ニュースや新聞などで見るけれど、よくわからないITに関連するキーワードをピックアップしてご紹介するIT関連ワードシリーズ。第2回は、「サーキュラーエコノミー」についてお話します。
キャリアマップ編集部 文/ITジャーナリスト・ライター 岩元直久
キャリアマップ編集部 文/ITジャーナリスト・ライター 岩元直久
高度経済成長の裏に生まれた地球規模のゴミ問題
皆さんは、ドリンクを飲んだ後のペットボトルをどうしていますか。空になったペットボトルはリサイクルボックスに入れることで、回収されて新しくリサイクル製品に生まれ変わることは知っていますよね。このように、限りある資源を有効に活用して、地球環境を守る取り組みは将来の私たちの暮らしや社会を守ることにつながります。
でも、実際にはリサイクルできる製品は限られていますし、使い終わって捨ててしまうもののほうが多いですよね。経済活動の中で生み出される製品の多くは、使い捨てされてゴミになっていきます。ゴミが可燃物だとしても、燃やすとCO2(二酸化炭素)が発生して、地球温暖化が進むことにつながってしまいます。不燃物はごみ処理施設に埋めたりしますが、有害物質が漏れ出したというような話を聞いたことがあるかもしれません。大量生産、大量消費、大量廃棄の時代に当たり前だった、「作って捨てる」という製品の一生には、問題が多いのです。
そうしたなかで、「サーキュラーエコノミー」という考え方が生まれました。英語で、サーキュラー(Circular)とは循環を、エコノミー(Economy)は経済を意味する単語です。日本語にすると「循環経済」(循環型経済とも言います)ということになります。皆さんが日常の生活や勉強をしている中ではまだあまり身近に感じないかもしれない「サーキュラーエコノミー」ですが、日本をはじめ世界各国でサーキュラーエコノミー実現への取り組みが急速に進んでいます。聞いたことがある人は、環境問題への感度が高いと自信を持ってもよさそうです。
何が「サーキュラー」なの?
サーキュラーエコノミー、循環経済が注目されているという話をしました。でも、何がサーキュラーで循環するのでしょうか。それと、最初に触れたペットボトルなどの「リサイクル」とは何が違うのでしょうか。
まず、循環について考えましょう。これまでの経済では、製品を作って捨てることが普通でした。製品の一生を考えると、資源を採掘したり伐採したりして、それを製品として作り上げ、私たちが使った後はゴミとして捨てるという流れです。資源が製品に変わって、最終的にゴミになる一方通行の流れで、矢印で書けば一直線になります。こうした経済活動を、直線型の経済システムであることから、リニアエコノミー(Linear Economy)と呼びます。採掘した資源は一直線にゴミになり、再び利用されることはありません。さらにゴミが環境汚染を引き起こします。安く資源を手に入れられれば、製品も安くできて、使ったら捨てる。こんな世界でした。
サーキュラーエコノミーは、リニアエコノミーの対になる概念です。資源が製品の一生を終えてもぐるぐると回り続けて新しい製品の素材になり、ゴミとして捨てるものがなくなるような経済活動を示します。資源を採掘して、製品を作り、使い終わった製品はゴミとして捨てるのではなく、リサイクルしてまた製品を作る資源として生まれ変わります。地球の限りある資源を一方通行でゴミにするのではなく、「新しく資源を採掘しない」「ゴミとして捨てない」ことでできる限り循環させていく取り組みと考えるといいでしょう。
リサイクルとは違うサーキュラーエコノミーの考え方
もう1つ疑問がありました。リサイクルとサーキュラーエコノミーはどう違うのかという疑問です。リサイクルは古くから取り組みが進んでいるので、皆さんもよく知っていますよね。ゴミになってしまう廃棄物を資源として再活用して、廃棄物を減らそうという取り組みです。家電や包装容器、自動車の部品など、さまざまなものがすでに法律でリサイクルすることに決まっています。そして、2001年の循環型社会形成推進基本法によって、3R(リデュース、リユース、リサイクル)が世の中に求められるようになりました。リデュースとは、ゴミの発生を抑えること、リユースは皆さんも知っている通り再利用すること、そして資源として再生利用するリサイクルと合わせて、3Rの推進が求められています。あれ、なんだかサーキュラーエコノミーとの違いがわからなくなってきました。
