ニュースや新聞などで見るけれど、よくわからないIT に関連するキーワードをピックアップしてご紹介するIT 関連ワードシリーズ。第3回は「NFT(Non-Fungible Token)」についてお話します。
キャリアマップ編集部 文/ITライター 松葉紀子
キャリアマップ編集部 文/ITライター 松葉紀子
アートや漫画、音楽などあらゆる著作物に新たな価値を
これまでデジタルデータは簡単にコピーできるという観点から、それ自体に資産価値を持たせるのは困難でした。しかしブロックチェーン技術(取引履歴を暗号技術によって過去から1 本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術)を活用するようになり、デジタルデータに世界で1つしかない資産価値を付与することができるようになりました。
資産価値を付与するために利用されているテクノロジーは「NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン」と呼ばれるものです。これまでデジタルデータは複製できるということで、宝石や絵のような美術品のように資産価値を持たせることができませんでした。しかし、「NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)」の登場によって、偽造不可な鑑定書や所有証明書付きのデジタルデータが存在するようになり、今、NFT が注目を集めています。中でも多くのメディアに取り上げられ、話題になっているのはNFT アートです。
2021 年12 月、日本を代表する音楽家の坂本龍一氏が手がけた「Merry Christmas Mr.Lawrence」のメロディーを 595 音に分割。この音源を 1 音ずつにして NFT として「Adam byGMO 」で発売されました。これらの NFT は、2021 年 7 月 30 日にBunkamura Studio にて、闘病中の坂本龍一氏が演奏した2021 年唯一となる「MerryChristmas Mr. Lawrence - 2021」の貴重なレコーディング音源から分割し製作されたもの。音源の冒頭には1-1 や1-2 のような数字がそれぞれ記載されており、それが右手の演奏の何小節目の何番目の音かを表しています。そして96 小節からなる595 音のNFT には、それぞれの音が位置する小節の楽譜画像もひもづけられています。このとき、1 音(1つのNFT)10,000 円(税込み)の固定価格で一次販売されました。この音源を購入した人を対象に、直筆楽譜のオークションも開催されています。
このようにNFT は2021 年から急速に注目を集めるようになり、アート以外にも同年3 月にはTwitter 創業者のジャック・ドーン氏が出品した初ツイートが3 億円で落札されています。最近、Twitter の取締役を断り、話題となったテスラのイーロン・マスク氏が出品したNFT の作品についた値段は約1300 万円といずれも高値で取引されています。
暗号資産とNFTの違いは唯一無二かどうか
ブロックチェーン技術を用いた取引として暗号資産がありますが、似て非なる暗号資産とNFT。この2 つの違いはいったいどこにあるのでしょうか。以下にそれぞれについて詳しくひも解いていきます。
暗号資産......FT(Fungible-Token:代替性トークン)を使用資産個別の識別情報はまったく関係なし。この技術を使えば、いくら分の資産価値なのかというデジタルデータを証明できますが、他の暗号資産や現金と交換できます。つまり代替可能なトークン(トークンとは、直訳すると印や象徴などの意味ですが、ここではデジタルマネーやネット決済で使用する認証デバイスを意味しています)です。
NFT......(Non Fungible-Token:代替性トークン)を使用試算個別の識別情報を持たせることで、世界で唯一無二のデジタルデータにすることができ、その結果、大きな資産価値を持たせることができます。そのためアートなどの芸術作品ではNFT を使った取引が採用されています。
現在、NFT の取引の多くはイーサリアム(ETH)と呼ばれる、ヴィタリック・ブテリン氏が開発したプラットフォームを利用していますが、過去の IT 業界では検索エンジンのプラットフォームにおいて激しい競争があって淘汰(とうた)されていったように、NFT の取引に関するプラットフォームの競争は検索エンジンと同じように激化することが予想されます。
NFTを活用すれば、他の買い手が新たに購入した場合にもお金が入る!?
唯一無二の価値を与えられるだけでなく、NFT を活用すれば、販売する側にも大きなメリットがあります。その1つは、「プログラマビリティ」です。さまざまな付加機能をデータ自体に付与することができるので、二次流通した場合に手数料を手に入れることができます。
例えば、ある画廊が絵画を購入し、顧客に高値で販売したとしても、これまでの仕組みでは画家には画廊に販売した費用しか収入になりませんでした。しかしNFT には、「転々流通した際には、購入代金の一部を支払う」というプログラムを仕込むことができます。その結果、画家には画廊が販売したときにも一部の費用が支払われる仕組みとなります。つまり著作権を管理する団体などを介さなくても、作品が販売されたときには著作権が守られるというわけです。
ほかにもNFT が注目されるのには理由があります。それはNFT の場合、ビットコインのように所有しているNFT を自由に移転することができるので、国や既存の仕組みなどの取引のハードルをこえて、取引することができるからです。ほかにもNFT の仕様が共通規格として定められており、規格に沿った形で発行すれば、どこでも取り扱うことができます。この相互運用性が高いところも注目を集めている背景にあります。
国内外でNFTプラットフォームの競争が激化
ちなみに現在、NFT の取引がされている主要なマーケットプレイスは、海外では「OpenSea」、国内では「CoinCheck(β 版)」や先に坂本龍一氏の音源を販売した際に使われたと紹介した「Adam byGMO」などがあります。NFT には共通規格があるものの、マーケットプレイスごとに使えるブロックチェーンは異なります。そのため、何か作品を出品する場合には、手数料や支払い手段だけでなく、ブロックチェーンは何を使っているのかという点にも十分に留意すべきです。
ただNFT を使ったとしてもデジタルコピーが失われてしまうリスクは避けられません。高値で取引されたTwitter 創業者のジャック・ドーン氏が出品した初ツイートにしても、Twitter が運営されなければ、データの価値が下がるもしくはゼロになる可能性もあります。そうしたリスクを受けて、デジタルアートの発売を検討していたアーティストがNFTでの販売を延期して、再検討しているというニュースも流れています。
このようにまだまだ先行きが見えないNFT 市場ですが、今後もFinTech の分野ではこれまでにはなかった新たな技術が登場し、新しいビジネスが生まれる可能性を秘めています。つまり、ビジネスチャンスが潜んでいる、ブルーオーシャンの世界です。学生の皆さんには少し遠い世界のように感じるかもしれませんが、案外身近な世界です。新たなテクノロジーの情報をどんどん吸収しながら、今学んでいることが将来、自分が働くうえでどういうつながりがあるのか。また、どういうテクノロジーを追っていけば、エンジニアになったときに付加価値の高いエンジニアになれるのかを考えて、新技術の情報を追ってみてください。きっとそこから自分では想像もしていなかった未来がきっと拓けてくるはずです。