就職活動のためにインターンシップ経験を積んでおきたい。そう思う学生さんも多いことでしょう。
企業での実務経験を行うメリットは大きく、就活に有利に活かすことができます。では企業側は、インターンシップで学生の何を見ているのでしょうか。
企業での実務経験を行うメリットは大きく、就活に有利に活かすことができます。では企業側は、インターンシップで学生の何を見ているのでしょうか。
インターンシップを開催する企業の意図を知って、心の準備をしておきましょう。
今回は兵庫県洲本市で創業から70年間、住宅の新築やリフォームの設計・施工を手がける原田建設株式会社の原田社長と、採用を担当している昇さんにお話を聞いてみました。
インターンシップとは?
インターンシップとは、企業で仕事体験をすることです。興味のある会社や業界に実際に身を置くことで、仕事のスキルを身につけたり、会社の雰囲気を味わったりして、自分が働けるかどうか、相性を確認することができます。
インターンシップの日数は、1日という短期から数日、数カ月などの長期にいたるまで企業によってさまざま。なかには内定直結型や、内定後に入社前体験として開催している企業もあります。
インターンシップのプログラム内容とは?
ここで原田建設株式会社を例にとって、インターンシップの具体的な内容を見てみましょう。
原田建設は、淡路島や神戸を中心にデザイン性の高い設計を得意としています。インターンシップは2016年からスタートし、今まででのべ29名が参加しています。実際にインターン生から入社に至った社員も5名在籍しています。
プログラムは1DAY、3DAYS、5DAYSの3種類。5DAYSの内容が一番特徴的で、仕事についてのオリエンテーション、入社1年目の社員研修への参加、建築現場での実習に加え、設計演習ができます。実際にお客様からヒアリングした内容をもとに図面を作成。模型作り、プレゼンテーションまで行います。現場で活躍している建築士からの総評をもらうことでスキルアップにつながると、参加した学生からも好評なのだそうです。デザイン性に高い評価のある原田建設だけに、扉の開く向きや窓の高さなど細かい部分も指摘してもらえ、学校の授業とはまた違う実践スキルを身につける機会にもなっているようです。模型製作を楽しみに応募する学生が多く、模型製作がない1DAYや3DAYSではなく、5DAYSの希望者が多いのだそうです。3DAYSでは模型製作の時間がなく現場見学が半日、1DAYは設計演習自体のプログラムがなく、研修や説明の時間が大半となっています。
設計・現場監督どちらの仕事も体験できることも大きな特徴です。建築に携わりたいけれど、何をしたいのか決めきれないという学生にとっては、現場のリアルを知ることができる内容となっています。
学校では学べない「仕事のリアル」を知ってもらう
企業側は採用活動の一つとしてインターンシップを開催します。百聞は一見に如かずと言いますが、WEBサイトや説明会などで魅力をPRするよりも、実際に会社に来て仕事をしてもらうことで、その企業の魅力を体感してもらいたいと思っています。専門学校で学ぶことは主に知識部分。しかし、実際に企業で働く先輩たちの姿からは、学校では学ぶことができない大変さやおもしろさ、やりがいといった本質的な仕事の意義を学んでもらうことができます。
原田建設の演習で行うプランは、実際に過去施工した物件が題材。完成図もあり、完成までのプロセスやノウハウも蓄積されています。学校で学んだ知識で試行錯誤しながら模型を作成しても、実践で採用されるレベルのものが出てくることは稀だと言います。その際に、プロの視点でしっかりと指導するのだそう。机上のものではなく、住む人に寄り添った設計とはどのようなものかを学ぶことで、建築の奥深さや面白さを知ることができます。
その会社に関わる「人」を知る
さらに企業側では実務内容以外に社内の雰囲気や人間関係を体験してもらうことを大切に考えています。仕事は自分ひとりで行うものではなく、ましてやスキルがあったらできるという単純なものでもありません。上司や同僚、クライアントやユーザーというさまざまな人と関わって成立します。インターンシップで実際に企業に身を置くとおのずとどういう環境で働くか、学生が体感することになります。入社後の退職理由でよくあるのが、「思っていたのと違った」というミスマッチはさることながら、人間関係も大きく左右します。インターンシップをすることで、働きやすい環境かどうか、ボーダーラインを設定することに一役を担い、就職先に求める環境も見えてきます。
原田建設では3DAYS以降のプログラムでは現場を見学します。建設会社の現場では、工務を行う職人さんと協力しながら仕事を進めることが必須。そのため実際に現場で、協力会社やお客様(施主)との関係や雰囲気を体験することで、働くことができるかどうかを判断する機会にしてもらいたいという意図があります。特に現場の職人さんは男性が多く、女性が不安を持つケースも散見されます。その払拭の機会として企業側、学生側ともに良い機会となっているようです。「複数日会社にいると雰囲気は伝わると思っています。インターンシップは本当の姿をわかってもらえます」と体感してもらうことは大きなメリットだと強調します。
また、企業それぞれの特徴をプログラムとは別に伝える機会としても有効です。原田建設は古民家改修の実績が多いのが特徴。そのためリノベーションした古民家を宿泊施設として用意をしています。遠方の淡路島という立地を逆利用し、宿泊を伴うプログラムから現場や演習で仕事の本質を理解してもらい、さらに古民家に寝泊まりすることで木造建築に触れてもらうというストーリー性のあるインターンシップとなっています。
業界研究の材料になるインターンシップ
興味のある会社がインターンシップを開催していないから参加の意味がないかというと、そうではありません。同じ業界であれば参加してみるといいでしょう。原田建設の原田代表取締役が「建築は、多くのお客様にとって人生で一番大きな買い物。とてもやりがいのある仕事なんです。インターンシップに来た学生さんには、当社に応募するとかそういう思いよりも、建築の仕事にもっと興味を持って、もっと好きになってもらって、建築業界で働きたいと思ってもらいたいと思っています。」と語るように、インターンシップは企業それぞれの特徴を知るだけでなく、実際に働くことで業界を知ることにもなります。
多くの仕事は、イメージした以外の業務がたくさんあったり、思っている以上に多くの人が関わったり、完成までに時間がかかったりと、想像と実体はまったく違うものです。想像を膨らませて「この仕事は向いている・向いていない」と判断するのは、実は大きな機会損失にもつながります。向いていないと思い込んでいた仕事が天職になる、興味がない分野の業務に面白さを感じるということも大いにあり得るのです。表面的な部分ではない仕事の奥深さを感じることができるので、就職活動前に実態を知ることは、学生にとって大きなメリットがありますね。
まとめ
企業はインターンシップを通して、入社前に実際どういうことをするのか、どんな雰囲気で働くのかという実体験をしてもらいたいと思っています。もちろん費用と人材を投入するわけですから、インターン生に入社を希望してもらうための採用活動の一つであることは間違いありません。しかし、まずはインターンシップによって、学生の視野を広げ、就職活動の選択肢を増やし、あるいはボーダーラインを引いて企業の絞り込みをすることにつなげてほしいという意図があります。さらにはリアリティのある職場体験をすることで、入社後に「こんなはずじゃなかった」「もっと〇〇ができると思っていたのに…」などというミスマッチや不満を軽減し、企業や業界における人材の定着への狙いもあります。
今回お話を伺った原田建設のインターンシップでは、演習で何枚もプランを作成するなど熱心なインターン生が多いそうです。インターンシップ受け入れ企業の思いは、企業の求人活動という枠組みを超え、そんな熱量を持った学生に、業界で活躍する人材になってほしいという願いも大きく含まれているのです。参加する学生側も、自分の目的を明確にしてその時間を積極的に取り組んでくださいね。