#1 現場監督は、時間と感情を支配する仕事
僕は中小ゼネコンに入社し、建築の現場監督を17年やってきました。その中で、一度も辞めたいと感じた事はありませんでした。
もちろん、大変だとか辛いと感じる場面は幾度となくありましたし、理不尽だと感じることも一度や二度ではありませんでした。でも、辞めるという発想には至りませんでした。
だからこそ、こんなにも楽しい建設業をもっと知ってもらいたいという想いと、もっとわくわくしながら働いてもらいたいという想いを叶えるべく、独立し自分で事業を始めたわけです。
あらかじめ伝えておきますが、僕の言う現場監督とは「施工管理」と同じ意味です。厳密には施工管理が正解なのでしょうが、僕にとっては現場監督という言葉がしっくりくるので、こちらで説明していきます。
愛してやまない現場監督の業務
そんな現場監督の仕事は、大きく4つに分かれます。安全管理、工程管理、品質管理、予算管理。そのどれをとっても難しく、そしてわくわくするほど挑みがいのあるものばかり。それぞれの内容についてはいずれお話しするとして、今回の主役は「工程管理」です。
たくさんある現場監督の業務の中で、僕が愛してやまない仕事が「工程管理」です。わかりやすく言い換えると、「工事期間中のスケジュールを管理する業務」のことです。
建設工事には、いつから始まりいつまでに終わらせるという期限が、あらかじめ決められています。これを工期といいます。僕ら現場監督は、その決められた工期の中で、与えられた設計図に基づいて工事を完成させることが重要な任務なのです。
特に建築工事では、工事の種類が細かく分かれており、それぞれに下請け会社が存在します。その数は少なくて数十、多くて百を超えることもあります。それぞれに必要な日数を割り出し、パズルのように振り分けていき、まとめる。これを「工程表」と呼びます。
工程表を作成した後、今度は実際の現場でそれ通りに進んでいけるように、人数や進み具合、資材の準備などを調整し、チェックし進めていくこと。これを「工程管理」と呼ぶのです。
この工程表を作っている時、僕の意識は研ぎ澄まされ没頭できます。気が付けば何時間も書き続けるなんてことはザラにあります。図面をみて、現地をみて、状況を想像して、職人の顔を思い浮かべて・・・。これは僕にとって至福の時間なのです。
『工程表』こそが現場を支配できる魔法
なぜそんなにも愛しているのか。それは工程表が、自分の思い通りに現場をコントロールすることの出来る代物だと知っているからです。施工管理としての知識や経験の結晶が工程表であり、紙きれ1枚で現場を自由自在に操ることができる、魔法の技術なのですから。
まだ始まってもいない段階の工事現場は、当然現地は何もない土地でしかありません。にもかかわらず、自分の手で作り上げたその工程表の上だけでは、工事が美しく完成しているのです。
まだ始まってもいない段階の工事現場は、当然現地は何もない土地でしかありません。にもかかわらず、自分の手で作り上げたその工程表の上だけでは、工事が美しく完成しているのです。
しかも工事は、自分の生み出した工程表の時間の流れに沿って、本当に現場が進んでいきます。数か月も前に計画していたことが、寸分の狂いもなく現実に実行されているという感覚。感動しない訳がありませんよね。
ただし、なんとなく適当に書いた工程表がたまたまうまくいったところで、そこに感動なんてあろうはずがありません。そんなのは技術力とは言えません。そうではなく、本気で考えて考えて考え抜いた末に出来上がった工程表にこそ「美」があります。
ただし、なんとなく適当に書いた工程表がたまたまうまくいったところで、そこに感動なんてあろうはずがありません。そんなのは技術力とは言えません。そうではなく、本気で考えて考えて考え抜いた末に出来上がった工程表にこそ「美」があります。
工程表は、経験や知識を積めば積むほどに余分なものが削ぎ落され、磨かれていくもの。自分の技術だけで生み出す現場監督ならではのコンテンツ、それが工程表なのです。
仕事の向こう側には必ず人がいる
工程表にはもう一つのわくわくポイントがあります。それは「同じ工程表は一つとしてない」こと。作成する人やそれぞれの経験値、業者の力関係などによっても工程は変わります。それゆえ先輩の言うことが正しいとも限らないわけです。
仮に同じ規模で同じ作業をやるとしても、ある人が4日と書けば現場はそう動くし、また違う人が2日と書けば現場はそうなります。そういわれると、まるで工程表を描いたら、現場が魔法のように勝手に動いていくことをイメージするかもしれません。でも現実は違います。
工程表の向こう側には、必ず人間がいるからです。要するに、勝手なイメージだけで描いた工程表の日程を実現するために、職人さんが頑張って調整してくれているということを忘れてはいけないのです。
中には鼻歌交じりに余裕で進めている職人さんもいるかもしれません。無茶苦茶だなと思いながらも必死で合わせてくる職人さんだっているかもしれません。そんな人たちのおかげで、結果として魔法のようなことができているのです。
だからこそ、そのペース配分が偏ってしまわないように、そして不公平が生じないように書かなければいけません。どこかの職人さんだけが、実はめちゃくちゃ無理をしているかもしれないのですから。
