私たちの生活になくてはならないSNS。かつて、インターネット上で調べ物をする際にはGoogleやYahoo!などの検索エンジンを利用することが一般的でしたが、今では旅行に出かける際、商品を購入する際、料理を作る時のレシピ探しなど……生活をする上での情報は、全てSNSから得られるようになりました。そんなSNS時代において、注目度が高まっているのが「メタバース」です。メタバースの登場によって、SNSにはどのような変化が生まれるのか。SNSの今後について考えてみましょう。
キャリアマップ編集部 文/ライター 西村友香理
私たちの生活に浸透しつつある「メタバース」
メタバースには統一された定義がありません。もしひと言で表すとするならば、「インターネット上の仮想空間」だと言えます。ユーザーはアバターを使って行動し、他ユーザーとコミュニケーションをとったり、仮想通貨などを利用した取引を行ったりと、まるで現実世界で過ごしているかのような体験ができます。
話題のメタバースについて、最近登場したものだというイメージがあるかもしれませんが、既に2003年『Second Life』のような仮想空間を楽しめるサービスがリリースされています。日本では2006~2007年頃に大きな話題となり、国内でのブームは去ったものの、現在も稼働しているサービスです。
なぜ最近になってメタバースが再注目されるようになったのでしょうか。大きく注目されるようになった背景には、旧Facebook社が2021年に社名を「Meta(メタ)」に変更し、メタバースに注力すると発表したことが関係しています。
しかし、実際には2021年以前からメタバースの波は到来しており、“メタバースの本命”だと言われているオンラインゲーム『フォートナイト』は、2017年にリリースされています。同ゲームは、2022年現在、世界で3億5000万人以上のプレーヤーがいる人気ゲームです。通常のゲームとしてのプレイができるだけでなく、世界中のアーティストによるライブを鑑賞したり、映画のプロモーションとして行われるコラボ企画に参加したりすることもできます。
メタバースではない!?関連ワードも要チェック
メタバースに関連するワードとして、VRやAR、MRなどを耳にすることがあるかもしれませんが、これらはメタバースそのものではありません。
・VR
日本語にすると「仮想現実」で、VRデバイスを通して仮想空間を体験できる技術のことを言います。2021年にLINE株式会社が調査した結果によると、「現在VRを使用している」と答えたのはわずか5%と少ない割合でした。(出典:【LINEリサーチ】「VR」の利用経験のある人は全体で16% 利用意向のある人は56%で男女ともに10代〜20代での割合が高く、男性では約7割という結果に)
・AR
「拡張現実」であり、現実の空間に仮想の世界が投影される技術の総称です。AR技術が活用されている代表的なものには『ポケモンGO』や、カメラアプリなどのエフェクト機能が挙げられます。
・MR
ARを進化させた「複合現実」です。専用のデバイスを装着することで、現実空間に仮想の情報が表示されます。『名探偵コナン』ファンの人は作中で登場する犯人追跡メガネをイメージするとわかりやすいかもしれません。
VRやAR、MRは「仮想空間を体験できる技術」であり、メタバースにアクセスする手段の一つだと言えます。
次世代サービス?SNS型メタバースも登場
普段何気なく使用しているSNSというワードは、Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)の略語で、登録会員(ユーザー)同士のコミュニケーションを可能とするサービスです。代表的なものにはFacebookやInstagram、TikTok、Pinterest、Twitterなどがあります。
メタバースもユーザー同士のコミュニケーションを可能とするため、SNSに近しい存在と位置付けることもできますが、ユーザーが主体である前者と比べてみると、後者には空間が存在しておらず、テキストや動画などのUGCがコミュニケーションの軸となっているのが特徴です。定義としてのメタバースとSNSは異なるものではありますが、次世代のサービスとして、SNS型メタバースが国内外で登場しています。
中でも注目を集めているのは「BUD」です。シンガポールに拠点を持つスタートアップが開発したサービスで、簡単な操作で仮想空間を作成できるUGCプラットフォームです。Z世代をターゲットとしており、世界中でユーザー数を伸ばしているのだとか。
その他、作成した3Dアバターを使用して会員とのコミュニケーションを楽しめるメタバース「ZEPETO」や、子どものプログラミング教材として扱われることもある「Minecraft(マインクラフト)」などもSNS型メタバースだと言えるでしょう。世界的ヒットを記録した任天堂の「あつまれ どうぶつの森」も、ユーザーが島を作ったり、オリジナルの服や家具を作ったりできることからUGCのような要素があり、他ユーザーとのコミュニケーションも取れるという点で、SNSのようなものであると言えるかもしれません。
異なる性質を持つメタバースとSNSですが、テクノロジーが進化するにつれ、両者の立ち位置が近くなっていく可能性もあります。
メタバースの波により、SNS勢力図に変化はあるのか?
