ニュースや新聞などで見るけれど、よくわからないITに関連するキーワードをピックアップしてご紹介するIT関連ワードシリーズ。第5回目は、「デジタルツイン」についてお話します。
キャリアマップ編集部 文/ITジャーナリスト・ライター 岩元直久
キャリアマップ編集部 文/ITジャーナリスト・ライター 岩元直久
サイバー空間とフィジカル空間を対にした「双子」を形成
「デジタルツイン」という言葉を目や耳にする機会が増えています。デジタル庁は、「デジタルツイン構築に関する調査研究」などを進めていますし、東京都も「デジタルツインの社会実装に向けたロードマップ」を発表しています。世界の著名な企業などが「デジタルツインを活用して、製造やメンテナンスなどを効率化した」というようなニュースに触れたことのある人もいるかもしれません。今回は、今後の新しい社会を構築する鍵となる「デジタルツイン」とはどのようなものなのか、ご紹介します。
ツインは、そもそも直訳すると「双子」を意味します。ではデジタルツインというと、デジタルの双子ということになります。これはどういうことなのでしょう。デジタルツインが指す双子とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の間でちょうど双子のように対になる環境を作ることを指します。私たちが住んでいる現実のフィジカル空間の情報を取得し、ネットワークやコンピューターから構成する仮想のサイバー空間上にまるで双子のように瓜二つの環境を再現し、分析やシミュレーションをできるようにします。そして、サイバー空間で計算した最適な方法をフィジカル空間にフィードバックすることで、現実の世界をより良くすることができるという考え方です。
デジタルツインは、2002年に米ミシガン大学のマイケル・グリーブス氏が提唱した概念で、その考え方が世界に広まりました。サイバー空間とフィジカル空間で「双子の環境」が得られるなら、さまざまなメリットが得られます。例えば、フィジカル空間ではできないような多数のシミュレーションをサイバー空間で行い、最も成果が得られる方法をフィジカル空間で選択することができます。フィジカル空間の情報をリアルタイムで取得していれば、サイバー空間でデータを分析することで故障や事故の予兆を検知することも可能になります。製造業などではデジタルツインの考え方を導入することで、シミュレーションを有効に使った製品開発が可能になり、コスト削減や開発期間の短縮も実現できます。
こうしたデジタルツインを実現するには、フィジカル空間とサイバー空間の間の情報連携が不可欠です。フィジカル空間からサイバー空間に情報を取得することで、サイバー空間上にフィジカルの双子を作る必要があるからです。そして、サイバー空間で分析やシミュレーションした結果をフィジカル空間にフィードバックすることも大切な要素です。分析やシミュレーションをするだけでなく、フィジカル空間をより良くすることがデジタルツインには求められるからです。
センサー、ネットワークなど多様な要素が必要
とは言え、デジタルツインを実現するのは容易ではありません。まず、現実の私たちが住む世界にある膨大な情報を、サイバー空間に写し取る必要があります。
そのためには、サイバー空間できちんと分析、シミュレーションができるだけの情報を取得しなければなりません。センサーを数多く設置し、その情報を集めるためのネットワークを構築し、蓄積や分析するためのクラウドが必要です。必要なセンサーも多岐にわたりますカメラによって動きや被写体の種類を分析することもあることから、温度や湿度、音、振動物体の位置など、多くの種類のセンサーが必要になります。サイバー空間上で精細な分析、シミュレーションを実現するには、センサーの精度も高めなければいけません。
センサーはフィジカル空間のありとあらゆる場所に設置される可能性があるため、情報を運ぶネットワークも世界中をくまなく張り巡らせる必要があります。それも、膨大な情報量を伝達できる大容量のネットワークが求められます。
サイバー空間の側でも、膨大な現実空間からの情報を使って「双子」を計算できるだけのコンピューターリソースが必要です。用途によってはリアルタイムで分析して予測などの結果を出せるだけの超高速なコンピューターが必要になります。その上で、サイバー空間で得られた分析結果やシミュレーションから、フィジカル空間にフィードバックするための装置(アクチュエーター)も必要です。
こうしてざっと見ただけでも、デジタルツインを実現するには非常に多くの技術や製品が必要であることがわかるでしょう。それも、インターネットなどのサイバー空間を構成する要素だけではなく、フィジカル空間から情報を取り込み、最終的にフィジカル空間をより良くするためのフィードバックを行うようなモノづくりにかかわる要素がとても重要な役割を果たします。
そのためには、サイバー空間できちんと分析、シミュレーションができるだけの情報を取得しなければなりません。センサーを数多く設置し、その情報を集めるためのネットワークを構築し、蓄積や分析するためのクラウドが必要です。必要なセンサーも多岐にわたりますカメラによって動きや被写体の種類を分析することもあることから、温度や湿度、音、振動物体の位置など、多くの種類のセンサーが必要になります。サイバー空間上で精細な分析、シミュレーションを実現するには、センサーの精度も高めなければいけません。
センサーはフィジカル空間のありとあらゆる場所に設置される可能性があるため、情報を運ぶネットワークも世界中をくまなく張り巡らせる必要があります。それも、膨大な情報量を伝達できる大容量のネットワークが求められます。
サイバー空間の側でも、膨大な現実空間からの情報を使って「双子」を計算できるだけのコンピューターリソースが必要です。用途によってはリアルタイムで分析して予測などの結果を出せるだけの超高速なコンピューターが必要になります。その上で、サイバー空間で得られた分析結果やシミュレーションから、フィジカル空間にフィードバックするための装置(アクチュエーター)も必要です。
こうしてざっと見ただけでも、デジタルツインを実現するには非常に多くの技術や製品が必要であることがわかるでしょう。それも、インターネットなどのサイバー空間を構成する要素だけではなく、フィジカル空間から情報を取り込み、最終的にフィジカル空間をより良くするためのフィードバックを行うようなモノづくりにかかわる要素がとても重要な役割を果たします。
日本が推進するSociety 5.0の中核技術
日本の政府は、最先端技術を活用して経済発展と社会的課題の解決を両立することを目指す、人間中心の社会「Society 5.0」を提唱しています。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に次ぐ人間中心の社会がSociety 5.0だというのです。
このSociety 5.0は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する」社会と説明されています。すなわち、デジタルツインを活用して、より良い社会を構築しようという構想が日本政府の考えとしてあるわけです。
デジタルツインの実現には、各種のセンサーやカメラなどの情報取得機器、ネットワークやストレージ、コンピューターなどの情報処理基盤、フィジカル空間へのフィードバックに必要なモーターやアクチュエーター、それらを制御するシステムなど、多くの技術が関わっています。分析のためのAI(人工知能)や、データを処理するためのデータサイエンスの技術も一層求められるようになるでしょう。
今は学生でいずれエンジニアになるにしても、「デジタルツインなんて自分には関係ない遠い存在」と思っていても、政府が推進する政策ですからいずれ関わりが深まることは十分に考えられます。以前であれば、コンピュータゲーム開発は、エンターテインメント分野の娯楽分野の技術と考えられましたが、今では3Dのサイバー空間上にフィジカル空間のコピーを再現して、いわゆるメタバースを実現するための重要な技術になっています。特にコンピュータゲームを学ぶ学生の皆さんには、「デジタルツイン」というワードを見たら、なるべく何が起こっているのか、すぐに情報チェックすることをオススメします。
温度計や秤(はかり)を作る技術も、デジタルツインの重要なインプットデバイスの精度向上に役立ちます。いま技術者になるために学んでいる技術が、これからどこかでデジタルツインと関係してくることを想像すると、目の前にある技術が世界を変えていく可能性にワクワクしませんか。