だからこそ、そのペース配分が偏ってしまわないように、そして不公平が生じないように書かなければいけません。どこかの職人さんだけが、実はめちゃくちゃ無理をしているかもしれないのですから。
しっかりとした現場経験をもとに、はるか未来をイメージして先読みしていくことが何よりも重要。そしてできるだけ早く、質の高い工程表を渡すことが鉄則なのです。そのために、日々の経験を積み重ねていくことが重要なのです。
経験は誰一人として同じものはありません。そこから芽生える価値観もそうです。それゆえ、現場監督の生み出す経験値の結晶たる工程表は、世界で一つしかない芸術作品ともいえるのです。
人の感情をもコントロールできる仕事
現場監督は実際の現場で何をするのかというと、実は何もしていません。土を掘るわけでもなく、フローリングを貼るわけでもありません。実際に現場で働き、建物を完成させてくれるのは職人さんだけです。僕らの仕事は全て、この職人さんを輝かせるための黒子です。
ただそんな職人さんも人間です。だから日々いろんな問題が起きたり、思わぬ事態が生じたりするのが工事現場。思い通りにいかない工事現場の様を「現場は生き物だ」と表現することがあるほどです。
そのくらい毎日変化し続ける現場の動きを決めているものは何か?それは、工程表なのです。余裕を見すぎると、現場はだらだらとしてミスが多くなる。逆にキツすぎても、焦ってしまいミスが生じます。
工種のクセを見極め、職人の顔、繁忙期、季節の悪天候、敷地条件、交通条件など。それをすべて考慮して完璧な工程を描くのは、もちろん簡単ではありません。
工種のクセを見極め、職人の顔、繁忙期、季節の悪天候、敷地条件、交通条件など。それをすべて考慮して完璧な工程を描くのは、もちろん簡単ではありません。
でもそうやって何度も実践を繰り返し、失敗し、文句を言われたり怒られたりしながら、少しずつ経験を重ねていくのです。そうやってほんのちょっとづつでも精度を上げていった結果として、鳥肌が立つほどの美しい工程表を描き上げることができるようになるのです。。
工程だけじゃありません。ゆるい性格の担当者には厳しく見える工程を、しっかりした職人さんにはピッタリの工程をぶつける。現場の動きだけじゃなく、読み手の感情すらコントロールする力を、工程表は持っているのです。
現場を支配してみたくはないか?
自分の知識と経験を武器にして、現場の「未来」をたった1枚の紙に作り上げる。それはもうただの紙ではなく、現場に携わる人たちの動きや感情、そして命すらも自由自在に支配してしまうほどの破壊力のある紙になりうるのです。
何度も言いますが、そんな工程管理が僕は愛しています。ただ、それが描けるようになるまでのプロセスは簡単ではありませんでした。そりゃそうですよね。未来を動かす力を手に入れるのと同じことなのですから。
とはいえこれは、珍しいスキルなんかではないのも確か。少しの勇気とたくさんの努力、そして負けない気持ち。これさえあれば誰しもが手に入れられるスキルなのです。
施工管理はこんなもんじゃありません。まだまだ楽しいことだらけ、挑みがいだらけの仕事だと思っています。あなたも何億・何十億という金額規模の現場の中で、時間と感情を支配したいと思いませんか?
建設業は、いつでもあなたたちの挑戦を待っています。
【プロフィール】
【プロフィール】
武田祐樹(たけだひろき)
HT RaisePLAN 代表
総合建設業に17年在職し、官民問わず数多くの実績を積む。
建設業の効率的な働き方を実現するため、
現在はオンラインを中心に活動し、
中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家としても活躍。
現在はオンラインを中心に活動し、
中小企業デジタル化応援隊事業(中小企業庁)のIT専門家としても活躍。
【保有資格】
1級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士
【運営事業】
◇GENBA Lab.(現場ラボ)運営
オンライン新人研修、効率化サポート
https://genba-lab.com/
https://genba-lab.com/
◇その他オンライン講師、オンラインセミナー活動も実施
【メディア活動】
◇YouTubeチャンネル【建設業を持ち上げるTV】
https://www.youtube.com/c/nextconstruction
https://www.youtube.com/c/nextconstruction
◇インスタグラム【3分で学べる建設コラム】
https://www.instagram.com/genba.lab/
その他Twitterや雑誌、各種メディアサイトでも記事を掲載
(Twitter:https://twitter.com/Takeda_Hiroki81)
https://www.instagram.com/genba.lab/
その他Twitterや雑誌、各種メディアサイトでも記事を掲載
(Twitter:https://twitter.com/Takeda_Hiroki81)