近年、エンジニアの働き方が多様化していることに加えて、キャリアパスの選択肢も広がりつつあります。かつては、出世するなら管理職に進むのが一般的でした。しかし現在は、スペシャリストとして技術を極められるキャリアパスが用意されている会社も増えてきました。そこで今回は、エンジニアのキャリアパスとキャリアプランの立て方について、紹介します。
キャリアマップ編集部・文/ITライター 西村友香理
「35歳定年説」を経て、長く活躍できる時代に
どの職種でも、30代半ばに差し掛かると、将来のキャリアに悩む人が増えるのは周知の事実。特にエンジニアは、2010年代ごろまでは「エンジニア35歳定年説」がささやかれていたこともありました。この説は、かつてのIT業界は長時間労働が当たり前で、非常に“ブラックな職場環境”であったことから、35歳になると体力的についていけなくなることから唱えられたものだと言われています。そのほかにも、年齢を重ねることで“秒進分歩”で進化している技術のキャッチアップが難しくなるなど、いくつかの理由をもとに、公言はされていなかったものの、現場のエンジニアとして活躍できる上限は35歳だと考えられていました。
しかし近年は働き方の改革が進み、業界全体の就労環境が改善されつつあり、「エンジニア35歳定年説」を否定する声が大きくなっています。また、Individual Contributor(以下、IC)と呼ばれるキャリアパスを用意している、もしくは名称は違うもののマネジメントではなくスペシャリストとしてキャリアを積んでいけるようにしている企業が国内で少しずつ増えているのも事実です。
ICとは、部下を持たずに専門職として技術を磨いていけるキャリアパスです。管理職に進まずに、現場で技術者として活躍し続けたいと考えるエンジニアが少なくないなか、注目を集めています。
日本では特定の分野に特化してスキルを身につけたスペシャリストよりも、幅広い分野に精通しているジェネラリストの方が評価される時代が長く続いていました。しかし今後、ICというキャリアパスが定着していけば、特定の分野に特化してスキルを磨いていくことが評価されるようになっていくはず。それに伴い、エンジニアのキャリアパスの選択肢はさらに広がっていくでしょう。
管理職 ? IC ? フリーランス ? …多様化するエンジニアのキャリアパス
日本では、自社サービスを提供している事業会社よりも、システムの受託開発を行うシステムインテグレーター(以下SIer)が多いと言われています。個々のスキルによってスタート地点は異なりますが、SIerで働く場合はテスターやプログラマーからスタートし、システムエンジニアを経て、プロダクトマネージャーやITコンサルタントといった職種にステップアップするケースが一般的だと言われています。
事業会社の場合は、内製で開発をしているのか、外部に委託しているのかによって、キャリアパスが大きく異なります。内製で開発をしているのであれば、職種によって業務範囲が指定されているのか、業務範囲を絞らずにフルスタック(IT開発業務における工程すべてを一人でできること)に働くことを求められているのかによって、その後のキャリアパスは変わっていくでしょう。前者であれば、スペシャリストとして特定分野の技術を極められる可能性が高まりますし、後者であれば幅広い知識と経験を身につけることで、キャリアの幅を広げられます。
外部に委託している場合、社内でどれほど開発をしているのかによって業務が変わってきます。ほとんどを外部に委託しているのであれば、プロジェクトの進捗管理や委託先のエンジニアチームとの調整などが多くなります。技術力を極めたいのであれば、企画から運用まで社内で開発している企業が適切かもしれません。
就職ではなく、フリーランスを選択する人もいるでしょう。フリーランスとして働く場合は、前職からの案件を引き続き担当する場合や知人からの紹介で仕事を獲得するほか、エージェント経由で仕事を探すことも可能です。Qiitaやnoteなどをきっかけに仕事を依頼されるケースも珍しくないため、将来的に独立したいという意思がある場合は、外部への発信に挑戦するのも案件獲得の手段として有効です。
