまいそうです。
それはまさにその通りで、今はアルゴリズムで自動的に自分好みの情報が選別され、スマホなりPCなりの画面に表示されるようになっています。非常に狭い範囲の情報しか入ってこないのです。
なので、どうやって「自分好み」を飛び越えて情報を得られるか。情報を掘り、選ぶセンスが問われます。これは料理人に限らず、これからの時代を生き抜くにはどんな仕事でも必要な能力だと思います。
加えて、自分独自のアイデアを持っておくことも重要です。若い人は、好きなインフルエンサーや好みの店の影響を特に強く受けると聞きます。なので「これが好きだ」と思うのはいいのですが、同時に常に「自分ならこうする」と一歩引いて、外からの情報を受け止めてほしいです。
プロの料理人は、社会の中でもっと力を発揮できる
写真提供 unis
――薬師神さんご自身は、新しい時代のシェフとしてこれからやっていきたいことは何ですか?
料理人の可能性を広げていきたいですね。企業とのコラボレーションにしても、ただ一緒にメニュー開発するのではなく、社会的に意義のある仕事に取り組みたいと思っています。
たとえば、コロナの時期、ホテルやレストランの休業で養殖魚が売り先を失い、大量に余ってしまったことがありました。その時、この魚を使い、DEAN & DELUCA(食のセレクトショップで、自社製品の開発もする)さんなどと協力し、レストランレベルの味に仕立てた缶詰を製品化したことがあります。プロの料理人の高い料理スキルを生かしながら、フードロスの削減に協力する機会となりました。
――これからの料理人にとって、非常に参考になる力の生かし方ですね。
そう思います。ただ、押しつけにはしたくはありません。僕とはタイプが異なるかもしれませんが、店の中での料理とサービスに全力で取り組む料理人も、その在り方はとても尊いと思います。自分もまた、unisのシェフとしては、お客さまのご満足のために最大に努力しています。
その一方で、プロの料理人の力を、社会の中でもっと役立てる活動をするシェフもいていいと思うのです。僕は、料理人は店の外ともつながり、スキルを発揮できる職業だと信じています。
だから次の世代に、「料理人は、社会でこんなに広く活躍できるんだよ」という可能性を示したい。それが自分や、自分達の世代のできることだと思っています。
取材・文/柴田 泉 写真/小沼祐介
写真提供 unis
unis(ユニ)
東京都港区虎ノ門1-23-3
虎ノ門ヒルズガーデンハウス1F
https://unis-anniversary.com
Social Kitchen TORANOMON
(ソーシャルキッチン 虎ノ門)
※住所はunisと同じ
https://www.social-kitchen.site
――薬師神さんご自身は、新しい時代のシェフとしてこれからやっていきたいことは何ですか?
料理人の可能性を広げていきたいですね。企業とのコラボレーションにしても、ただ一緒にメニュー開発するのではなく、社会的に意義のある仕事に取り組みたいと思っています。
たとえば、コロナの時期、ホテルやレストランの休業で養殖魚が売り先を失い、大量に余ってしまったことがありました。その時、この魚を使い、DEAN & DELUCA(食のセレクトショップで、自社製品の開発もする)さんなどと協力し、レストランレベルの味に仕立てた缶詰を製品化したことがあります。プロの料理人の高い料理スキルを生かしながら、フードロスの削減に協力する機会となりました。
――これからの料理人にとって、非常に参考になる力の生かし方ですね。
そう思います。ただ、押しつけにはしたくはありません。僕とはタイプが異なるかもしれませんが、店の中での料理とサービスに全力で取り組む料理人も、その在り方はとても尊いと思います。自分もまた、unisのシェフとしては、お客さまのご満足のために最大に努力しています。
その一方で、プロの料理人の力を、社会の中でもっと役立てる活動をするシェフもいていいと思うのです。僕は、料理人は店の外ともつながり、スキルを発揮できる職業だと信じています。
だから次の世代に、「料理人は、社会でこんなに広く活躍できるんだよ」という可能性を示したい。それが自分や、自分達の世代のできることだと思っています。
取材・文/柴田 泉 写真/小沼祐介
写真提供 unis
unis(ユニ)
東京都港区虎ノ門1-23-3
虎ノ門ヒルズガーデンハウス1F
https://unis-anniversary.com
Social Kitchen TORANOMON
(ソーシャルキッチン 虎ノ門)
※住所はunisと同じ
https://www.social-kitchen.site