仕事を覚えるまでの時間は、人によって違います。
早く覚える人もいれば、少しずつできることを増やしていく人もいます。
早く覚える人もいれば、少しずつできることを増やしていく人もいます。
最初の「できる・できない」だけでは、その先の成長までは見えません。
経験を積むうちに、仕事の見え方が変わり、求められる力も変わっていきます。
経験を積むうちに、仕事の見え方が変わり、求められる力も変わっていきます。
今回は、入社6年目を迎えた大工の先輩の声と、支える上司や会社の視点から、成長の過程をひもときます。まずは、先輩が実際に経験した場面から見ていきましょう。もし自分だったらどうするか、一緒に考えてみてくださいね!
株式会社森田工務店
福留さん 2020年入社:大工
株式会社森田工務店
福留さん 2020年入社:大工
CASE 1: 先輩が重い建具を一人で運んでいる。あなたならどうする?
A すぐに手を貸す
B 声をかけてから手伝う
C そのまま見守る
福留さん:
「入社してしばらくは、自分にできることはないか、周りを見て手伝おうとしていました。先輩が重い建具を一人で運んでいるのを見た時も、すぐに手を貸そうとしたんです。でも、途中で触ると力のかかり方が変わり、かえってバランスを崩してしまうと言われて。そんな経験を重ねながら、一つひとつの作業の意味を覚えていきました」
CASE 2 :ビス打ちがうまくいかず、先輩に作業を代わられた。次に同じ作業をするとき、あなたならどうする?
A 苦手な作業は避ける
B もう一度挑戦する
C 先輩に任せて見て覚える
福留さん:
「作業はとにかく、数をこなして、体で覚えていくしかありません。ビス打ちも、少し角度がずれると先端が外れて、材料を傷つけてしまいます。うまくできず、『今回はもういいから、こっちをやって』と先輩に代わられることもありました。でも、次に機会があればまたやる。木の繊維やビスの状態を見て、先輩のアドバイスをもとに考えながら繰り返し挑戦しました。最初は、完成すると見えなくなる壁の中などの作業が中心でしたが、今は完成後も目に見える「化粧物」も触らせてもらえるようになっています」
CASE 3 :一人で任された作業で、材料を取り違えた。同じ失敗をしないために、福留さんが意識したことは?
A 作業のスピードを上げる
B 分からない作業はすべて先輩に確認する
C 作業前の確認と判断を増やす
福留さん:
「6年目の今は、一人で作業を任されることも増え、課題も変わってきたと実感しています。最近、部屋ごとに違う材料を取り違え、貼り終わってから間違いに気づいたことがありました。原因は、図面の確認不足と思い込みです。以前なら誰かと一緒に作業していて、途中で気づいてもらえることもありましたが、今は自分で確認し、判断しなければなりません。作業に入る前にしっかり考えて、やり直しなく一度で仕上げられるようになることが、これからの課題です。」
「一から十」まで覚えたら、次は「十から一」を考える
5年目、6年目になると、できる作業が増え、一人で任される場面も多くなります。では、そこからさらに力をつけるには、何が必要なのでしょうか。長年現場に立つ棟梁たちに、経験を積んだ若手が次の段階へ進むために大切なことを聞きました。
(以下、ベテラン棟梁)
「最初は、1から順番に10までやって覚えるしかありません。材料の扱い方も、仕事の順番も、まずはやってみないと分からない。そこで失敗して、思っていた仕上がりと違ったと気づくことも経験のうちです。
でも、ある程度仕事を覚えたら、今度は手を動かす前に頭を働かせる必要があります。仕上がった状態を10とすると、そこから9、8、7…… と戻ってくる。最終的な状態を先に描き、そうなるためにはどうするかを考えて、今の作業を決めます。
図面を見て、実際にどんな形になるのかを頭の中で描けなければ、この逆算はできません。ただ同じことを繰り返すのか、逆算して考える力を身につけるのか。一人前の大工になれるかどうかを分けるのは、そこだと思います」
図面を見て、実際にどんな形になるのかを頭の中で描けなければ、この逆算はできません。ただ同じことを繰り返すのか、逆算して考える力を身につけるのか。一人前の大工になれるかどうかを分けるのは、そこだと思います」
若手が育つために、会社も育て方を変えていく
職業観や働き方が時代とともに変化する中、若手の成長をどう支えるのか。同社の育成の考え方について、森田社長はこう語ります。
(以下、森田社長)
「今は、昔のように『見て覚えろ』だけで、誰もが育つ時代ではありません。覚えるのに時間がかかっても、向いていないで終わらせず、教える側もやり方を変える。その姿勢が大事だと考えています。
『押して駄目なら引いてみる』と言いますが、そもそも引き戸かもしれないし、回転扉かもしれない。こちらが正しいと思っている一つの教え方に相手を合わせようとせず、その人に伝わる方法を探していくことが大切です。
できないことを指摘するだけでなく、本人に求めることを明確にし、伝え方や仕組みも見直していく。一人を育てる経験を、次の一人を育てる力に変え、会社や業界のより良い未来につなげていきたいですね」
ゆっくり成長タイプの人は、じっくり育ててくれる会社を選ぶことも大事
入社当初は小柄で線が細かったという福留さん。今ではすっかり体も大きくなり、年配の大工さんに代わって力を発揮する場面も増えています。ベテランの先輩たちからも「建て方はもう一人前にできる」と、さらなる期待が寄せられています。
こうした変化は、短期間で生まれたものではありません。仕事が身につき、自分で考えて動けるようになるまでには、どうしたって一定の時間が必要です。すぐにできなくても、続ける中で身につく感覚があり、経験したからこそ見えてくることもあります。
だからこそ、自分のペースで成長していくためには、じっくり育ててくれる会社を選ぶことも大切です。
最初の「できない」「無理かもしれない」で結論を出すのではなく、成長の先にある景色にも意識を向けてみましょう。そして、そばで見守ってくれている先輩や上司の言葉にも耳を傾けながら、自分の成長につなげていきましょう。