3Rもサーキュラーエコノミーも、ゴミを減らして、再利用や再生利用することで環境の負荷を減らした経済活動を進めます。取り組みの方向性は同じなのですね。でも、根本に大きな違いがあります。3Rでは、「できるだけゴミを減らして、できるだけ再生する」という考え方ですから、やはりゴミは出てしまいます。一方で、サーキュラーエコノミーは「廃棄物を出さず、汚染を発生させない」という考え方が基本です。だからこそ、「循環」と呼ぶわけです。
こうした理想を掲げた考えで生まれたサーキュラーエコノミーは、実現するのも大変です。経済のシステムそのものを、最初からゴミや汚染を発生しないような仕組みで作っていかなければ、実現できないでしょう。モノやサービスをデザインするだけでなく、資源が循環する経済全体のデザインをしていかなければなりません。難しいことですが、私たちが地球環境を守りながら、これからも経済活動を続けていく(生活していくことと同じ意味です)ためには、取り組まなければならないことなのです。
サーキュラーエコノミーは就職する会社の将来にも関係する?
何となくわかったような気はしたものの、経済の仕組みをデザインするなんて言われたって、自分では何もできないと考えてしまいます。でも、そんなこともないんです。
例えばスマホで手軽にモノを売り買いできる「メルカリ」のようなシェアリングエコノミーは、サーキュラーエコノミーと仲良しの関係です。使い終わったり、着古したりしたようなモノを、誰かがまた使ってくれれば、ゴミを出さずに済みます。定額使い放題のサブスクリプションのサービスも、少ないモノを多くの人が共有して使うことでゴミを減らすことに貢献します。
実際に自動車や家電の業界でも、再生素材の利用や製品のリユース、部品のリサイクル、シェアリングエコノミーなど、さまざまな方法を組み合わせて、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを進めています。世の中のあちこちで、私たちが気づかないうちに、サーキュラーエコノミーへの取り組みが始まり、少しずつ前進しているのです。
ここまで読んでも、「サーキュラーエコノミーって、まだピンと来ないな」という人が多いのではないでしょうか。一人ひとりの暮らしの中で、すぐにサーキュラーエコノミーを実感するようなことはまだ多くないからです。それでも、サーキュラーエコノミーというキーワードはこれからの世界を生きていくためには重要です。企業がゴミを大量に廃棄してCO2を排出したりしていると、投資家が資金を投資してくれなくなり、企業が潰れてしまうかもしれません。世界情勢が大きく変化するなかで、資源の供給や価格が安定しているとは限りませんから、できるだけ今ある資源を有効に使うことも大切です。サーキュラーエコノミーの考え方をいち早く採り入れて実践していくことで、皆さんが選んだ会社が長く事業を続けていくことにつながります。
これは、就職する会社を選ぶときにも大切なことです。せっかく就職した会社が将来にわたって成長すれば、皆さんのこれからの生活が安定します。サーキュラーエコノミーへの取り組みが進んでいる会社は、世界や投資家から認められ、生き残る可能性が高いでしょう。会社を選ぶときに、「サーキュラーエコノミー」への取り組みを調べてみることが、役に立つかもしれません。
もう1つ、サーキュラーエコノミーがなぜIT関連ワードなのかという謎解きをしておかなければいけませんね。サーキュラーエコノミーを実現するには、資源の調達から生産、利用、リサイクルまでをきっちりと管理する必要があります。どこかで貴重な資源が捨てられてしまってはいけません。そうしたサイクルを作るには、IoT(モノのインターネット)などを活用した資源循環の仕組みが有効です。皆さんが学んだITの知識や技術が、より良い未来の暮らしに役立つとすれば、それもうれしいことだと思います。