旅館の“顔”の一つが、その土地ならではの食材を使った料理です。お客様に食を通じておもてなしをする料理人は、旅館の要とも言える重要な役割です。
長野・湯田中温泉で60年の歴史を持つ温泉旅館「あぶらや燈千」では、信州伝統野菜など豊かな食材を用いた料理を提供。料理人自らお客様の前で料理を作る「客前料理」も人気を集めています。
「料理を作るだけでなく、お客様に感動を提供することが料理人の仕事」と話すのは、調理部門の責任者でありこの道30年の近藤興紀さん。あぶらや燈千だからこそできる「作る」のその先にある喜び、やりがいについて、教えていただきました。
近藤興紀(こんどう・こうき)さん/調理部門責任者
新宿調理師専門学校卒業後、ホテルなどでフレンチの経験を積む。その後、和食の道に進み、山梨や北海道などのホテルを経験した後、2026年4月にあぶらや燈千に入社。
お客様と直に接するからこそのやりがい
あぶらや燈千の特徴を語るうえで外せないのが「客前料理」。料理人が直接お客様の目の前で料理を作り、提供しています。
「夕食では個室の食事処で会席料理をお出ししていますが、その中の一部をお客様の目の前で作っています。今は「しのぎ」としてお寿司を握り、ご提供しています。味はもちろんのこと、見た目やパフォーマンス、そして会話など、あらゆることに気を配り、お客様に楽しんでいただいています」(近藤さん)
旅館では一般的に、料理人が客前で料理する機会はほとんどありません。厨房でひたすら料理作りに没頭する…というケースが大半です。そのため、ともすれば料理が「作業」になってしまいがちですが、「お客様と接する機会が多いからこそのやりがいがある」と言います。
「客前料理では、お客様と直接コミュニケーションを取るため、接客スキルが磨かれます。また、お客様の反応や表情を直接見ることができ、感想がダイレクトに返ってくるのもポイント。もっと喜んでいただきたい、もっと笑顔になっていただきたいとの思いがどんどん湧いてくるのを感じます。厨房でも、お客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら料理を作ることができるので、高いモチベーションを維持しながら働けています」(近藤さん)
あぶらや燈千がある長野県は、食材も非常に豊かです。信州ならではの伝統野菜はみずみずしく、味が濃いのが特徴。そして信州牛や信州豚、信州地鶏、川魚なども豊富で、「料理人としてワクワクさせられる土地」と近藤さんは話します。
「信州ならではの食材を使い、お客様にどのように喜んでいただけるか、アイデアを練ることができるのが嬉しいですね。若手からベテランまで、皆で意見を出し合いながら新メニューを開発するのも、あぶらや燈千ならでは。日々の仕事に楽しみながら取り組める環境がそろっていると感じます」(近藤さん)
分業制ではなくすべての料理・工程に携わる
あぶらや燈千での働き方の基本は「マルチタスク」。一人ひとりの役割が明確に決まっておらず、幅広い業務を担当するのが特徴です。例えば接客担当であれば、フロントや仲居業務、予約対応、チェックイン・チェックアウトなどをワンストップで担当しています。
料理人も例外ではなく、旅館で提供する朝食や夕食作りだけでなく、隣接する観光複合施設「YUDANAKA BREWERY COMPLEX U」内にあるレストランのサポートとしてハンバーガーを作ったりデザートを盛りつけたりと、あらゆるジャンルに対応しています。同施設で製造しているビールやチョコレートに携わることも。さまざまなサービスを多角的に展開するあぶらや燈千だからこそ、一つのジャンルだけでなくあらゆる食の分野にかかわれるのが魅力の一つです。
「一般的に、旅館や和食店の厨房では分業制が主体で、例えば前菜、お造り、煮方など役割が分かれています。若手のうちは見習いから始まり、一つひとつの経験をじっくり積んでいくケースが多いですが、あぶらや燈千では厨房内でも『マルチタスク』。分業ではなく、料理人全員がすべての料理、すべての工程に携わります。
若手時代から幅広い料理の経験を積むことができ、調理スキルが磨かれるうえ、会席料理の全体像も把握できるので、料理人としての経験値を上げやすく早く成長できる点があぶらや燈千の魅力です」(近藤さん)
部署を超えた連携で感動体験を提供
あぶらや燈千は「連携力」も強みです。各部署のスタッフが垣根を超えて連携を取り、ワンチームでお客様におもてなしを提供しています。
例えば、食事の内容のご要望や苦手食材・アレルギーなどは、接客担当者とのこまめな連携が必須です。そのほか、お客様の意見や要望をこまめに共有し合い、個々のお客様に合ったおもてなしを考え、日々実行しています。
「スタッフ全員が、どうすればお客様に喜んでいただけるかを常に考えています。時間が足りないから、人手が足りないから…などとあきらめるのではなく、今この瞬間にお客様のために何ができるのか皆でアイデアを出し合い、挑戦し続ける――全員が前向きでチャレンジングな姿勢を持っています。
また、日常的にさまざまな部署と連携を取る中で、接客担当や仲居担当の視点や動き方などもつかめるようになります。『この順番で料理を作れば、スムーズに配膳しやすくなるはず』『このように盛り付ければ、見た目が華やかでかつ仲居さんが運びやすい』など、周囲にも心配りができるようになります。逆に、接客担当がわれわれ料理人の『この1品に込めた思い』を伝えてくれるのも嬉しいこと。連携により、チームとしてのクオリティが磨かれていると感じますね」(近藤さん)
自分の強み・持ち味・軸が見つけやすい環境
近藤さんは調理師学校卒業後、さまざまなホテルや旅館の厨房を経験してきました。だからこそ、「あぶらや燈千には、料理人としてのスキルを身につけ早く成長できるだけでなく、接客スキルやお客様視点、連携力なども磨ける環境がある」と実感しているそうです。
「自分にも覚えがありますが、皆さんの中には調理を学び、料理に関する仕事には就きたいけれど、自分に何が向いているのかわからない…という方も多いのではないかと思います。あぶらや燈千であれば、仕事の範囲が広く料理人としてスキルアップしやすいうえ、客前料理やメニュー開発、和・洋の調理経験など、さまざまなチャレンジが可能です。他部署と連携を取る機会も多いので、視野も広げられるでしょう。
また、互いに助け合い、ほめ合い、アドバイスし合う風土もあるので、仕事を通じて自分の強みや持ち味も見つけやすいと思います。料理人としての自分の軸を見つけ、早く成長したい方には、自信をもってお勧めしたいですね」(近藤さん)
