ニュースや新聞などで見るけれど、よくわからないITに関連するキーワードをピックアップしてご紹介するIT関連ワードシリーズ。第4回は「メタバース」についてお話しします。
キャリアマップ編集部 文/ITライター 松葉紀子
メタバースは30年前から存在していた!?
私たちの暮らしを大きく変えたインターネット。そのインターネットに続いて、新たにインパクトを与える可能性があると注目を集めているのが、「メタバース」です。
メタバースを英語で書くと、「Meta」と「Universe」。「Meta」は超~高次~などの意味があり、「Universe」は宇宙という意味です。このふたつの言葉から形成された「Metaverse(メタバース)」は、直訳すると、超宇宙や高次元宇宙ということになりますが、一般的には、インターネット上に構築された三次元の仮想空間もしくはサービスなどを指します。ユーザーは、パソコンやスマートフォン、「VR(仮想現実)」用のゴーグルを使用してメタバース(仮想空間)に参加して、自分の分身であるアバターを操作して、仕事や買い物、ほかの利用者とコミュニケーションを取るなど、現実世界とはまた全く別の日常生活を過ごすことができるのです。
2003年に運営開始された『Second Life』、ユーザーによって創られたインターネットの3D仮想世界では、自分のアバターを作り、その世界で生活できることで話題になりましたが、その後いったんブームは沈静化しています。しかしFacebookが2021年10月に社名を「メタ・プラットフォームズ(メタ)」に変更したところにも象徴されていますが、世界をけん引するIT企業の多くがメタバースに再び注目しています。
ちなみにメタバースは、1992年に米国のニール・スティーヴンスンが発表したSF小説『スノウ・クラッシュ』の中で、アバターがアクションを起こせる仮想空間をメタバースと呼んだところから始まっています。メタバースという言葉が登場してから30年以上経過しているのにも関わらず、メタバースの定義はいまだに難しいとされています。ただ先ほどご紹介した通り、インターネット上に構築された三次元の仮想空間もしくはサービスのことを意味するケースが多いようです。現在、ビジネスの世界では、新たな経済圏として注目を集めているメタバース。私たちの暮らしにどういう影響があるかはまだはっきりとしていませんが、IT業界はもちろん、ビジネスの世界で生きていくうえでは「メタバース」とは何かを知らないというわけには行かなさそうです。
ゲームや不動産、さまざまな世界に
私たちが知っているメタバースのサービスといえば、どんなものがあるのでしょう。新型コロナウイルス感染症が広がる時期に発売が重なり、大人気となった、『あつまれ どうぶつの森』もその一つです。ほかにも損害保険ジャパンは、ANAホールディングスが始める仮想旅行や仮想ショッピングモール内で現実世界の旅行時のケガに備える保険を販売するなど、大手国内企業でもメタバースの分野で新たな動きが出てきています。
意外なところでは、不動産業界でも既に導入されているものもあります。建設会社や住宅販売会社によって、ビルやマンションなどのバーチャルツアーが企画され、実施されているものもあります。またメタバース空間内における不動産も今、急成長しています。例えば、メタバース空間「The Sandbox」(https://www.sandbox.game/jp/)は、デジタル不動産です。消費者であるプレーヤーはデジタル空間を購入して、エクスペリエンス(デジタルアセット)を構築することができます。キャラクターやアイテム、土地をNFT化して唯一無二の資産にすることができるのも特徴です。ゲーム内で購入した土地(LAND)をNFTとして、Coincheck NFTやOpenSeaなどの外部のNFTマーケットプレイスに持ち出して売買することも可能です。リアルな不動産取引が当たり前な今の状況からすれば、デジタル空間にどれくらいの価値があるのかと、疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし2021年に取引された土地はなんと6万5000件にもおよび、売り上げは400億円近くに上っているというから驚きです。
(出典:The Coming Boom In Metaverse Lending For Banks、Forbes、2022年2月14日
https://www.forbes.com/sites/ronshevlin/2022/02/14/the-coming-boom-in-metaverse-lending-for-banks/)。
ほかにもVRやAR技術を活用して没入型のショッピングサービス、コンサート配信など、さまざまな分野に広がりつつあります。メタバースはこのように今後、ビジネスの世界を、私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めているものなのです。
ほかにもVRやAR技術を活用して没入型のショッピングサービス、コンサート配信など、さまざまな分野に広がりつつあります。メタバースはこのように今後、ビジネスの世界を、私たちの暮らしを大きく変える可能性を秘めているものなのです。
近未来にはオフィスも仮想空間になる可能性も!?
IT業界を目指しているとはいえ、メタバースがどう関係してくるか、まだピンと来ていない人も多いかもしれません。
では次に働くという視点から、メタバースを見ていきましょう。新型コロナウイルス感染症が発生して、多くのIT企業でリモートワークが当たり前となっています。2022年1月7日産業労働局の発表によると、東京都内の企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は56.4%。テレワークの実施回数は、週3日以上の実施が45.6%という結果が出ています。緊急事態宣言下かどうかで、多少の差はあるものの、エッセンシャルワーカーのようにその場に行かないとできない仕事以外は、今後、リモートワークに切り替えられていく流れにあります。特にIT業界ではその傾向が強いようです。オフィスに出向き、周囲の人とコミュニケーションをしながら仕事を進めていくことは、想像以上に得られるものがあります。しかし今では多くの企業でリモートワークが導入され、大手IT企業の中には90%以上が在宅勤務というところも出てきています。ちなみにメタが提供するメタバースで「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルーム)」というものが登場しています。このサービスは、企業向けに作られたもので、ユーザーはVR端末を使って仮想空間に参加。空間内に設置された会議室で他の利用者と「議論をしたり、資料を発表したり」できるものです。このようにオンライン上に現実と類似したオフィスを作ることができれば、いずれ私たちは仮想空間の中にアバターを作り、その仮想空間で働くという日が来るかもしれません。
とはいえ、メタバースの分野ではまだまだ課題が山積しています。例えば、セキュリティも大きな課題の一つです。メタバースには、膨大な個人情報や資産が存在するので、それらを守るために、今後さらに厳しいセキュリティが求められることが予測されます。一方で、セキュリティを高めすぎるあまり、ユーザビリティが下がってしまうのでは本末転倒。セキュリティとユーザビリティのバランスをいかにうまく保ちながら、システムをどのように構築すべきか、ITインフラやシステム開発に関わる人にとっては切り離せない大きな課題となるでしょう。ほかにも、もし何か不測の事態に遭遇して、デジタルデータが消滅してしまったときにどうするのかなど、あらゆる側面からの法整備も急務となっています。
このようにまだまだ未知なことが多いメタバースですが、IT業界を目指す皆さんにとっても重要なトピックスです。今後も動向に注目をしていただき、もしメタバースを経験できるチャンスがあれば、体験してください。