食の世界で、「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」「今さらだけれど実はわからない」という言葉はたくさんあるはず。この連載ではそうした言葉の中から、食のこれからを知るキーワード説明。今回は「ヴィーガンとベジタリアン」を取り上げます。
vol.2 ヴィーガンとベジタリアン
ヴィーガンはベジタリアンの一種。厳しさが特徴
「ヴィーガン」「ベジタリアン」というと、野菜を中心にした食生活を送る人のことであると、みなさんご存知だと思います。そしてそれぞれにいろいろな種類があるということも、なんとなく知っているでしょう。ここではその種類を整理しながら、関連トピックを紹介します。
※「ベジタリアン」の定義は実は流動的です。ここでは、ポピュラーな説に従った説明をします。
ベジタリアンは、とても広いカテゴリーをカバーする言葉です。中には「たまに肉や魚を食べてもいい」というゆるいカテゴリー(イラストのベージュ部分)もあれば、食べるのは植物だけに徹底するカテゴリー(イラストの水色部分)もあります。
その中でも、ヴィーガンはもっとも厳しいベジタリアンのカテゴリーです。別名「ピュア ベジタリアン」とも言われています。「ピュア」、つまりいちばん純粋とされるベジタリアンなのです。
ちなみにヴィーガンは、食生活というよりライフスタイル全体、さらには人生哲学を示す言葉。「動物を苦しめることを、できるだけやめる生き方の選択」だとも言われています。
「植物のみ」を徹底するヴィーガン。さらに厳しいカテゴリーも
それではさっそく、ヴィーガンの内容を見ていきます。
ヴィーガンでは以下の素材がNGとされます。
・動物や魚介類
(牛、豚などの哺乳類、鳥類、魚介類、昆虫など。これら由来のゼラチンやサプリメントも含む)
・卵
・乳および乳製品
・ハチミツ
ヴィーガンの中には、さらにルールを厳格化したものがいくつかあります。その中から3つ紹介します。
◆フルータリアン
フルータリアンは「果実食主義者」と訳されます。つまり「果実(フルーツ)を主に食べる」ということ。一般的なヴィーガンのNG食材に加え、
・根菜類(ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ゴボウなど)
・穀物(米、小麦、大麦など)
もNGとされます。
考え方としては、「樹木に実り、植物の生命に関わらない」ものはOK。つまり、リンゴやナッツを収穫してもそれらの樹の生命は奪われませんが、ニンジンや穀物を食べれば生命が奪われるのでNG、ということです。
◆ロー ヴィーガン
「ロー」とは英語で「生」の意味。46〜48℃以上に加熱した食べ物を基本NGとします。その一方で、フルータリアンがNGとする穀類はOKで、発芽穀物がよく用いられます。
ロー ヴィーガンがめざすのは、植物が本来持っている酵素の摂取です。酵素は良好な腸内環境を維持するなど、健康によい物質ですが、46〜48℃以上に加熱すると効能は消失します。よって、ロー ヴィーガンでは、それ以下の温度で調理するのです。
◆オリエンタル ベジタリアン
仏教の精進料理がこれにあたります。一般的なヴィーガンのNG食材に加え、ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、アサツキもNG。これらの素材は仏教で「五葷(ごくん)」と呼ばれ、「色欲や怒りの心が助長される」ので禁忌とされています。
ベジタリアンは卵、乳製品、ハチミツがポイント
次に、ヴィーガン以外のベジタリアンを見ていきましょう。ルールが厳しいものから順に3種類紹介します。
◆ラクト ベジタリアン ーー 乳製品OK
「ラクト」とは乳製品のこと。動物性食品全般がNGですが、乳製品は例外でOKとします。ハチミツは人によって分かれるようです。
◆オボ ベジタリアン ーー 卵OK
「オボ」とは卵のこと。動物性食品全般がNGですが、卵は例外でOK とします。ハチミツは人によって分かれるようです。
◆ラクト オボ ベジタリアン ーー 乳製品、卵、ハチミツOK
動物性食品全般がNGですが、乳製品、卵はOKとします。ハチミツもOKです。
乳製品がOKとなると、チーズやヨーグルトなど、食べられる食品に一気にバリエーションが出てきます。さらに卵もよいとなると、良質なタンパク質も摂りやすくなります。欧米でもっともポピュラーなベジタリアンは、ラクト オボ ベジタリアンです。
ベジタリアンの仲間
ここからは、さらにルールがやさしくなります。一般的に「ベジタリアン」といった場合、以下は含まれないこともあります。
◆ペスキタリアン(ペスクタリアン、ペスカタリアンとも) ―― 魚OK
ラクト オボ ベジタリアンのルールに加え、魚介類もOKとします。
◆ポロ ペスキタリアン(ポロ→ポーヨーとすることも)―― 魚、鶏肉OK
ペスキタリアンのルールに加え、鶏肉もOKとします。
◆フレキシタリアン(セミ ベジタリアンとも)――どの肉、魚もOK
基本的に野菜中心の食事で日々過ごしますが、ある程度なら動物性食品もOKとします。
ルールは厳しくても、グルメな料理がたくさん
ベジタリアンもヴィーガンも、ルールが厳しくなったぶん、質素な食事になるのだろう……と思われがちです。しかし実はまったくそんなことありません。
というのも、海外に目を向けてみると、ベジタリアンやヴィーガンは食に関心が深い人、すなわち食にお金をかける人や、健康にきわめて意識的な富裕層に需要があるからです。とくにアメリカ西海岸では、ハリウッドスターをはじめとするセレブの間でロー ヴィーガンの料理(ローフード)は人気。そうした人たち向けの、おいしく彩りもよい、グルメなローフードが発達しています。
では具体的に、どのようにしておいしいローフードは作られるのでしょう? パスタの例を紹介しましょうーー水に浸けたカシューナッツをブレンダーにかけ、ごくなめらかなペーストにすれば、チーズにも匹敵するコクのあるアイテムとなります。また、パスタの代わりによく用いられるのがズッキーニの細切り。この細切りをカシューナッツペーストで和え、凝縮させたトマトペーストやフルーツのフレーバーなどを使い、パリッと乾燥させた野菜をアクセントに仕上げれば、味も見た目も満足度の高い一品となるのです。
なお、カリフォルニアにはローフード専門の学校「Living Light Culinary Art Institute」があります。授業は英語ですが、ローフードに関する資格を取得でき、グルメなローフードを作る知識と技術を習得できます。興味ある人は、チャレンジしてみてはいかがでしょう?
仏教の精進料理も、ある意味非常にグルメで洗練されたヴィーガンです。日本では精進料理の懐石コースを出すお店もたくさんあります。しみじみとした野菜のおいしさはもちろん、胡麻豆腐や生麩など、独特の食感やおいしさのある食材も豊富。その多彩な世界はヴィーガンの進化形と言えるでしょう。
気分転換くらいの気持ちで試しても
日本をはじめとする仏教国では野菜中心の食生活が根付き、発展してきた歴史があります。日本はベジタリアンやヴィーガンを試しやすい環境なのです。
「気分転換に数日間オボベジタリアンになる」、「月に1日ヴィーガンの食事をして身体をリセットする」など、気軽に生活に取り入れるのもいいかもしれません。
ただし、厳格なヴィーガンやベジタリアンは、体質に合う・合わないの個人差が大きいもの。ヴィーガンで疲れやすくなる人もいれば、イキイキとする人もいます。自分に合った方法、程度で実践することも大切です。