また世界に目を向けてみると、エンジニアの知識を生かして起業する人も多く存在しています。例えば、世界中で多くのユーザーに利用されているTikTokの親会社であるByteDanceの創業者である張一鳴氏は、元々エンジニアとしてキャリアをスタートさせています。そのほかにも、Microsoftのビル・ゲイツ氏やZoomのエリック・ユアン氏、Metaのマーク・ザッカーバーグ氏など、名だたる企業の創業者がエンジニア出身であることは珍しくありません。
ちなみに、日本国内でも少ないながらエンジニア出身の起業家は存在しており、グリーの代表取締役社長である田中良和氏は、起業する前はエンジニアとして働いていたことで知られています。スタートアップにおいても、エンジニアが創業社長として活躍しているケースは少なくありません。エンジニア自らが代表を務めることで、サービス開発にかかる初期費用を抑えられるというメリットもあるため、エンジニアと起業の相性はいいとも言えるでしょう。
考えるコツは「ゴールから逆算して、小さな目標を立てること」
では、具体的なキャリアプランを描くためには、何をすればいいのでしょうか。方法は人それぞれですが、最初にするべきは自己分析。自分の長所と短所を正確に把握することが重要です。さまざまな適性検査サービスがありますが、一番簡単にできるのは、周囲のサポートを得ること。
具体的な方法としては、初めに自分が思う長所と短所を5~10個ほど、紙に書き出します。その次に、家族や友人、パートナーなど、周囲の人に「あなたの長所と短所」を書き出してもらいます。自分が書いたものと、他者が書いたものを見比べることで、自分では思いもしなかったような長所が見つかることも。また、長所を把握するという点においては、他者に言われて嬉しかったことをメモしておくのもおすすめです。ある程度データがたまってくると、どのような褒められ方をしていることが多いのかという傾向が見えてくるはず。それにより、他者から見た自分の長所を把握できるようになります。
自己分析がある程度できたら、次は理想の将来像について考えていきます。その際、抽象的な表現ではなく、具体的な数字を出して考えることがポイントです。ゴールを明確にすることで、その後の計画が立てやすくなります。理想の将来像がわからないという場合は、ロールモデルとなる人を探してみましょう。
最終的な将来像が固まってきたら、ゴールに向けての計画を立てていきます。キャリアプランを考える際は、基本的に長期的な計画となります。そのため、3年、5年ほどの単位で区切って小さな目標(マイルストーン)を立てていきましょう。大きな目標を立ててしまうとモチベーションを維持するのが難しくなる可能性もあるため、マイルストーンは細かく設定することが重要です。
キャリアプランがまとまったら、紙にまとめて、自室のよく目に入る場所に飾っておきましょう。常に目標を見えるようにしておくと、モチベーションを維持しやすくなります。
社会人として働きだす前に、考えておきたい「理想の計画書」
複数の本業を持つパラレルワークという働き方も登場するなど、キャリアプランの選択肢は現在も増え続けています。一人ひとりに合わせたキャリアプランを描きやすくなってきており、大抵のことは本やインターネット上から情報を取得できるようになりました。とはいえ、体験してみないとわからないこともたくさんあります。
他職種と比べて、エンジニア業界は情報の流れが早いため、数年前の“最先端”が少し経つと“当たり前”になっていることも珍しくありません。学生のうちにキャリアプランを考えたとしても、状況が変われば計画を変更せざるを得ないことも。そもそも、実際にエンジニアとして働き始めたら「別の職種に挑戦したい」と思うケースもあります。
では、学生のうちにキャリアプランを考えても意味はないのでしょうか。キャリアプランはあくまで計画書であり、自分の軸を明確にするものです。計画通りに進まないからといって、考えた時間が無駄になることはありません。また、キャリアパスが多様化している中では、選択肢が多すぎて適切な判断ができなくなる可能性もあります。学生のうちにしっかりと考えておくことで、就職活動をする際の企業を選ぶ判断軸にもなりますし、自分の将来像が明確になっていた方が、社会人になってから転職や起業といった行動を起こしやすくなります。長期休みなどの期間中に、周囲と相談しながらキャリアプランについて考えてみてはいかがでしょうか。