IT業界で将来、働くことを目指している皆さんに向けて就職活動前にぜひ知っておいてほしい情報をご紹介。今回取り上げるのは、コロナ禍で注目を集めている新しいワークスタイル「ハイブリッドワーク」です。テレワークと出社を自由に選べるハイブリッドワークのメリット・デメリットについて、解説します。
※テレワークと似ている単語に「リモートワーク」がありますが、本稿では出社しないワークスタイルをテレワークとして表記します。
キャリアマップ編集部 文/ライター 西村友香理
テレワークの次に注目が集まる「ハイブリッドワーク」
日本で初めて新型コロナウイルス感染症が確認されたのは、2020年1月。そこから私たちの生活は大きく変わりました。毎日、マスクを着けることは当たり前となり、街では検温と手の消毒が求められるようになりました。そのほかにも、コロナ禍前と比べてさまざまな変化がありました。
例えば、ライブやイベントなどの各種エンターテインメントがオンライン開催へとシフト。住んでいる場所の関係や持病などの理由で、オフライン開催では参加が難しかった人も、ライブやイベントを楽しめるようになりました。
オンライン化が進んだのは、エンターテインメント領域だけではありません。ワークスタイルについても、オフィスに出社せずに自宅などの遠隔地から働くテレワークが浸透し始めています。
総務省の調査によると、令和3年度では21.6%の企業がコロナ対策のためにテレワークを導入しています。
出典:総務省「令和4年版情報通信白書」
ZoomやMicrosoft Teamsといったオンライン会議ツールのほか、出社しているかのような感覚を味わえるバーチャルオフィスツールなど、テレワークを支えるサービスが続々と登場しています。政府としてもテレワークの導入を推し進めており、今後もオンラインで働く人の割合が増えていくと予測されます。
一方で、テレワークを導入したものの「コミュニケーションが減り、業務効率が下がった」「対面できないことによるストレスで、社員のメンタルヘルス問題が発生した」「通勤がなくなったことによって、運動不足に陥った」などの理由から、原則出社に切り替えている企業が存在するのも事実です。
そもそも、テレワークを導入するためには、自宅でのネット環境や集中できる作業空間を用意する必要があり、個人への負担が大きいうえ、情報漏えいなどのリスクを回避するためにセキュリティ面での継続的なコストがかかります。個人レベルではすぐにでも始められそうなテレワークですが、企業で導入するためにはさまざまな課題があるのです。加えて、家庭の都合によっては、ネット環境や仕事場所を確保するのが難しい場合もあります。個人の意思として、出社を希望する人もいるでしょう。
テレワークの是非が問われる中、注目されているのが「ハイブリッドワーク」です。ハイブリッドワークとは、出社とテレワークを組み合わせたワークスタイルを意味します。WeWork Japan合同会社が2022年10月に発表した「コロナ禍長期化におけるワークスタイル意識調査2022」によると、ハイブリッドワークの普及率は上昇しており、働く場所を自分で選びたいというニーズが強くあることもわかっています。(出典:【コロナ禍長期化におけるワークスタイル意識調査2022】ハイブリッドワーク普及率が昨年より上昇の5割強となり、従業員・経営者層ともに、よりフレキシブルなワークスタイルの実現に向かう傾向)
ハイブリッドワークが導入されている企業であれば、集中して作業をしたい時は自宅、会議が多い日はオフィスに出社するなど、その日の予定に合わせてワークスタイルを変えることができます。ここでポイントとなるのは、出社かテレワークのどちらかを強制されることはないということ。最低出勤日数や出社必須の曜日が決められている場合もありますが、基本的には働く環境を自由に選ぶことができます。
個人のスキル最大化!注意すべき点にも留意
ここからはハイブリッドワークのメリットとデメリットについて触れていきます。
~メリット~
ハイブリッドワークを導入することで、自分自身でワークスタイルを選べるようになり、生産性やモチベーションの向上が期待できると言われています。働く場所にとらわれることがないため、地方に住みながら都内の企業に勤務できるようになるのも魅力です。住んでいる場所の関係でこれまでは活躍の場所が少なかった人も、さまざまな仕事に挑戦できるようになります。