2022年1月時点での世界の主要SNSの月間アクティブユーザー数は下記の通り。
なお、国内のSNS利用率を見てみると、LINEが最も高く、次いでYoutube、Twitter、Instagramという順番となっています。世界で最も使われているFacebookの利用率が、日本では少ないのも特徴です。
2022年10月27日に起業家のイーロン・マスク氏がTwitterを買収したことで、海外ではTwitter離れが進んでいます。日本でも同様にTwitterを離れるユーザーがいる可能性もあり、移行先の候補としてはMastodon(マストドン)やInstagram、TikTokなどが挙げられています。それも踏まえて、上記の利用率が変化するかどうかについて予測してみると、現在は同程度のTwitterとInstagramの利用率が逆転する可能性はあるかもしれません。
メタバースを絡めて考えると、インフルエンサーの動きによっては、SNS型メタバースへの注目度が高まる可能性は十分にあります。インフルエンサーマーケティング事業を展開するLIDDELL株式会社が、5,000人以上のフォロワーを持つインフルエンサー100人にアンケートを実施したところ、81.4%が「SNSからメタバースに移って活動したい」と答えたことがわかりました。(出典:【LIDDELL調査】 メタバースへ強い興味!インフルエンサーの81.4%がメタバースで活動したいと回答。期待することは、「交流」や「擬似体験」のコミュニティ。)
ちなみに、メタバースの特徴には「没入感」といったものがあります。3Dの空間に入り込んだように感じられるのは、メタバースの魅力の一つです。近年は既存のSNSでも「没入感」が大きなキーワードとなっており、Youtubeでは2022年10月に「アンビエントモード」を導入。動画の内容に合わせて背景色を変化する機能で、没入感を高める効果があります。Instagramでも動画コンテンツを作成する際のポイントとして「没入感を大切にする」とアナウンスしています。メタバースの進化は、今後も既存のSNSのサービス仕様に影響を及ぼしていくでしょう。
とはいえ、メタバースが成熟するのは2030年頃だとする説もあり、新サービスが登場しない限り、数年の間はSNSの勢力図に大きな変化はないと考えられます。
とはいえ、メタバースが成熟するのは2030年頃だとする説もあり、新サービスが登場しない限り、数年の間はSNSの勢力図に大きな変化はないと考えられます。
「SNS」と「メタバース」がもたらす変化
SNSがインフラだと言っても過言ではない現代において、SNSおよびテクノロジーの進化は職種に関係なく影響してきます。例えば、Instagramが浸透したことにより、出かける際には「写真や動画を撮影してSNSに投稿すること」を主な目的とする人が増加。街中には「映え」を意識したお店や商品が並ぶようになり、新たな観光スポットも多く誕生しました。つまり、個人がSNSを使用しているかどうかに関係なく、SNS内の文化やそこで生まれた流行によって、私たちの生活、価値観までもが変化し続けているのです。
メタバースが進化して私たちの生活に浸透するようになれば、SNSがもたらしたものよりも大きな変化が訪れる可能性があります。それにより、成長する業界があれば衰退してしまう企業も出てくるでしょう。卒業後の進路について悩んでいる学生の皆さんは、各SNSやメタバースの動向についても、ぜひチェックしてみてください。それぞれが進むべき道を見つけるための、ヒントが見つかるかもしれません。