ハイブリッドワークに加えて、始業・終業時間を自分で調整できるフレックスタイム制度の導入や中抜けを可能としている企業であれば、子育てや家事、介護などの合間に仕事を進めることもできるでしょう。そうなれば「個々の生活スタイルに合わせたワークスタイル」が可能となります。何かしらの都合で働く場所と時間が制限されることになったとしても、個人のスキルを最大限に生かした仕事とマッチできる可能性も上がることが期待されます。
企業からすると、ライフステージの変化による退職を防げるため、人材の定着につながるのもメリットの一つ。常時出社する人数が少なくなるのであれば、オフィスを縮小することも可能で、固定費を大きく削減することも可能。空いたスペースを有効活用し、従業員のコミュニケーションスペースにすることもできるため、新たなイノベーションの誕生にもつながるかもしれません。
~デメリット~
テレワークと同様に、セキュリティ対策には注意が必要です。パソコンや資料をオフィスから持ち出すことになるため、情報漏えいを防ぐのはもちろん、不正アクセスなどへの対策も考えなくてはいけません。そのためには、セキュリティソフトのダウンロードやセキュリティツールを管理する人材(セキュリティエンジニア)が必要です。また従業員の働いている様子を把握するのが難しく、出社よりもコミュニケーションの難易度が上がるため、企業からするとマネジメントコストが高くなる可能性もあります。
社員からすると、出社時と比べて「迅速な返信を心がける」「チャットなどで積極的にコミュニケーションを取る」といった工夫が必要となります。出社を優先する人が多い職場であれば、テレワークをしている人とのコミュニケーションの難易度が上がることで、両者の間に溝が生まれる可能性も。DiscordやSlackのハドルミーティングなど、音声のみで気軽に通話できるツールもありますが、出社時と同等のコミュニケーションは難しいのも事実です。「ちょっとした会話がヒントとなり、新しい事業アイデアが思い浮かぶ」といった偶発的なイノベーションが発生しづらくなる点も否めません。
また出社が減ると、通勤時や外出などで運動する機会が少なくなるだけでなく、オンオフの切り替えが難しいことから長時間労働になりがちです。健康面での問題が浮上する可能性もあることから、厚生労働省は「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」を設けています。
自分にあったワークスタイルを見つるためには
世界のテレワーク利用状況を比べた際、他国と比べて日本は導入が遅れていることがわかります。
出典:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」
テレワークの導入が進まない理由としては、ハンコ文化が根強く残っており、紙での書類管理も多いため、出社を余儀なくされるケースが珍しくないからだと考えられています。しかし現在では、電子署名が少しずつ浸透しています。もちろん、コストの都合上、中小企業ではペーパーレス化や“脱ハンコ”が難しいことも珍しくありません。
とはいえ、IT企業に勤めるエンジニアの場合は、柔軟なワークスタイルを実現できる可能性が高いです。フリーランスや副業として業務委託契約で働く場合も、テレワークをメインとするケースが多いと言えます。しかし案件によっては出社が必須となるものもあるため要注意。将来的にフリーランスを目指していて、かつテレワークやハイブリッドワークを希望する人は、契約内容をしっかり確認するようにしましょう。また1点だけ意識しておきたいのは、社内のツール導入や社員用パソコンの設定などを担っているセキュリティエンジニアの場合、テレワークでは対応するのが難しい業務もあるということです。
実際に経験してみないことには「自分に向いているワークスタイル」は判断できないため、インターンシップを推奨している専門学校に通っているのであれば、社会に出る前に企業での働き方を経験しておくのが良さそうです。インターンシップを推奨していない学校の場合は、コーポレートサイト内の採用広報ページにある社員インタビューを読むのがおすすめです。社員インタビューでは、実際の働き方を紹介していることがあるため、いくつかの企業の記事を読み比べすると、自分が理想とするワークスタイルを見つけやすくなるかもしれません。
またIT企業では独自の制度を設けているケースも珍しくなく、ハイブリッドワークが導入されていなくとも、柔軟なワークスタイルを実現できるかもしれません。世界的に働き方改革が進められている現代においては、数年後にハイブリッドワーク以外の画期的なワークスタイルが誕生している可能性もあります。自分にとって理想のワークスタイルを見つけるためにも、ニュースやコーポレートサイトをチェックして、最新の情報をキャッチアップする習慣を身につけましょう。